学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太

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前編

「さすがにちょっとまずいだろ?」

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 ふと時計を見ると、もう夕方の5時を過ぎている。実家での食事時間は6時から。オヤジも兄貴も朝のおつとめがあるので、就寝時間が早いからだ。

 俺はちょっと早いが、夕食前に風呂に入ることにした。一日移動で汗をかいたので、少しさっぱりしたかった。

 一応テレビのリモコンとパソコンのキーボード操作をりんができるように式神を用意して、俺はりんに「風呂入ってくるわ」と声をかけ部屋を出る。

 実家の風呂はいつも夕方から湯を張っている。どうやら俺は一番風呂のようだった。脱衣所で服を脱ぎ、風呂場へ入る。かけ湯をしてから湯船にゆっくりと入った。この時期は暑いので、お湯の温度はぬるくしている。俺は湯船に浸かり深呼吸を一つ。ちょうどいい湯加減だ。

 俺はりんの事を思い返す。成仏しそうな雰囲気は全く見られないが、ここへ来て環境も変わればなにか変化も起こるかもしれない。それから……夏休み中に花宮も来てくれる。俺はそれも凄く楽しみだった。

 そんなことを考えていると……

「ナオ兄ぃ? 入ってるの?」

「ん? ああ。美久、どうした?」

「美久も入るね」

「は?」

 おい、ちょっと、とか言うまもなく、胸から下に白いタオルを巻いた美久が入ってきた。

「美久、勝手に入ってくるな。さすがにちょっとまずいだろ?」

 俺は思わず声が大きくなる。

「なんで? 前はよく一緒に入ってたでしょ? ナオ兄ぃたまにしか帰ってこないんだからいいじゃん」

 俺の制止を全く無視してかけ湯を済ますと、勝手に湯船に入ってくる。片足を上げた時にタオルの下から見えそうで、さすがに俺も目をそらした。

「もうちょっと、そっちに詰めてよ」

「おまえなぁ……」

 湯船に入ってからも、美久は俺の方へ近寄ってぴったりとくっついた。俺の肩のすぐ横に、美久の頭がある。

「ナオ兄ぃがいなくなって、美久だって寂しかったんだからね。本当は美久だって来年栄花学園に行きたかったんだよ。そしたらナオ兄ぃと同じところに住んで通うことができたのに」

「ああ……でもさすがに子供3人とも私立に行かせるのは、オヤジだって金銭的に厳しいだろ」

 その話は俺もオヤジから聞いていた。実際金銭的に厳しいこともあるのだが、美久は末っ子の娘で小さい時からオヤジは溺愛していた。それは俺も兄貴も感じていたことなのだが、多分オヤジは可愛い娘に側にいてほしいだけなんじゃないかな、と俺は邪推している。

「もう……じゃあせめて夏休みと冬休みは、ちゃんと帰ってきてね」

「ああ。修行もあるし、だからちゃんと帰ってきてるだろ?」

「それにたまにはナオ兄ぃからも連絡してよね。いつも美久からLimeしないと連絡してくれないじゃない?」

「そんなこと……あるのか? わかったよ、連絡するから」

「絶対だよ。あ、そう言えばさ。ナオ兄ぃ、美久があげたお守り、ちゃんとつけてる? あの緑色のカバ」

「えっ? ああ、もちろんあるぞ、学校のカバンにつけてるよ」

 そうだ、すっかり忘れていた。実はその「緑色のカバ」のキーホルダー、俺はなくしてしまっていた。通学カバンにつけていたのだが、いつのまにやらちぎれてキーリングだけがカバンに残っていた。

 美久は「オレンジ色のカバ」を持っていて、ペアになっているキーホルダーだ。そのキーホルダーを持ったカップルは将来結ばれるという、どこにでもありそうなありふれた商品だ。

 俺はさすがになくしたとは言えず、通販サイトを探しまくってなんとか入手しようとしているが、いまだに探し出せていない。どうやらどこかのショップの限定販売商品らしいのだが……

「そっか。今日持ってたカバンについてなかったから、心配したよ。なくさないでね」

「おう、わかった」

 なんとか探し出して、こっそり買っておかないと……フリマアプリでも探してみることにしよう。

 俺は頭でそう考えながらも……一方で気もそぞろだった。美久はせまい浴槽の中で俺の方に寄りかかり、自分の左胸を俺の右腕にピタっと当てているからだ。

「ねえねえ、美久、成長したと思わない? 今ね、美久のブラ、Dカップなんだよ」

 こいつ俺の心を読んでるのか? 俺がそう思っていると、美久はそのDカップをグリグリと俺の右腕に押しつけてきた。

「おい、やめろって。お前、他の男子にそんなことしてないだろうな?」

「してるわけないでしょ? 心配だったら美久が来年栄花高校に行けるように、お父さんに話してよ。そしたらちゃんと監視できるよ」

「いや、それはムズいだろ」

「なんでよ、もう……でもさ、ブラのサイズがすぐ大きくなるから、最近何回か買いに行ったんだけどね。この辺のお店って可愛いブラ、全然売ってないんだよ。ナオ兄ぃ、今度一緒に買いに行ってよ」

「いやさすがにハードル高すぎるわ」

 こういうとき母親がいないと困るんだよな……友達と一緒に買いに行ってくれ。あ、環奈先生にお願いするっていう手もあるな。

 俺はさすがにのぼせてきた。お湯自体はぬる目なのに、煩惱の方が勝手に俺の体温をあげてしまっていたようだ。俺は美久を早々に追い出しにかかる。美久はブーブー言っていたが、なんとか風呂場から出て行ってくれた。明日からは脱衣所にちゃんと鍵をかけないといけない。
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