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第40話 使者来訪(上)
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とある平日。
今日も今日とて、水龍さまと他愛のないお話をして仕事を終えたわたしのところに、ライオネルが固い表情でやってきた。
「クレア、疲れているところ申し訳ないんだけど、今すぐ謁見の間に来てもらえないだろうか?」
「わたしですか? 構いませんけど、なにかあったんですか?」
「実はシェンロン王国から使者が来たんだ」
「シェンロン王国から? それまた、どうしてでしょうか?」
さっぱり話が見えないわたしは、きょとんとした顔で、首をかしげた。
「それが、クレアをシェンロンに連れ戻したいと、そう言ってきてるんだ」
「ふぇ?」
わたしを?
シェンロンに?
連れ戻す?
……なんで?
っていうか、わたし別に、帰らなくてもいいんだけど……。
今のほうがすっごく幸せだし?
「とにかく、一緒に来てくれないかな。ああ大丈夫、君はもうボクの婚約者、つまりブリスタニア王族の一員だ。絶対に悪いようにはしないから。そこだけは安心して」
そう言われたわたしは、
「わかりました」
ライオネルに連れられて、急いで謁見の間へと向かった。
◆
謁見の間につくと、既に王さまがいて、その前にはシェンロン王国からやってきた使者がいた。
使者は2人いる。
一人は見知らぬ男で、たぶん下級貴族だ。
もう一人は見知った顔だった。
それは一か月前のあの時、バーバラの隣にいた、わたしを追放した上級貴族の男(名前は知らないので、これからは「追放ヤロウ」と呼ぼう)だった。
こんな上級貴族が、わざわざわたしなんかを呼ぶために、使者に来るなんてことはありえない。
つまり追放ヤロウは、バーバラにいいとこでも見せようと思って、本来の使者と一緒に乗り込んできたに違いない。
やってきたわたしを見て、見くだしたように鼻で笑った追放ヤロウ。
その顔を見て悔しさは――うん、不思議と、ちっともなかった。
きっと今がすごく幸せだから、悔しさなんてどうでもいい気持ちは、感じないんだと思うな。
そして追放ヤロウは、わたしに、
「クレアの国外追放を取り消す。またこれまでと同条件で『神龍の巫女』として再雇用するものとする。ただちにシェンロン王国に帰国し、巫女としての業務にあたられよ」
そんなことを言ってきた。
もちろんわたしの答えは決まってる。
悩むまでもない。
「申し訳ありませんが、お断りします」
「そうか。では今すぐにでも帰国を――は? 断るだと?」
「はい。それがなにか?」
わたしがすまし顔でしれっと答えると、
「なにをバカなことを言っている。これは俺の婚約者で、4大貴族ブラスター家ご令嬢でもあるバーバラの命令だぞ。それをお前ごとき庶民が断れるものか。くだらんことを言ってないで、いいからさっさとシェンロンに帰るのだ」
追放ヤロウがわたしに詰め寄ってきて、手を掴もうとする。
すると、
「王たる余の前で何を勝手なことをしておる、この無礼者めが――控えよっ!」
王さまが怒りに満ち満ちた声で、追放ヤロウを一喝した。
そのあまりの怒声に追放ヤロウは震えあがって、すぐにわたしから離れた。
気持ちはわからなくもない。
今のはほんと怖かったから。
関係ないわたしまで、思わずちびりそうになるくらいに怖かったから。
それでも追放ヤロウは、平然を装いながら王様に進言する。
「お、恐れながらブリスタニア王に申し上げます。これは我がシェンロン王国内部の話でありますゆえ、どうかブリスタニア王にもご理解をいただきたく――」
「ならぬ」
「それはつまり、ブリスタニア王国は我がシェンロン王国の内政に、不当に干渉をなさると言うつもりですか? であればその旨を、本国に伝えることになりますが? 我々は貴国の不当な内政干渉を、指をくわえて見てはおりませんぞ?」
武力行使までにじませながら言いすがる追放ヤロウに、しかし王さまは言った。
「まぁそうハヤるでない、使者殿よ。そもそもそなたは、ひどく考え違いをしておるからの。まずはそれを正そうではないか」
「と、おっしゃいますと?」
「そこにおるクレア殿は、余の息子ライオネルと婚約をしておる。よって既にその身は、ブリスタニア王族の一員である」
「……は? な、なにをお戯れをおっしゃっているのやら。その庶民が王族などと……」
王さまのその言葉に、追放ヤロウがキツネにつままれたような、困惑の表情を浮かべた。
今日も今日とて、水龍さまと他愛のないお話をして仕事を終えたわたしのところに、ライオネルが固い表情でやってきた。
「クレア、疲れているところ申し訳ないんだけど、今すぐ謁見の間に来てもらえないだろうか?」
「わたしですか? 構いませんけど、なにかあったんですか?」
「実はシェンロン王国から使者が来たんだ」
「シェンロン王国から? それまた、どうしてでしょうか?」
さっぱり話が見えないわたしは、きょとんとした顔で、首をかしげた。
「それが、クレアをシェンロンに連れ戻したいと、そう言ってきてるんだ」
「ふぇ?」
わたしを?
シェンロンに?
連れ戻す?
……なんで?
っていうか、わたし別に、帰らなくてもいいんだけど……。
今のほうがすっごく幸せだし?
「とにかく、一緒に来てくれないかな。ああ大丈夫、君はもうボクの婚約者、つまりブリスタニア王族の一員だ。絶対に悪いようにはしないから。そこだけは安心して」
そう言われたわたしは、
「わかりました」
ライオネルに連れられて、急いで謁見の間へと向かった。
◆
謁見の間につくと、既に王さまがいて、その前にはシェンロン王国からやってきた使者がいた。
使者は2人いる。
一人は見知らぬ男で、たぶん下級貴族だ。
もう一人は見知った顔だった。
それは一か月前のあの時、バーバラの隣にいた、わたしを追放した上級貴族の男(名前は知らないので、これからは「追放ヤロウ」と呼ぼう)だった。
こんな上級貴族が、わざわざわたしなんかを呼ぶために、使者に来るなんてことはありえない。
つまり追放ヤロウは、バーバラにいいとこでも見せようと思って、本来の使者と一緒に乗り込んできたに違いない。
やってきたわたしを見て、見くだしたように鼻で笑った追放ヤロウ。
その顔を見て悔しさは――うん、不思議と、ちっともなかった。
きっと今がすごく幸せだから、悔しさなんてどうでもいい気持ちは、感じないんだと思うな。
そして追放ヤロウは、わたしに、
「クレアの国外追放を取り消す。またこれまでと同条件で『神龍の巫女』として再雇用するものとする。ただちにシェンロン王国に帰国し、巫女としての業務にあたられよ」
そんなことを言ってきた。
もちろんわたしの答えは決まってる。
悩むまでもない。
「申し訳ありませんが、お断りします」
「そうか。では今すぐにでも帰国を――は? 断るだと?」
「はい。それがなにか?」
わたしがすまし顔でしれっと答えると、
「なにをバカなことを言っている。これは俺の婚約者で、4大貴族ブラスター家ご令嬢でもあるバーバラの命令だぞ。それをお前ごとき庶民が断れるものか。くだらんことを言ってないで、いいからさっさとシェンロンに帰るのだ」
追放ヤロウがわたしに詰め寄ってきて、手を掴もうとする。
すると、
「王たる余の前で何を勝手なことをしておる、この無礼者めが――控えよっ!」
王さまが怒りに満ち満ちた声で、追放ヤロウを一喝した。
そのあまりの怒声に追放ヤロウは震えあがって、すぐにわたしから離れた。
気持ちはわからなくもない。
今のはほんと怖かったから。
関係ないわたしまで、思わずちびりそうになるくらいに怖かったから。
それでも追放ヤロウは、平然を装いながら王様に進言する。
「お、恐れながらブリスタニア王に申し上げます。これは我がシェンロン王国内部の話でありますゆえ、どうかブリスタニア王にもご理解をいただきたく――」
「ならぬ」
「それはつまり、ブリスタニア王国は我がシェンロン王国の内政に、不当に干渉をなさると言うつもりですか? であればその旨を、本国に伝えることになりますが? 我々は貴国の不当な内政干渉を、指をくわえて見てはおりませんぞ?」
武力行使までにじませながら言いすがる追放ヤロウに、しかし王さまは言った。
「まぁそうハヤるでない、使者殿よ。そもそもそなたは、ひどく考え違いをしておるからの。まずはそれを正そうではないか」
「と、おっしゃいますと?」
「そこにおるクレア殿は、余の息子ライオネルと婚約をしておる。よって既にその身は、ブリスタニア王族の一員である」
「……は? な、なにをお戯れをおっしゃっているのやら。その庶民が王族などと……」
王さまのその言葉に、追放ヤロウがキツネにつままれたような、困惑の表情を浮かべた。
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