迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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170. 猛炎の美しきハンター

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 翌日からマークは、みんなのお土産や自分たちが食べる分の魔牛狩りに本気を出してきた。

 見つけた魔牛も小さかったり痩せていたら狩らずに無視して、魔牛をじっくり吟味しだしたのにはおどろく。

 聞いてみると、本来はそうしてホントに良いものを狩って持って帰っていたらしい。

 狩ったあとはみんなで捌いて、氷の魔法が使える者がいたら部位別に軽量化し凍らせ運んでいくか、そのまま簡単な手押し荷車で一頭丸ごと運ぶのかは、そのときのリーダーが決めていたそうだ。

 今回は肉付きの良い個体を選んで狩るだけだから楽だと笑っていた。
 
「他の魔獣に襲われる危険を減らすため大抵は、狩ったら大急ぎで帰えるんだ」

 人気の魔牛だけに、ここは冒険者も多い。

「通常なら冒険者たちが同じ獲物を狙って、重ならないようにするだけでも、一苦労なんだぞ」

「そうか。良い個体を一頭見つけるのも、たいへんなんだね」

 冒険者を避けて魔牛を探し、マークが気に入った魔牛だけ狩っていくので、時間がすごくかかる。

 だんだんと目も肥えてきて、良い魔牛だけを狩るので気づいたら二日が過ぎていた。
 マークの本気度がうかがえる。

 最後の方はチェリーまで、マークの要望を理解しだして、教えてくれる魔牛も大きな個体になっていく。 

 そうして冒険者があまりに多いときはボードで湖まで戻り、一日中泳いで遊んだりもした。
 息抜きも大切!
 コレ、忘れない。

 あっという間に時は過ぎ、冒険して明日で二週間になる。
 

 今日からは、もっと西の奥まで歩いて進む。
 
「ここから奥には、おれもあまり行ったことがない。猛炎の美しきハンターと呼ばれている魔獣ケンシコがいるから気をつけて進むんだ!」

「猛炎の美しきハンターケンシコ? それって、キレイな魔獣なの?」

「おれは見たことがないが、からだにバラの花の模様がある大型のたぶん? ネコ科の魔獣だ。この前ギルドの冒険者仲間に聞いた話では、今はロゼット イチリンとロゼット ニリンと呼び名が付いたケンシコが幅を利かせていると教えてくれたよ」

「ロゼット イチリン と ロゼット ニリン?」

「ああ。偶然なんだが、正面から見てロゼット イチリンは眉間の真ん中にバラが一輪だけ咲いているように見える黒い斑紋があるそうだ。ロゼット ニリンは正面から見て顔には斑紋が無いが、両肩に一輪ずつバラが二輪咲いているように見える黒い斑紋があるからその名が付いたらしい。ここ数年はイチリンが特に暴れているそうで、冒険者の被害も多数出ている」

「被害って、人を食べるの?」

「いや、魔獣は人を食べないぞ。オモチャのように遊んで殺される。まだ若く子どもらしいからな……人なんて魔獣からみたらオモチャと一緒なんだよ。だから全員殺されるときもあれば、飽きたら去ってくれるときもあるんだ」

「出会って殺されずに済んだ人もいるの?」

「まずみんな被害にあうだろうな……火を吐くんだ。ただ運が良ければ、命は助かる可能性もあるが……低いな」

「そうか。ネコ科でまだ若いなら元気だよね。動く人はネズミと同じなのかな? 逃げれば確実に追われそう……でも、助かった人がいるからイチリンとかニリンっていう呼び名が付いたんだしね……」

 マークが軽く頷いている。

「会いたくない魔獣だよ……」

「ああ、そうだな……」

 マークの様子が、ちょっとだけおかしい?
 目が少し泳いでいる?
 なにか落ち着かない、迷っているみたい……

「マーク? 他にも、思うことがあるの?」

「んっ、やっぱり変だったか? 実は、今回の冒険に少しでも情報を得ようと、ギルドに行ったんだが……そこで昔の知り合いに会ってな。ロゼット イチリンに、昔世話になった冒険者仲間が数人やられたようなんだ」

「えっ、死んじゃったの?」

「ああ、炎に焼かれたそうだ……」

「うそ?! ケンシコって、そんなに強いの?」

「待ち伏せされて、 あっという間だったと……助かった仲間が教えてくれた……そいつも酷い火傷だったそうだが、少し離れていて助かったらしい」

「うわーっ。マーク、つらかったね……」

「まあな。なんて声を掛けて慰めたらいいんだか……迷ったよ。そのやられたうちの一人が、ドワーフ族の人でな。おれが冒険者に十三歳でなってから、すごくお世話になった人だったんだ……」

 なんとっ!? 
 マークは、十三歳で冒険者になったのか!

 もう、情報がいっぱいありすぎて、ちょっと歩くのをストップしてもらう。

「マーク! ストップ! わたしの頭がもう一杯いっぱいだから、少し休憩しよう!」

 ちょうどいい木陰がある。
 四隅に強いバリアが張れる認識されない魔道具を置いて、どこでも座れる椅子とテーブルをだす。

 マークに香り高いお茶とカベルネのところで買った干しブドウを出して、甘い物も口に入れてもらい、ゆっくり話の続きを聞く。
 
「もう大半は、話したぞ……」

「いいから、いいから……ねっ。これ食べて、お茶飲んで!」
 
 マークが困った顔をしてちょっとだけ笑って、お茶を一口飲んでくれた。

 よかった……

 干しブドウを一粒食べて、話し出す。

「十三歳で冒険者をはじめてからは、思っていたよりうまくことがいきすぎて調子に乗ってな、ひとりで無謀な冒険をして、六匹のシルバーウルフに囲まれてしまったんだよ」

「うわーっ!? 六匹は、すごいね……」

「ああ、完璧に囲まれてもうダメだと思ったときに助けてくれたのが、亡くなったブラントさんだったんだ。それからおれが一緒についてまわって、いろいろ教えてもらったんだよ」

「恩人だったんだね」

「ああ、そうだ。その母親とも会ったことがあるんだがドワーフ族の人だから寿命が長い。たぶん今では、おれのほうが年上に見えるだろう。夫は騎士で人族だったから、とっくに寿命で亡くなっている。母親も騎士をしていたが、ひとり息子のブラントさんが二年前に亡くなってから、騎士を辞めて冒険者になって、息子の敵をとるためにロゼット イチリンを、ひとりでずっと探しているらしいんだ」

「えーっ、二年もっ?」

「そうだ、ケンシコは行動範囲が広い。ある程度の暑いところも寒いところも大丈夫なんだよ。それに、眉間の真ん中にバラが一輪。それだけが目印だ……今もひとりでずっとダンジョンに潜っているそうだ……」

「うわ~っ、それはすごくたいへんだよっ?」

「ああ。ただ八十年前に十代目の王様に戻ったのをキッカケに、ブラントさんの両親が夫婦で騎士を辞めて人族の父親との思い出作りだと言って親子三人で十年間、冒険者をしててな、ダンジョンに家族で長く潜っていた事があるらしいんだ。楽しい思い出だったとブラントさんが微笑みながらよく話してくれてた……」

「仲がよかったんだ」

「そうだな。だからこのダンジョンには詳しいはずなんだよ……無事だとは思うんだが……」

「マーク……心配なんだね……うん。わかった! じゃあ、そのお母さんに協力してあげよーよっ!!」

「ホントかっ?!」

 あーっ、マークがうれしそう……

 気づけて、よかった!




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