人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 陛下と別れて、自分の部屋で過ごしているのも退屈だったし、豪華すぎて居た堪れなくなったので、マリに庭園を案内してもらう事になった。

 グリムヒルトの王城は半分海に浮かんでいる。小型船なら海から城に入る事が出来る珍しい造りだ。

 庭園も海の目の前に花が咲いてる珍しい庭園らしい。

 案内されて歩いている途中、城の別棟にある塔から大声が聞こえた。
「こんな物が食えるか!!」
 怒声が響き渡る。

 侍女と思われる声がしきりに謝っている。
 あまりのやり取りに自然と足が向かった。
 塔に向かい階段を駆け上がる。
 途中マリが止めていたけど、大丈夫よと笑ってみせた。

 少し開いている扉から顔を覗かせて訊ねる。
「何事なのですか?」
 そこには年配の男性がベットの上に座っていた。
 涙目の侍女がこちらを振り返る。
「誰だ、お主は」

 男性は陛下と同じ翠の瞳に剣呑としたものを乗せて私を見た。

「昨日よりグリムヒルト王国に参りました、マグダラス王国第一王女レイティア・エレオノーラ・アルテーンでございます。お見知り置きを」
 カーテシーの挨拶をする。

 城の中でこうしてお世話されてる時点で、この人が偉い人なのはわかる。

 それに何よりこの男性は、お顔こそ似てないけれど、どことなく雰囲気が陛下に似ていた。

「ほう? マグダラスからの客人が何故この様な老ぼれの寝所に参った?」

 思ったままを言う。
「あまりにも大きな声でしたので、困り事がお有りかと思いました。お食事がお気に召さないのですか?」

 ベットの上に跨ぐ様に架かる机の上にあった食器は中身と共に床に転がっていた。

「マリ。悪いのですが、ここを片付けてくれませんか?
 それとあなたは新しいお食事を用意して下さいますか?」
 にっこり笑って二人の侍女にお願いする。
「……っはいっ!」
 侍女は足早に部屋を出る。

 マリは床の無惨な姿になった食事を片付け始めた。

「要らん! 気分が悪い!」
 男性はフイっと顔を逸らす。

「でもお食事を摂らないとお身体に障ります」
「食いたくもない物を出されて不快だ!」
「何でしたら食べられるのですか?」
「白奏魚のソテーなら食ってやる」

 なんだろう? それ?

 マリの方を見ると動揺した顔をしてる。
「白奏魚ってなあに?」
 マリに聞いてみる。
「白奏魚はこの時期には獲れません……。しかも南の諸島の潮の荒い海域に生息しています……。とても貴重な魚でございます」

「そのお魚は貴重で無いそうですよ? 他に食べられるものはおありではないですか?」

 男性は、陛下と同じ翠の瞳に剣呑な色を浮かべて嘲笑する。
「用意出来ぬか? ならば食事は要らん!」

 そのタイミングで先程の侍女が新しく食事を運んで来た。
「お待たせ致しました。太公様」

「ほら、太公様、お食事が来ました。白奏魚ではなくてもきっと美味しいですよ?」
 にこりと笑って机に乗せ、スプーンを渡した。

 太公様はスプーンを受け取ると、窓の外に放り投げた。

「スプーンが落ちた。王女よ、お前が拾って参れ」
 嘲笑をより深くして私を見た。

「わかりました。」

 部屋を出て、階段を降りる。
 スプーンを拾って厨房へ行く。

「お仕事中すみません。バスケットにスプーンとフォークとナイフをありったけ入れて頂けますか?」
 嫌な顔をされながらも太公様が御所望だと言うと渋々用意してくれた。

 太公様の元へ戻る。
 二人の侍女は困り果てた様に立ち尽くしていた。
「さ、幾らでも落として下さいね? 代わりは山程ありますから。」

 私はやっぱりニッコリ笑って、机の上にバスケットをガシャンと金切音を上げて置いた。

 太公様は唖然としていた。
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