学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太

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前編

妹の美久

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「ナオ兄ぃーー!」

 今度はそう叫びながら向こうの方から弾丸のように一人の少女が走ってきた。そして俺の胸にドスンとその体をぶつけて、俺の体にしがみつく。俺は「ブフォッ」と変な声を出しながら、その小柄な体躯を受け止めた。

美久みく、危ないだろ? お寺の中は走っちゃだめだ」

「もうナオ兄ぃ、ずっと待ってたんだよ。」

 そう言って俺の腕にしがみついているのは、妹の美久みくだ。俺の2つ下の中3で今年は高校受験の年なのだが、このあたりで比較的偏差値の高いところは県立定岡高校しかない。なぜか美久は成績優秀らしく、「定岡高なら楽勝」とのことらしい。まあその油断が怖い気もするが……

 美久は身長150cmにわずかに満たないくらいの小柄で、丸顔にぱっちりした二重の猫目に小ぶりな鼻、笑うと口角が上がる口元という小動物系の顔立ちだ。ポニーテールを揺らしながら活発に動き回る女子で、聞けば学校の男子からの人気も高いらしい。

 それにしても……俺の腕に押し付けられている美久のやわらかい双丘に、俺自身ちょっと驚いていた。あんなに小さかった美久が……いつも俺に抱きついたり、おんぶをせがんだりして子供だと思っていたのに……こんなに成長していたんだな。毎日会ってたら気がつかないことでも、たまに会うとわかることもある。

『うわー、ナオったら鼻の下伸ばして! ちょっと妹さん、くっつき過ぎじゃないの?』

 とりあえず俺はりんのツッコミを聞き流す。

「環奈さんもこんにちは」

 美久は俺の腕にしがみついたまま、環奈先生に挨拶をする。

「はい、美久ちゃん。こんにちは。元気そうね」

「はい、ナオ兄ぃの顔をみたら元気がでました! あ、環奈さん、朗報ですよ。マサ兄ぃには、未だに女の気配はありません」

「そうなの? それは朗報だわ! 美久ちゃん、あとでちょっと詳しく」

「はーい。ちなみになんですけど、ナオ兄ぃの方は既に売約済みになりましたからね」

「は?」『は?』
「えーっと……どういうこと?」

「はい。近い将来、美久がナオ兄ぃのお嫁さんになるんです。浄土真宗本願寺派の神前結婚で、兄妹の結婚を可能にしてもらうように、今お父さんに頼んでいるところです」

「……で、和尚はなんて?」

「ニコニコ笑ってました。つまりOKという意味です」

「単に呆れてるだけだろ」
『うわー、またキャラの濃い妹さんが出てきたわね。重度のブラコンだ』

「そんなことないもん! 世間体とか社会のルールとか法律とか、そんな世の中の既成概念は兄妹の愛の前では全く無力なんだよ! 数年後には美久はナオ兄ぃの妻になります! 名前も変わらないので、ちょうど都合がいいんです!」

 美久は片手で力強く拳を握り、声高らかに宣言した。以前からブラコン気味なことは気になっていたが、離れて暮らしている間にかなり悪化している。これは……何を言ってもダメっぽいな。

「美久、とりあえず家に入れてくれ。俺も環奈先生も疲れてるんだ」

 俺はそう言って寺の奥にある自宅へ歩いていく。中学の時まで使っていた俺の部屋は、そのまま残されている。環奈先生にはいつも通り客間に泊まってもらう。

 家の玄関をくぐると、ちょっと懐かしい匂いがする。築50年以上の古い木造平屋建ての家だが、部屋数だけは無駄に多い。

「環奈ちゃんはいつもの部屋じゃな。まあ勝手知ったる家じゃから好きに使ってくれればいい。それとナオ、部屋に霊壁を張っておいたぞ。多分ナオたちがいる間は持つじゃろう」

「和尚、お世話になります」
「サンキュー、オヤジ。助かるよ」

 俺と環奈先生はそれぞれの部屋へ向かう。俺は自分の部屋の中に入ると、自分の霊壁を解除した。

『へぇー、これがナオが中学までいた部屋なんだね。それにしても……なんだかいつものアパートの部屋と同じような感じがするよ。居心地というか空気感というか』

「オヤジが張った霊壁のせいだな。式神をつかって霊壁を守護させてるんだけど、実はそれなりの霊能力が必要なんだ。俺たちの滞在中霊壁が持つなんていうのは、オヤジの霊能力がバケモノレベルだからだ。俺なんかの霊壁だと、長くても丸1日ぐらいしか持たない」

『へぇー。あのエロ坊主、そんなに凄い人なんだね』

「ああ。俺も将来あれくらいのレベルにならないといけないんだけど……まったくなれる気がしねえ」

 ぼやいていても仕方ないので、やるしかないのだが……修行中でもオヤジとの歴然とした霊能力の差に凹むことも多い。

「りん。ここにいる間は俺も修行をしている時間が長くなる。その間は連れていけないから、ここで留守番な」

『えーつまんないなぁ……でも仕方ないか』

「一応テレビもあるし、俺が昔使ってたパソコンもある。まあそれで暇を潰しててくれ」

『パソコンよりスマホとかタブレットの方がいいなぁ』

「贅沢言うな。それにスマホやタブレットは、式神が触っても反応しないぞ」

『あ、そうか』

「まあ修行の時間以外は、できるだけ外に連れ出してやるようにするから」

『うん、ありがとう! 楽しみー』

 そうは言っても修行以外に学校の宿題もやらないといけないんだよな……俺は大量の宿題の事を考えると、げんなりした気分になった。
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