神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第40話 使者来訪(上)

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 とある平日。

 今日も今日とて、水龍さまと他愛のないお話をして仕事を終えたわたしのところに、ライオネルが固い表情でやってきた。

「クレア、疲れているところ申し訳ないんだけど、今すぐ謁見えっけんの間に来てもらえないだろうか?」

「わたしですか? 構いませんけど、なにかあったんですか?」

「実はシェンロン王国から使者が来たんだ」

「シェンロン王国から? それまた、どうしてでしょうか?」

 さっぱり話が見えないわたしは、きょとんとした顔で、首をかしげた。

「それが、クレアをシェンロンに連れ戻したいと、そう言ってきてるんだ」

「ふぇ?」

 わたしを?
 シェンロンに?
 連れ戻す?

 ……なんで?

 っていうか、わたし別に、帰らなくてもいいんだけど……。
 今のほうがすっごく幸せだし?

「とにかく、一緒に来てくれないかな。ああ大丈夫、君はもうボクの婚約者、つまりブリスタニア王族の一員だ。絶対に悪いようにはしないから。そこだけは安心して」

 そう言われたわたしは、

「わかりました」

 ライオネルに連れられて、急いで謁見えっけんの間へと向かった。




 謁見えっけんの間につくと、既に王さまがいて、その前にはシェンロン王国からやってきた使者がいた。

 使者は2人いる。

 一人は見知らぬ男で、たぶん下級貴族だ。

 もう一人は見知った顔だった。

 それは一か月前のあの時、バーバラの隣にいた、わたしを追放した上級貴族の男(名前は知らないので、これからは「追放ヤロウ」と呼ぼう)だった。

 こんな上級貴族が、わざわざわたしなんかを呼ぶために、使者に来るなんてことはありえない。

 つまり追放ヤロウは、バーバラにいいとこでも見せようと思って、本来の使者と一緒に乗り込んできたに違いない。

 やってきたわたしを見て、見くだしたように鼻で笑った追放ヤロウ。
 その顔を見て悔しさは――うん、不思議と、ちっともなかった。

 きっと今がすごく幸せだから、悔しさなんてどうでもいい気持ちは、感じないんだと思うな。

 そして追放ヤロウは、わたしに、

「クレアの国外追放を取り消す。またこれまでと同条件で『神龍の巫女』として再雇用するものとする。ただちにシェンロン王国に帰国し、巫女としての業務にあたられよ」

 そんなことを言ってきた。

 もちろんわたしの答えは決まってる。
 悩むまでもない。

「申し訳ありませんが、お断りします」

「そうか。では今すぐにでも帰国を――は? 断るだと?」
「はい。それがなにか?」

 わたしがすまし顔でしれっと答えると、

「なにをバカなことを言っている。これは俺の婚約者で、4大貴族ブラスター家ご令嬢でもあるバーバラの命令だぞ。それをお前ごとき庶民が断れるものか。くだらんことを言ってないで、いいからさっさとシェンロンに帰るのだ」

 追放ヤロウがわたしに詰め寄ってきて、手を掴もうとする。
 すると、

「王たる余の前で何を勝手なことをしておる、この無礼者めが――控えよっ!」

 王さまが怒りに満ち満ちた声で、追放ヤロウを一喝した。

 そのあまりの怒声に追放ヤロウは震えあがって、すぐにわたしから離れた。

 気持ちはわからなくもない。
 今のはほんと怖かったから。

 関係ないわたしまで、思わずちびりそうになるくらいに怖かったから。

 それでも追放ヤロウは、平然を装いながら王様に進言する。

「お、恐れながらブリスタニア王に申し上げます。これは我がシェンロン王国内部の話でありますゆえ、どうかブリスタニア王にもご理解をいただきたく――」

「ならぬ」

「それはつまり、ブリスタニア王国は我がシェンロン王国の内政に、不当に干渉をなさると言うつもりですか? であればその旨を、本国に伝えることになりますが? 我々は貴国の不当な内政干渉を、指をくわえて見てはおりませんぞ?」

 武力行使までにじませながら言いすがる追放ヤロウに、しかし王さまは言った。

「まぁそうハヤるでない、使者殿よ。そもそもそなたは、ひどく考え違いをしておるからの。まずはそれを正そうではないか」

「と、おっしゃいますと?」

「そこにおるクレア殿は、余の息子ライオネルと婚約をしておる。よって既にその身は、ブリスタニア王族の一員である」

「……は? な、なにをおたわむれをおっしゃっているのやら。その庶民が王族などと……」

 王さまのその言葉に、追放ヤロウがキツネにつままれたような、困惑の表情を浮かべた。

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