『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

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今日もアクアオッジ家は平和です

31 ⑥水揚げされたカニとどでかい不動産

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 ドラゴンたちが目指す先は、アクアオッジ家のタウン・ハウスである。
 一定期間社交を行わねばならない関係で、王都に滞在するときの辺境伯一家の別邸ともいえる。

 数年前とある侯爵家が、この国では禁止されている人身売買のかどで爵位剥奪となった。
 彼らの所有していた邸宅は、土地ごと売りに出された。
 昔ながらの名門だったため、土地と邸宅は貴族たちの邸宅が建ち並ぶ一角の中でも、超一等地でやたらと広い。当然のことながら誰もが買えるようなお値段ではなかった。

 土地を分割して売ろうかという流れになったとき、王太子殿下が買い手の情報を不動産屋に流した。
 優秀な側近の一人、アクアオッジ家の次男レイファ。たびたびホームシックにかかる彼をがっちり掴んで離さないために『それなら社交シーズン中は、家族のほうを王都に呼んじゃえばいいんじゃない?』と策を巡らせたのだ。

 当時アクアオッジ家はようやく資金も出来てタウン・ハウスを建てる土地を探していた。
 毎年毎年、宿に宿泊ではなかなか疲れも取れないし、宿はシーズンとあって、全員にベッドがいきわたる部屋数を、予約することも叶わない。大家族だから仕方ないのだが──
 結果、一つのベッドに二人三人で寝るのは当たり前。
 だが皆メリルと一緒のベッドにだけはなりたくない。

 なにせ横になって眠るメリルの両手足は、水揚げされたカニのように自由自在に動き回り、一緒に寝る者を打ちのめした(物理的に)。
 夜中にそうやって何度も起こされ、時には顔に足が降ってきて鼻血を出した兄姉もいる。末っ子で皆メリルのことは可愛くて仕方ないが、寝る時だけは敵だった。
 掛布団までもが奪い去られ、一緒のベッドで身体むき出しで起きた者の心は、翌朝にはいつも折れていた。


 一家は、メリルがソルを連れて街に買い物に行った隙に、家族会議を行った。
 貴族たちのタウン・ハウスが建ち並ぶ一角はなかなか売地など出ないことを知っていたので、とりあえずどんな狭い土地でもいいから、一人一つのベッドがあれば充分だと、皆の意見が一致する。

 ……(最優先事項だ)。
 そうして(メリル以外の)家族の心が一つになった。


 そんな家探しの中、不動産屋がやってくる。
 セールストークに、一家は舞い上がった。

『ええもう、それは広い土地でございまして』

 ざわざわ……アクアオッジ一家が色めき立つ。
 カニ……ではなくメリル(の寝相)から逃れられると知って、家族が同時に、蠢いている手足もなく安らかに眠れる夢を見た。それはなんて素晴らしいんだろう。 

「一人一部屋のタウン・ハウスが建てられますかしら。大家族なので使用人部屋を入れて十部屋は欲しいのですけれど。無理でもせめて一人一台のベッドを」

 母アドリアナが、目をキラキラさせながら不動産屋に質問する。
 きっと想像しているのはこじんまりとしたかわいらしいタウン・ハウスだろう。

『充分その広さはございます。王太子殿下直々のお話ということもございますし、分割する手間と時間と手数料も考慮に入れ、お値段は勉強致しました』

「王太子殿下直々のお話?」
 何のことかよく分からなくて、辺境伯ザカリーは首を傾げた。
「左様でございます。今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの、アクアオッジ辺境伯家に相応しいタウン・ハウスを──とのお言葉添えがありまして……」

 このあたりでもう少し疑うべきだったのだ。

「なあ、セバスチャン、少し調べてくれないか? 王都のタウン・ハウスの相場が全く分からない」
 辺境伯はさすがに大きな金額が動くとあって、へっぴり……ではなく及び腰になっていた。

「確かにそうでございますね……情報屋に調査するよう依頼してみましょう」

 セバスチャンも、腰を抜かしそうな金額だったので調査を依頼する。何よりも今のアクアオッジの資産を考えると、ギリギリ払えてしまう金額なのが悩ましいところだったのだ。 

 その結果調査だと、確かに土地と屋敷の広さからしたら、相場価格よりもかなり抑えられた金額だということが判明した。
 不動産屋の『お値段は勉強致しました』は本当だった。
(詐欺ではないようだが……)


 後日、支払金を用意した執事長のセバスチャンは、現ナマのインパクトに腰を抜かしかけたが、執事としてのプライドで表情には出さない。
 ……ただし、こめかみにつつーと浮かんだ冷や汗はぬぐいようがなかった。

 現辺境伯ザカリ―にも「この金額でようございますか?」と尋ねたが、今までに買ったこともないが、払える金があるならば大丈夫だろう、ということで契約は成立してしまった。



 そうしてワクワクしながら現地に到着したアクアオッジ一家は、買い取った土地を見てあんぐりとする。全員あごが地面に刺さるくらいびっくりした。
 さすが貯めていたお金がすっからかんになっただけのことはある。


 とんでもなく広い土地と、とんでもなく広く、悪趣味な金ぴか像がこれでもかと乗っかっている屋敷がみんなの目前にあった。
 
 アクアオッジ家は、王都で一番の広さの土地を所有してしまったのだ──


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