処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

ある騎士の渇望1

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 斬り捨てる。
 斬り捨てる。
 斬り捨てる。
 斬り捨てる。
 斬り捨てる。

「た、助けてくれ……!」

「誰だ!? ルシトリアの聖女の兄というだけで、護衛騎士の立場を得たんだろうなんて言った奴は!」

「いやだ! 俺はまだ死にたくない! 俺には大切な家族が……」

 弱音も命乞いも、聞かない。 
 その背景も事情も、どうでもいい。
 ディアナが消え去るなり現れた敵を、ただひたすらに殲滅し続ける。

 これだけ殺しても、駄目なのか。
 これだけ血を吸わせても、認めないのか。

「ーー【黎明】! 何故俺を主と認めて、ディアナの元に送ってくれないっ……!」

 世界で一番大切な存在が、目の前で奪われ、今この瞬間にも命を落としているかもしれないのに。

「っ!」

 一番立派な鎧を着ている身分の高そうな奴だけ、わざと急所を外して生かしておいた。
 喉元を片手で掴み、そのまま勢いよく壁に叩きつける。
 男が激しく咳き込んでいる隙に、その兜を無理やり剥がした。

「……こ、殺さないでくれ……」

 兜の下から現れたのは、俺と同年代か、年下にすら見える若い男の顔だった。
 単純に家柄が良いだけで、さして王宮での地位は高くないのかもしれない。
 自分の見込み違いに舌打ちしながら、涙目で震える男を睨みつける。

「ディアナを……ルシトリアの聖女をどこにやったんだ」

「そ……それは……」

「どこにやったのか言え! 言わなきゃ、このまま絞め殺すぞ!」

 見開かれた男の澄んだ青い瞳の中に、俺の姿が映っていた。
 男の首を片手で締め上げながら恫喝する姿はまさに悪鬼のようだったが、俺は躊躇うことなく手に力を込め続けた。

 悪鬼だろうが、死神だろうが何にでもなってやる。

 それがディアナを救うことにつながるなら。

「……し……知らない……」

「そうか……このまま絞め殺されたいらしいな」

「違う! 本当に知らないんだ! ルイス陛下と聖女ユーリアしか入れない、特別な場所だから!」

 ……多少は情報は引き出せそうだ。

 男の首元を掴んでいた手を離すと、男は地面に突っ伏して激しく咳き込みだした。
 男が多少落ち着くのを待ち、【黎明】の先を首元に突きつける。

「知ってることを洗いざらい話せ」

 男の顔が、泣き出す寸前の子どものように歪んだ。

「知ってることも何も……俺が知ってるのはそれだけだよお! ルイス陛下と聖女ユーリアが、定期的にさっきのルシトリアの聖女みたいにいきなり消えて、どこかに行ってるんだ! 陛下の護衛騎士であるエイドリーですらどこに行ってるか教えられてないのに、俺みたいに数合わせで昨日今日隊長に任命されたような奴が知ってるわけないだろお!」

「…………」

「た、頼むから、殺さないでくれ! 俺だって、本当はこんなことやりたくなかったんだ! でも国を出て逃げる勇気もないし、聖女ユーリアやルイス陛下を批判した奴らはみんな【災厄の魔女の呪い】で死んじゃったし、マイク隊長はいなくなっちゃうし、家族は王や聖女に逆らうなって言うし、俺は命令に従うしかなかったんだよ!」

「……マイク?」
 
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