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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(その後)
おしまい『嬉しい訪問者』
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「ごめんなさい」
ポタポタと滴り落ちる紅い血に、白い軍服が染まる。
「なぜ、自分の命を大事に考えないのです?人の命を大切にする人が」
「私が姿を見せれば、聡美が出てくると。だって、狙いは私だもの・・・」
「それで?あなたがもし、万が一に喪われたら?私は聡美を殺します」
「!」
「三春も、あなたの御乳がなければ、生きられません」
―――だめ、やだぁ。
「ごめんなさい、もう、二度と考えないからぁ」
「自分がいなくても、大丈夫だなんて・・・努々、思わないでください」
「はい」
涙を流し続ける花の頰を、義孝が撫でる。
―――義孝さんに触られるの、好きなんです。
目を閉じる花に、義孝が口づける。
「んぁ」
「花」
甘い、優しい声に花は、蕩けた眼差しで見上げる。
「可愛いですね、ホントに」
「あ」
抱き上げられ、紅い顔になる花。
「だ、だめ、怪我が!」
「なら、ここでしますか?」
「や」
涙目で、首を振る。
「明るいと、恥ずかしい。でも、怪我が・・・傷が開いちゃう」
「なるほど。なら」
ボソッと囁かれた言葉に、花はふしゅーっと湯気が上がる。
「手を使わなければ、いいわけですから」
「は・・・はい」
小さく頷いた。
(その日、私は義孝さんに誠心誠意、尽くしたのだった)
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「よ!花ぼう」
翌日の午後、現れた順一に花は「おじちゃん!」と泣き笑いになった。
「久しぶりだな、元気にしていたか」
「はい。おじちゃんは、顔色がいいみたい」
「ああ。見ろ、このベルトの穴!こんなに緩めないと、ちょっとしんどいんだ」
一番細く締めていた穴が、三番目にずれていた。
「良かった」
「医者も驚いていた。余命半年を撤回するってな」
花が嬉しそうに笑う。
「あの薬屋の若いの、いい腕だな」
――――で、本題だ。
順一は一通の封筒を出した。
「聡美の刑罰が確定した。詳しい事は、中にあるが簡単に説明する。まず、精神鑑定の結果だが・・・聡美は精神が落ち着くまで、精神科のある医療少年院に入院が決まった。カウンセリングをして、改善されたら服役する。まぁ、未成年だし・・・十年だな」
「十年」
「あと、後妻さんだが・・・末期の胃癌だとわかった。もう、三ヶ月生きられればいいとさ」
「そんな!」
ふるふると、花が震える。
「胃の痛みに気付いていて、言わなかったらしい。医療を受けないことが罰だとか、治療を断わったらしい」
「そんなぁ」
「出来るなら、今度は優しい母親でありたいとさ。花ぼうにも、聡美にも、良き母になりたいと」
グスッと、しゃくり上げる。
「俺は幸せな人間だな。子宝には恵まれないが、死んだ女房に愛され部下には『オヤジ』と慕われた。だが、あの後家さんはいつも怯えていたはずだ」
「・・・そうですね。私は義孝さんに会うまで、怖い人を想像していました。すぐに追い出されると、かってに決めていました。だけど、お義母さんも義孝さんも優しくて、大切にしてくれました」
「何が違うんだろうな。健康な赤ん坊なら歓迎されて、病気や障害があれば必要ない、うちの子じゃねえ。生まれた時は、ひたすら愛しただろうによ」
可哀想に。
順一は空を見上げる。
「なんか、期待していた訳じゃねえだろうに。なんで、がっかりするんだ」
「でも、もし三春にそんな障害があったら、悔やむでしょうね。なんで、健康に産めなかったのか。自分の何が原因で、そう生まれたのか」
心が痛い。
「だがな、後家さんには同情するが、あの聡美には同情しねえぜ。全てが障害だ癇癪のせいにされたんじゃ、義孝の怪我はどうなる?花ぼうだって、殺されかけた」
「おじちゃん」
「治るかわかんねえが、聡美の刑罰は精神がまともになってからだ」
「はい」
順一が帰る。
花は幼い日のように、袖を掴んだ。
「あの、おじちゃん?」
「なんだ、花ぼう」
「また、会いに来てくれますか?私と義孝さんも、三春を連れて会いに行きます」
「ああ」
順一は笑う。
あの日と同じ、豪快で優しい大好きな笑顔がある。
「ああ、またな。花ぼう」
「はい!」
花は笑う。
「義孝」
「はい?」
「無茶はほどほどにな。オメェが死んだら、花ぼうが不幸になるんだからな」
「肝に銘じます」
―――またな。
義孝の目に、涙はなかった。
その力強い後ろ姿に、笑顔が浮かんだ。
そして、数日後。
「うーん」
軍医が眉をしかめる。
「なんでだ?傷が悪化しとる」
「・・・」
ちら、と花を見る。ふしゅーっ、と花は湯気が上がる。
「ま、ほどほどにな」
「あはは」
秋の空に、義孝の笑い声が響いた
ポタポタと滴り落ちる紅い血に、白い軍服が染まる。
「なぜ、自分の命を大事に考えないのです?人の命を大切にする人が」
「私が姿を見せれば、聡美が出てくると。だって、狙いは私だもの・・・」
「それで?あなたがもし、万が一に喪われたら?私は聡美を殺します」
「!」
「三春も、あなたの御乳がなければ、生きられません」
―――だめ、やだぁ。
「ごめんなさい、もう、二度と考えないからぁ」
「自分がいなくても、大丈夫だなんて・・・努々、思わないでください」
「はい」
涙を流し続ける花の頰を、義孝が撫でる。
―――義孝さんに触られるの、好きなんです。
目を閉じる花に、義孝が口づける。
「んぁ」
「花」
甘い、優しい声に花は、蕩けた眼差しで見上げる。
「可愛いですね、ホントに」
「あ」
抱き上げられ、紅い顔になる花。
「だ、だめ、怪我が!」
「なら、ここでしますか?」
「や」
涙目で、首を振る。
「明るいと、恥ずかしい。でも、怪我が・・・傷が開いちゃう」
「なるほど。なら」
ボソッと囁かれた言葉に、花はふしゅーっと湯気が上がる。
「手を使わなければ、いいわけですから」
「は・・・はい」
小さく頷いた。
(その日、私は義孝さんに誠心誠意、尽くしたのだった)
✢✢✢◇◇◇✢✢✢
「よ!花ぼう」
翌日の午後、現れた順一に花は「おじちゃん!」と泣き笑いになった。
「久しぶりだな、元気にしていたか」
「はい。おじちゃんは、顔色がいいみたい」
「ああ。見ろ、このベルトの穴!こんなに緩めないと、ちょっとしんどいんだ」
一番細く締めていた穴が、三番目にずれていた。
「良かった」
「医者も驚いていた。余命半年を撤回するってな」
花が嬉しそうに笑う。
「あの薬屋の若いの、いい腕だな」
――――で、本題だ。
順一は一通の封筒を出した。
「聡美の刑罰が確定した。詳しい事は、中にあるが簡単に説明する。まず、精神鑑定の結果だが・・・聡美は精神が落ち着くまで、精神科のある医療少年院に入院が決まった。カウンセリングをして、改善されたら服役する。まぁ、未成年だし・・・十年だな」
「十年」
「あと、後妻さんだが・・・末期の胃癌だとわかった。もう、三ヶ月生きられればいいとさ」
「そんな!」
ふるふると、花が震える。
「胃の痛みに気付いていて、言わなかったらしい。医療を受けないことが罰だとか、治療を断わったらしい」
「そんなぁ」
「出来るなら、今度は優しい母親でありたいとさ。花ぼうにも、聡美にも、良き母になりたいと」
グスッと、しゃくり上げる。
「俺は幸せな人間だな。子宝には恵まれないが、死んだ女房に愛され部下には『オヤジ』と慕われた。だが、あの後家さんはいつも怯えていたはずだ」
「・・・そうですね。私は義孝さんに会うまで、怖い人を想像していました。すぐに追い出されると、かってに決めていました。だけど、お義母さんも義孝さんも優しくて、大切にしてくれました」
「何が違うんだろうな。健康な赤ん坊なら歓迎されて、病気や障害があれば必要ない、うちの子じゃねえ。生まれた時は、ひたすら愛しただろうによ」
可哀想に。
順一は空を見上げる。
「なんか、期待していた訳じゃねえだろうに。なんで、がっかりするんだ」
「でも、もし三春にそんな障害があったら、悔やむでしょうね。なんで、健康に産めなかったのか。自分の何が原因で、そう生まれたのか」
心が痛い。
「だがな、後家さんには同情するが、あの聡美には同情しねえぜ。全てが障害だ癇癪のせいにされたんじゃ、義孝の怪我はどうなる?花ぼうだって、殺されかけた」
「おじちゃん」
「治るかわかんねえが、聡美の刑罰は精神がまともになってからだ」
「はい」
順一が帰る。
花は幼い日のように、袖を掴んだ。
「あの、おじちゃん?」
「なんだ、花ぼう」
「また、会いに来てくれますか?私と義孝さんも、三春を連れて会いに行きます」
「ああ」
順一は笑う。
あの日と同じ、豪快で優しい大好きな笑顔がある。
「ああ、またな。花ぼう」
「はい!」
花は笑う。
「義孝」
「はい?」
「無茶はほどほどにな。オメェが死んだら、花ぼうが不幸になるんだからな」
「肝に銘じます」
―――またな。
義孝の目に、涙はなかった。
その力強い後ろ姿に、笑顔が浮かんだ。
そして、数日後。
「うーん」
軍医が眉をしかめる。
「なんでだ?傷が悪化しとる」
「・・・」
ちら、と花を見る。ふしゅーっ、と花は湯気が上がる。
「ま、ほどほどにな」
「あはは」
秋の空に、義孝の笑い声が響いた
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