処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

対決19

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「やっぱりここに来ましたね。ルイス王……いや」

 背後から音もなく現れたのは、かつてアシュリナの腹違いの兄だった人。
 けれど、その正体に、私はもう気づいている。

「それとも、トリアス神と言った方がよろしいですか?」

 初代【災厄の魔女】の記憶を持つユーリアの異常な傾倒に、一般の魔術師ではけして真似できない亜空間を生成する能力。
 見た目だけは本物を模していても、本物と違って【神】の気配を感じない空っぽの神殿に、幼いアシュリナが見たルイス王の異常行動。

 気づいてしまえば、簡単なことだった。
 
 ルイス王は、トリアス神の加護を得ていたんじゃない。

 ルイス王こそ、トリアス神そのものだったのだ。

「……まさかこの時代に、我が名を知る者がユーリア以外にいるとはな」

 ルイス王は愉快そうに口端をつり上げて、片眉を上げた。

「我が不肖の弟が話したのか?」

「……いいえ。たまたまシャルル王子があなたとルトー神について書かれている文献を見つけたんです。隠されていた貴方の神殿も」

 【厄】による苦痛は続いていたが、平静を装おってルイス王をにらみつけた。

「あなたの本体は、私が封印しました。もしあなたがルシトリアを併合し、【神殿】と【神体】を取り戻したところで意味はありません。あなたは、神としての力を取り戻すことはできない」
 
 私の言葉にルイス王は、くつくつと喉を鳴らして笑った。

「構うものか。あれは我が望んで切り離したものだ。あのように脆弱化した神体も、神官の一人もおらぬ朽ちた神殿も、我には必要ない。我にはもう、新しい神体と立派な神殿があるからな」

 ルイス王の言う神殿が、この亜空間にある神殿のことではないことは明白だった。

「……やっぱりあなたは、ルイス王自身を新しい【神体】として選んだんですね」

『【信仰】を失い、【神体】や【神殿】を人目に触れないように隔離されたトリアスは、もはや実体化も叶わないほど脆弱化した魂魄のような存在です。あの【神殿】から神のまま出ることはできないし、仮に出ることができたとしても神としての力が振るえるはずがない』 

 以前予言者の言った言葉が、不意に脳裏に蘇る。

 脆弱化したトリアスは本来の神の力を持ったまま、隔離された【神殿】を出ることは叶わなかったのだろう。
 けれど魂魄の一部を、【神殿】の外に出すことはできた。

 そして魂魄は、新しい【神体】としてセーヌヴェットの王子だったルイス王の体を選び、その精神に寄生したのだ。


 

 
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