27 / 94
前編
妹の美久
しおりを挟む
「ナオ兄ぃーー!」
今度はそう叫びながら向こうの方から弾丸のように一人の少女が走ってきた。そして俺の胸にドスンとその体をぶつけて、俺の体にしがみつく。俺は「ブフォッ」と変な声を出しながら、その小柄な体躯を受け止めた。
「美久、危ないだろ? お寺の中は走っちゃだめだ」
「もうナオ兄ぃ、ずっと待ってたんだよ。」
そう言って俺の腕にしがみついているのは、妹の美久だ。俺の2つ下の中3で今年は高校受験の年なのだが、このあたりで比較的偏差値の高いところは県立定岡高校しかない。なぜか美久は成績優秀らしく、「定岡高なら楽勝」とのことらしい。まあその油断が怖い気もするが……
美久は身長150cmにわずかに満たないくらいの小柄で、丸顔にぱっちりした二重の猫目に小ぶりな鼻、笑うと口角が上がる口元という小動物系の顔立ちだ。ポニーテールを揺らしながら活発に動き回る女子で、聞けば学校の男子からの人気も高いらしい。
それにしても……俺の腕に押し付けられている美久のやわらかい双丘に、俺自身ちょっと驚いていた。あんなに小さかった美久が……いつも俺に抱きついたり、おんぶをせがんだりして子供だと思っていたのに……こんなに成長していたんだな。毎日会ってたら気がつかないことでも、たまに会うとわかることもある。
『うわー、ナオったら鼻の下伸ばして! ちょっと妹さん、くっつき過ぎじゃないの?』
とりあえず俺はりんのツッコミを聞き流す。
「環奈さんもこんにちは」
美久は俺の腕にしがみついたまま、環奈先生に挨拶をする。
「はい、美久ちゃん。こんにちは。元気そうね」
「はい、ナオ兄ぃの顔をみたら元気がでました! あ、環奈さん、朗報ですよ。マサ兄ぃには、未だに女の気配はありません」
「そうなの? それは朗報だわ! 美久ちゃん、あとでちょっと詳しく」
「はーい。ちなみになんですけど、ナオ兄ぃの方は既に売約済みになりましたからね」
「は?」『は?』
「えーっと……どういうこと?」
「はい。近い将来、美久がナオ兄ぃのお嫁さんになるんです。浄土真宗本願寺派の神前結婚で、兄妹の結婚を可能にしてもらうように、今お父さんに頼んでいるところです」
「……で、和尚はなんて?」
「ニコニコ笑ってました。つまりOKという意味です」
「単に呆れてるだけだろ」
『うわー、またキャラの濃い妹さんが出てきたわね。重度のブラコンだ』
「そんなことないもん! 世間体とか社会のルールとか法律とか、そんな世の中の既成概念は兄妹の愛の前では全く無力なんだよ! 数年後には美久はナオ兄ぃの妻になります! 名前も変わらないので、ちょうど都合がいいんです!」
美久は片手で力強く拳を握り、声高らかに宣言した。以前からブラコン気味なことは気になっていたが、離れて暮らしている間にかなり悪化している。これは……何を言ってもダメっぽいな。
「美久、とりあえず家に入れてくれ。俺も環奈先生も疲れてるんだ」
俺はそう言って寺の奥にある自宅へ歩いていく。中学の時まで使っていた俺の部屋は、そのまま残されている。環奈先生にはいつも通り客間に泊まってもらう。
家の玄関をくぐると、ちょっと懐かしい匂いがする。築50年以上の古い木造平屋建ての家だが、部屋数だけは無駄に多い。
「環奈ちゃんはいつもの部屋じゃな。まあ勝手知ったる家じゃから好きに使ってくれればいい。それとナオ、部屋に霊壁を張っておいたぞ。多分ナオたちがいる間は持つじゃろう」
「和尚、お世話になります」
「サンキュー、オヤジ。助かるよ」
俺と環奈先生はそれぞれの部屋へ向かう。俺は自分の部屋の中に入ると、自分の霊壁を解除した。
『へぇー、これがナオが中学までいた部屋なんだね。それにしても……なんだかいつものアパートの部屋と同じような感じがするよ。居心地というか空気感というか』
「オヤジが張った霊壁のせいだな。式神をつかって霊壁を守護させてるんだけど、実はそれなりの霊能力が必要なんだ。俺たちの滞在中霊壁が持つなんていうのは、オヤジの霊能力がバケモノレベルだからだ。俺なんかの霊壁だと、長くても丸1日ぐらいしか持たない」
『へぇー。あのエロ坊主、そんなに凄い人なんだね』
「ああ。俺も将来あれくらいのレベルにならないといけないんだけど……まったくなれる気がしねえ」
ぼやいていても仕方ないので、やるしかないのだが……修行中でもオヤジとの歴然とした霊能力の差に凹むことも多い。
「りん。ここにいる間は俺も修行をしている時間が長くなる。その間は連れていけないから、ここで留守番な」
『えーつまんないなぁ……でも仕方ないか』
「一応テレビもあるし、俺が昔使ってたパソコンもある。まあそれで暇を潰しててくれ」
『パソコンよりスマホとかタブレットの方がいいなぁ』
「贅沢言うな。それにスマホやタブレットは、式神が触っても反応しないぞ」
『あ、そうか』
「まあ修行の時間以外は、できるだけ外に連れ出してやるようにするから」
『うん、ありがとう! 楽しみー』
そうは言っても修行以外に学校の宿題もやらないといけないんだよな……俺は大量の宿題の事を考えると、げんなりした気分になった。
今度はそう叫びながら向こうの方から弾丸のように一人の少女が走ってきた。そして俺の胸にドスンとその体をぶつけて、俺の体にしがみつく。俺は「ブフォッ」と変な声を出しながら、その小柄な体躯を受け止めた。
「美久、危ないだろ? お寺の中は走っちゃだめだ」
「もうナオ兄ぃ、ずっと待ってたんだよ。」
そう言って俺の腕にしがみついているのは、妹の美久だ。俺の2つ下の中3で今年は高校受験の年なのだが、このあたりで比較的偏差値の高いところは県立定岡高校しかない。なぜか美久は成績優秀らしく、「定岡高なら楽勝」とのことらしい。まあその油断が怖い気もするが……
美久は身長150cmにわずかに満たないくらいの小柄で、丸顔にぱっちりした二重の猫目に小ぶりな鼻、笑うと口角が上がる口元という小動物系の顔立ちだ。ポニーテールを揺らしながら活発に動き回る女子で、聞けば学校の男子からの人気も高いらしい。
それにしても……俺の腕に押し付けられている美久のやわらかい双丘に、俺自身ちょっと驚いていた。あんなに小さかった美久が……いつも俺に抱きついたり、おんぶをせがんだりして子供だと思っていたのに……こんなに成長していたんだな。毎日会ってたら気がつかないことでも、たまに会うとわかることもある。
『うわー、ナオったら鼻の下伸ばして! ちょっと妹さん、くっつき過ぎじゃないの?』
とりあえず俺はりんのツッコミを聞き流す。
「環奈さんもこんにちは」
美久は俺の腕にしがみついたまま、環奈先生に挨拶をする。
「はい、美久ちゃん。こんにちは。元気そうね」
「はい、ナオ兄ぃの顔をみたら元気がでました! あ、環奈さん、朗報ですよ。マサ兄ぃには、未だに女の気配はありません」
「そうなの? それは朗報だわ! 美久ちゃん、あとでちょっと詳しく」
「はーい。ちなみになんですけど、ナオ兄ぃの方は既に売約済みになりましたからね」
「は?」『は?』
「えーっと……どういうこと?」
「はい。近い将来、美久がナオ兄ぃのお嫁さんになるんです。浄土真宗本願寺派の神前結婚で、兄妹の結婚を可能にしてもらうように、今お父さんに頼んでいるところです」
「……で、和尚はなんて?」
「ニコニコ笑ってました。つまりOKという意味です」
「単に呆れてるだけだろ」
『うわー、またキャラの濃い妹さんが出てきたわね。重度のブラコンだ』
「そんなことないもん! 世間体とか社会のルールとか法律とか、そんな世の中の既成概念は兄妹の愛の前では全く無力なんだよ! 数年後には美久はナオ兄ぃの妻になります! 名前も変わらないので、ちょうど都合がいいんです!」
美久は片手で力強く拳を握り、声高らかに宣言した。以前からブラコン気味なことは気になっていたが、離れて暮らしている間にかなり悪化している。これは……何を言ってもダメっぽいな。
「美久、とりあえず家に入れてくれ。俺も環奈先生も疲れてるんだ」
俺はそう言って寺の奥にある自宅へ歩いていく。中学の時まで使っていた俺の部屋は、そのまま残されている。環奈先生にはいつも通り客間に泊まってもらう。
家の玄関をくぐると、ちょっと懐かしい匂いがする。築50年以上の古い木造平屋建ての家だが、部屋数だけは無駄に多い。
「環奈ちゃんはいつもの部屋じゃな。まあ勝手知ったる家じゃから好きに使ってくれればいい。それとナオ、部屋に霊壁を張っておいたぞ。多分ナオたちがいる間は持つじゃろう」
「和尚、お世話になります」
「サンキュー、オヤジ。助かるよ」
俺と環奈先生はそれぞれの部屋へ向かう。俺は自分の部屋の中に入ると、自分の霊壁を解除した。
『へぇー、これがナオが中学までいた部屋なんだね。それにしても……なんだかいつものアパートの部屋と同じような感じがするよ。居心地というか空気感というか』
「オヤジが張った霊壁のせいだな。式神をつかって霊壁を守護させてるんだけど、実はそれなりの霊能力が必要なんだ。俺たちの滞在中霊壁が持つなんていうのは、オヤジの霊能力がバケモノレベルだからだ。俺なんかの霊壁だと、長くても丸1日ぐらいしか持たない」
『へぇー。あのエロ坊主、そんなに凄い人なんだね』
「ああ。俺も将来あれくらいのレベルにならないといけないんだけど……まったくなれる気がしねえ」
ぼやいていても仕方ないので、やるしかないのだが……修行中でもオヤジとの歴然とした霊能力の差に凹むことも多い。
「りん。ここにいる間は俺も修行をしている時間が長くなる。その間は連れていけないから、ここで留守番な」
『えーつまんないなぁ……でも仕方ないか』
「一応テレビもあるし、俺が昔使ってたパソコンもある。まあそれで暇を潰しててくれ」
『パソコンよりスマホとかタブレットの方がいいなぁ』
「贅沢言うな。それにスマホやタブレットは、式神が触っても反応しないぞ」
『あ、そうか』
「まあ修行の時間以外は、できるだけ外に連れ出してやるようにするから」
『うん、ありがとう! 楽しみー』
そうは言っても修行以外に学校の宿題もやらないといけないんだよな……俺は大量の宿題の事を考えると、げんなりした気分になった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる