身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(あれから・・・)

一話『遠くない日に』

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「このヒマワリ畑は、どこにありますか?」
 新婚時代、アルバムの写真を見ながら話した。
 一面のヒマワリ畑を背に立つ、義孝と海兵たち。
「コルドバ。スペインの南方にあります」
「コルドバ」
 海外に何度か渡航した経験がある義孝の話は、花の好奇心を刺激した。
「いつか、行きましょうか?子育てが終わったら、二人で」
「はい」

 たくさんの思い出が蘇る。
 義孝の写真と、後日に二人で行ったカラーの写真。

 幸せが詰まった、アルバム。

「義孝さん。私、幸せでした」
 深い愛情を注いでくれた、優しい義孝との日々。
 寂しがる必要はないと、たくさんの思い出が教える。
「おばあちゃん」
 可愛い声がした。
 振り返ると、孫の優衣がいた。

「ごはんだよ」
 トレイに二人分の食事を載せて、優衣が微笑う。
「あ、もうお昼?」
「うん。今日はおばあちゃんの好きな、バターチキンカレー」
「嬉しい」

 美味しい、腕を上げたわね。

 笑顔を見せる。
 優衣は花が大好きだった。

「おばあちゃん、それ・・おじいちゃんよね」
「ええ、若い時に仕事で海外に暮らしたんですって」

 幸せそうに写真を見る花。
「ね、おじいちゃんと、何で結婚したの?」
 義孝と花は年が二十五歳も離れていた。優衣はずっと、不思議でならなかったのだ。
「お見合い・・・まあ、政略結婚っていうのかしら?桐島は財産が底をついて、逼迫していたの。そこに、おじいちゃんの上官が縁談を持ってきてくれたの」
「え」
 優衣は引きつる。
「最初は不安だった。痩せっぽちで・・・追い返されるんじゃかいかって。だけど、おじいちゃんも義理のお母さんも、すごく優しくしてくれたの」
 幸せな日々だった。
 大好きな笑顔が浮かぶ。
「優衣ちゃんも、彼がいるじゃない」
「うん」
 でも、最近はうまくいっていない。告白は恋人の智志からだったが、些細な口論で気まずくなった。
「なあに、喧嘩したの?」
「うん。些細な喧嘩、でも何でだろ。ホントに原因が思い出せないくらいに」
 もう、分かれたほうがいいのか?
 ラインを送っても、既読スルーされている。
「いつから?仲直りは、早くした方がいいわ」
「そうだね」
 優衣はふと、義孝と花がとても睦まじいと思い出す。
「ね、おじいちゃんと喧嘩はしなかったの?」
「・・・どうかしらね。おじいちゃんは優しい人だったから。あ、でも妬きもちはよくやいたわ」
「え!?」
「私がちょっと、人に目をやるとね。目に艶が出るの。どうイジメるか、考えるんですって」
「ええ!?おじいちゃん、エスだったの?」

「エス?」
 花は目をぱちくり。
「えとっ、サディス・・・って、分かる?好きな子に意地悪」
「あ~、そうね。男の子って、だいたいはそれじゃない?」
 ふふ、と花は頬を染める。
「大変よ?浮気じゃないわ、って説明するの。拗ねるのよ」
「可愛い」
「ね、優衣ちゃん。彼とはなして?きっと、大丈夫だから」
 花の言葉はよく当たる。長年の経験からか、人柄からか。相手の気持ちを察するのが上手だ。
(・・・私は、おばあちゃんが大好き。優しくて、可愛いくて。死んだおじいちゃんのことも、大好きだった)

 義孝が亡くなり、花は元気を無くしていった。義孝がよく居た椅子で、眠ることが増えた。
 義孝が抱きしめてくれる、そんな気がするのだと花は話した。

「優衣ちゃん。一つだけ、お願いしてもいいかしら?」
「なあに」
「あの棚に箱があるの、出してくれる?」
「うん」

 優衣は戸棚からクッキーの箱を出す。

「なあに、それ?」
「ラブレターよ。おじいちゃんからの」
 それは、長い海軍生活の時にやり取りした、手紙の束だ。
「これを、棺に入れてほしいわ」
「え」
 優衣が固まる。
「そう、遠くないわ」
「おばあちゃん」
「怖くはないの。もう、十分に人生を楽しんだもの・・・好きなところへ出かけて、美味しい物もたくさん食べた」
 目に涙が浮かぶ。
「義孝さん、私・・・頑張ったわ。あなたがいなくても、幸せだったのよ?」 
 涙が、アルバムに落ちる。

 ―――早く、会いに来て。


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