身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(あれから・・・)

二話『ヒマワリ』

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「見せ合いっこするの」

 微笑んだ顔が、悲しく思えた。
 もし、戦争が無ければ、二人は出会わなかったかも知れない。
 義孝が海軍兵学校に行くことも、花が両親を早くに失くすこともなかったかも知れない。
「きっと、義孝さんが迎えに来てくれるわ」
 幸せそうに微笑んだ。
 その横顔に、十代の少女が重なる。恋する、乙女の顔で微笑んだ。

「ね、智志。私達、何で喧嘩したんだっけ」
 優衣は智志にメールを送った。
 花の希望を、一つでも叶えたい。そう感じたからだ。

「やっぱり、返事がないかぁ」
 何でぇ?
 涙で空が滲んだ。
「私も、おばあちゃんたちみたいになりたいよぉ」
 呟く声が、初夏の空に吸い込まれた。

 花の心臓は芳しくはない。
 なるべく負担に、興奮や過激な運動は控えるように言われていた。

 だから、桐島邸を取り壊すことにした。
 桐島邸は長い坂と階段を上らねばならず、心臓に負担がかかるため、同居を言い出した。

 あれから、どのくらいの時が流れたのか・・・。花は物忘れがあり、寝ていることが増えた。
「お義母さん、もう長くないって」
 母が泣いた。
「なんで、気づいてやれなかったかなぁ・・なんのために、医者やってんだ?僕は」 
 父のめに光る涙。
 皆が、花を愛して必要としていた。
 なのに、何も解っていなかった、花の願いを――――。

「今日は、誕生日だわ」
 花は立ち上がる。
「えとっ」
 その顔は、恋する乙女だった。

 花は家族の誕生日を忘れない。
 物忘れはあるが、記念日を大事にしていた。

 必ず、手料理を振る舞う。
 身体を気遣う惣菜はどれも絶品で、皆が笑顔になった。

「私達、お義母さんに何もしてあげてないわ」
「そうだな」

 誰も、義孝の誕生日を失念していた。大切なのは、今を生きる人々のことを優先すべきだと、花も義孝も教えた。

 だから、花が家を出るのに気づかなかった。

     ❖❖❖❖

「この花を下さい」
「はい」
 それは、黄色いヒマワリだった。花はヒマワリの花束を抱えて、寺の門をくぐる。

「うわ、何?あのお婆さん」
 その寺は、優衣の親友・はるかの自宅前だった。
「はるか、どうしたね?」
「あ、おじいちゃん。いまね、ヒマワリの花束を抱えたお婆さんが・・・って、あれ!」
 はるかが、ハッと振り返る。
「あれって、優衣のおばあちゃんじゃ!?」
 はるかはスマホを取り出した。

「あ、優衣?あたし、はるか」 

 一方、時東邸では花の姿が見えず、優衣たちが車を出すところだった。

「なに?はるか。どしたの」

 ――あんた、ばあちゃんいる?

「え・・・マジで?うん、ありがとう」

 パパ、と優衣は叫んだ。

「なんてことだ、すっかり失念していた。父さんの誕生日だ!」
「駄目ね、何を見ていたの、私達」
 母が泣いた。
「おばあちゃん、きっと会いに行ったのよ。台所に玉子焼き用のフライパンがあったのに、わからなかった!」
 きっと、義孝の好きな物を弁当に詰めたのだ。
「おにぎりに玉子焼き、お義父さんの好物だわ」
「ああ!初めて作った弁当だよ!クソ、息子失格だ」

 涙がポタポタと、三人の頬を流れる。桐島邸まで歩いて一時間、霊園には二時間かかる。
 年寄りの足では・・・想像もしたくない。

「おばあちゃん」
 いつ、家を出たのか。
 どんな想いで、桐島邸を離れたのか。
 車ではあっという間の距離を、てくてく歩いていた花。
「こんな暑い日に」

     ✣✣✣✣✣
「義孝さん」
 花は笑顔だ。
「誕生日、おめでとう」
 掃除をして、ヒマワリを供えて。大好きだった、玉子焼きに三種類のおにぎりを並べる。

「鮭、塩、梅干し。玉子焼き」
 ふふ、と笑った。
「義孝さん、覚えていますか」

 ミーン、ミーン
 ツクツク
 カナカナカナ・・・

「義孝さん、今日は暑いです。セミが鳴いています」
 ズキン、と鋭い痛みが走る。
 まるで、キリで刺されたようだ。冷や汗が滴り落ちる。

「最近、胸が痛くて」
 微かに、笑顔になる。
「大丈夫、すぐおさまり」
 はあ・・・はぁ
「また、来ますね」 


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