学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太

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前編

皆で夕食

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 風呂から出た俺は、いったん部屋に戻る。これからすぐに夕食なのだが、りんに一緒に行くか訊いたところ『行きたい!』とのことだったので、一緒に連れて行くことにした。

 俺とりんは食堂に移動する。実はうちの寺はその昔「宿坊しゅくぼう」もやっていた。母親が亡くなってからは手が回らなくなりやめてしまったが、その名残で部屋数は多いしこの食堂もそれなりに広い。

 食事の用意は兄貴とオヤジが分担して、最近は美久も手伝うようになったらしい。うちの宗派は特に精進料理である必要はないのだが、今は基本的にオヤジと兄貴は精進料理中心、美久は普通に肉や魚を食べているらしい。もちろん俺と環奈先生も、肉・野菜を口にできる。

 環奈先生も食堂に入ってきたところで、配膳を済ます。俺たちの今日のメニューは焼き魚に山菜の天ぷら、卵焼きと海苔、ご飯と味噌汁、デザートはカットされた夏みかんだ。

 大きなテーブルに全員座り、手を合わせて「いただきます」と口にする。

「ねぇ、ナオ兄ぃの連れてきた霊って、今いるんでしょ?」

 俺の向かい側に座った美久が訊いてきた。

「ああ、ここにいるぞ」

「女の子なんだよね? どんな霊なの?」

「どんな霊って……」

「ギャル系の女子高生ね。薄いピンクの髪でセーラー服着て……スカートの丈も短くて」

 俺が言い淀んでいると、環奈先生が解説してくれた。

「えー! そんな感じなの? もう、ナオ兄ぃ、変な気起こしてないでしょうね?」

「そんなわけあるか」

「もー、ナオ兄ぃとずっと一緒に住んでるってことだよね? ナオ兄ぃにちょっかいかけたら、ダメなんだからねっ!」

 美久は椅子から腰を上げると、りんがいるあたりの空間に「シュッシュッ」と箸で攻撃し始めた。

『うわっ、ちょっとなにこの子。危ないわね!』

「これ美久、お行儀が悪いぞ」

 りんは体を仰け反らせて美久の攻撃をかわし、オヤジが美久を諌めた。

『美久ちゃん大丈夫だよ。ナオの好みはどうやら『白衣ナース』と『巨乳女教師』みたい。ナオのパソコンの検索履歴に入ってから』

「ちょ、おまっ」

 環奈先生はブーッと味噌汁を吹き出し、オヤジは「はっはっはっ」と笑っている。兄貴と美久の頭の上には、クエスチョンマークが出現している。

「お前……人のパソコンを勝手に」

「何言ってるのよ。人にパソコンを貸す時は検索履歴とCookieを消去するなんてこと、常識だよ。それか自分のIDにはパスワードをかけてゲストアカウントにしておかないと」

 なんで地縛霊のくせに、ITリテラシー高いんだよ! それから式神! タイピングの能力高すぎるだろ!

 兄貴が環奈先生に「三宅、どうした?」と聞いているが、環奈先生は「ううん、なんでもないよ」と取り繕ってくれている。しかし……一方で環奈先生が俺に向ける蔑むような視線が痛い。

「ところで兄貴、寺の方は忙しいの?」

 俺は早急に話題転換を図った。

「ん? ああ、夏休みに入ってから参拝客が増えたからな。カフェの方も忙しいし、絵馬もお守りも追加発注しないといけない。そう言えば……完永寺のご住職はいつ来るのか予定は決まったか?」

「いや、まだ聞いてない。多分8月になると思う」

「そうか。あのご住職は2-3年前の住職会でお会いしたことがある。実直で温和な御仁だったと記憶している。俺もお会いするのが楽しみだ」

 花宮のお父さんか……俺も顔を合わせるだろうから、今からちょっと緊張する。

 そのあと話題は再びりんの話になった。生前りんはどういう生活をしていたのか。どうしてりんは亡くなったのか。俺はかいつまんで説明した。最後の方には美久は「そうだったんだね。りんちゃん、かわいそう……」と涙目になっていた。

 食事も終わり各自で食器を洗った後は部屋に戻る。俺は自分の部屋に入って椅子に座ってスマホを手に取る。Limeのメッセージが1件入っていた。

花宮:もう今は実家の方にいるのかな? 私は今日バイトだったよ。

 メッセージのあとに1枚の写真が送られてきた。巫女装束みこしょうぞくを着た花宮が斜め上からの角度からとったセルフィーだ。サラサラの黒髪でニッコリ笑って映る花宮は、有名若手女優にも引けを取らない可愛さだ。この写真、金払ってでも欲しい連中が沢山いるだろうな……。

『あらー、琴ちゃん可愛いじゃない。やっぱり巫女装束って男はエロスを感じるものなの?』

「だから勝手に人のスマホを覗くなって」

 りんはいつの間にか、音もなく俺の背後から覗いていた。

『きっと琴ちゃんさ、同じ写真を何枚も撮り直して、一番可愛いのを送ってきたんじゃないかな? 前髪とか気にしてさ。あーもう、アタシもそういうのやってみたかった!』

「勝手に盛り上がってろ」

 そうは言ってみたが……もし花宮がそんなことを思いながら写真を撮って送ってくれたとしたら、俺は……めちゃめちゃ嬉しい。

『ナオはなんて返すの? ちゃんと可愛いって褒めてあげないとダメだよ。ちゃんと褒めてあげたらさ、そのレベルに応じて服を少しづつ脱いで写真を送ってくれるかもよ』

「新手のエロゲーかよ」

 さて、なんて返すべきだろうか……俺は返信メッセージに頭を悩ましていると、コンコンとノックする音が聞こえた。
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