身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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回想・身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

九話『ラブレター』

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「艦長、奥さんから手紙です」
「ありがとう」
 義孝が立ち上がる。
「あ、これ飲んでおけ」
 義孝は瓶を渡した。
「え、ほとんど飲んでないじゃないすか!」
「ありがとうござい!」
 明日は日曜日である。
 艦では、週に一日だけ休みがある。

「さて、今回は何だ」
 娯楽の少ない艦で、家族や恋人からの手紙は数少ない楽しみでもある。

   ✣✣義孝さんへ✣✣
 
 秋の気配がし始めて、今日で一週間になります。
 義孝さんと、横須賀で過ごした三日間が昨日のように思い出せるのに、今朝は金木犀の甘い香りが漂います。

 今日はちょっとだけ、出会った時の事を書きたいと思います。

 見合いなのだから、出会いという表現は可笑しいかもしれませんね?
 でも、私には忘れられない、素敵な出会いです。あの、崩れかけた布団から、義孝さんが守って下さいました。
 あの日からずっと、私は義孝さんに恋をしています。

 私が作ったご飯を、美味しいと平らげてくれたこと。
 重く暗い生い立ちを受け止め、私を受け入れてくれたこと。

 どれだけ、感謝しても足りないほどです。私は義孝さんに救われ、ずっと恋してきました。

 義孝さん、本当にありがとうございました。
 
     ✣✣✣✣✣

「・・・・参ったな」
 額を抱える。
「どう、返事をする?」
 口を押さえ、茹で上がる。
「飛んでいって、抱きしめたい」

      ✣✣✣✣
 数日後、義孝からの返事が東京の桐島邸に届いた。
「わ、義孝さんからだ!」
 ふふ、と笑みが浮かんだ。
「何かなぁ?」
 封を切り、花は目を通す。

 ポタポタと、涙が頬を伝う。

 ーーーズルい、です。

 嗚咽は、号泣に変わった。

     ✣✣✣✣✣

 前略、花さんへ。
 
 一生かけて、あなたに伝えていきたい言葉を書きます。

 私は、ずっと気がかりな事があります。それは、花さんが自分を卑下していることです。

 何も出来ない自分を、駄目だと感じていることに。

 花さん、人は何か出来なければ駄目なのでしょうか?

 あなたに出会い、愛されて、私は幸せになれました。
 こんな手紙を書いたら、あなたを不安にしてしまうでしょうか?

 私は出来るなら、あなたより一日だけ・・・一分だけでも、長く生きたいと願っています。

 あなたがいてくれるだけで、この世に存在してくれるだけで、私には過ぎた幸せです。

 だけど、きっと叶わない。

 私は二十五も年上で、あなたが六十まで生きたなら、私は八十五になります。
 だから、手紙に遺します。

 花さん、生まれてきてくれて、ありがとう。
 私と出会い、愛してくれてありがとう。

 例えば海に散っても、私の最期には・・・あなたが居てくれるから。そう信じられるから、だから・・・。
 継母や義妹が、あなたにした仕打ちがどれほど残酷だったのか、想像を絶します。

 二度と泣かせたくないと思ったのに、私はあなたを傷つけてばかりいます。
 だから、私はあなたの最期を看取りたいと願います。

 あなたのくれた、無償の愛に「ありがとう」を言いたい。

    ✣✣✣✣✣
 泣きじゃくる花に、千代が驚いて部屋に来る。
 子供のように、花は千代の腕の中で泣き続けた。幸せな、幸せな涙だった。
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