俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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煙草の効能①

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「……なるほど、あの煙草が原因だったんだ。辺境伯はそのこと知っていて、エディにあれ吸わせてたのかな?」

「何とも言えませんね……亡くなった祖父から言いつけられていただけの可能性もありますし。獣人避けの効果は知っていても、悪臭と認識されるとまでは知らなかったのではと、私は思ってますが」

 ……もし知っててあれ吸わせたうえでセネーバに送り出したんなら、あのクソ親父殴る。もう二度とイケオジだなんて誰にも言わせないレベルにボコボコにする。絶対にだ。

「でも、昨日ほどではないけど、他の獣人の生徒がエディのことを遠巻きにしてる感じはあるよねぇ? 朝から誰にも話しかけられてないし」

 昼食のパスタを優雅にフォークで巻き取りながら、クリスが周囲の生徒を見渡す。
 昨日のように嫌悪を露わにされることはないけど、俺を見る生徒の顔はどれも困惑しているように見える。
 クリスやジェフを見る生徒達の顔がやたらニヤついていることを考えれば、正直どちらがましかわからないのだが。

「消臭魔法をかけたのですが、全く臭いがしないのも獣人にとっては異様らしくて。明日は魔法陣をいじって、煙草の臭いだけ消すようにします」

 まあ、昨日よりはだいぶましだ。何せパスタの味がする。
 塩コショウとベーコンで炒めた、マカロニのようなもちもちパスタを食べながら、内心じーんとする。
 獣人の料理は素材重視で味つけは最小限だが、なかなか美味しい。料理や食材の輸出を通して、友好関係を築くという手段も通じるかもな。……コロッケ無双はありか。
 そんな明後日なことを考えながら食べる喜びを噛み締めていると、何故かクリスとジェフが(クリスはともかくいつも笑顔なジェフには珍しいことに)非常に微妙そうな顔をした。

「いや、それはやめた方がいいんじゃないかなー?」

「なんでです?」

「実はエディがいない時に、僕もジェフも獣人の皆さんにすっごくアタックされているんだ。『俺の子どもを産んでくれ』って」

「……は?」

 小柄で可愛らしいクリスはともかく、アストルディア並みにデカムキなジェフまで、子どもを産む方だと?

『安産型だって、尻を撫でられたから、思わず声出しちゃったよー(泣)』

「アフターケアは僕がしておいたけど、まさか一日でジェフが力を使うなんて想定外だったよ。ないと思うけど、もし僕が側にいない時にジェフが力を使ったら、エディが後処理しておいてね。よほどジェフが激怒してない限り、普通の聖魔法で治せるからさ」

 四年間俺が一度も声を聞いたことがないジェフが、一日で異能を使うなんて、よっぽどだ。
 思わず笑みが引き攣る俺に、エディが意味ありげに流し目を送りながら笑った。

「ジェフでこれなんだから、多分全属性持ちのエディはもっと気に入られると思うよ。臭いで魔力の質がバレたらね」

 クリスが口説いてきた生徒から聞き出したことを、まとめると。
 獣人が種族・性別問わず孕ませられるのは、それだけ子どもを産ませられるくらい魔力相性が合う相手が希少であることの裏返しらしい。
 おまけに希少な魔力相性が良い相手が、別種の獣人であった場合。子どもがどちらの種族の獣人になるかも、両親どちらの魔力の性質を引き継ぐかも、確率は半々なんだとか。一般的に大型な肉食獣ほど魔力が高く、力も強い傾向にある獣人にとって、魔力が弱く力が弱い種族の獣人としか相性が合わない状況は、一族の弱体化に繋がると歓迎されないらしい。その為子どもが生まれる可能性が低くても、一縷の望みに託して、魔力相性の合わない魔力が高い肉食獣同士で番うこともあるのだとか。
 しかし相手が人間である場合。多少魔力の相性が悪くても、対獣人よりも子どもを孕むことができる可能性が高いらしく。おまけに生まれる子どもは必ず、父親の種族である獣人。魔力の性質こそ、両親どちらに似るかわからないが、俺達のように魔力が高い場合はどちらに似ても全く問題がない。
 そんなわけで、クリスもジェフも、臭いで少しでも魔力相性が良いと思われた生徒達から子どもを産んでくれと口説かれまくりらしい。
 ……何そのモテ期。全く羨ましくない。
 

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