処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

ある騎士の渇望2

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 父さんのかつての部下だったマイクという男が、セーヌヴェットを亡命し、【災厄の魔女の呪い】の解呪を頼みにやって来たことは、後から父さんに聞いていた。 
 かつて父さんが隊長としてまとめていた隊が、父さんの亡命後、ルイス王の圧力によってすっかり様変わりしてしまったことも。
 だとしたら、今俺を襲ってきた奴らは、かつて父さんが所属していた隊の騎士だということになる。
 だからといって殲滅したことに対して微塵も後悔はわかないが、わざわざその隊を指名して俺を襲わせるルイス王の趣味の悪さに、思わず舌打ちが漏れる。

「……何が目的でルイス王とユーリアはディアナをさらった? 二人の居場所の心当たりは?」

「だから俺は何も知らないんだよお! ただ聖女が消えるのを待って、護衛騎士を襲うようにルイス陛下から直々に命令されただけで!」

 ……思った以上に使えない。
 何の有益な情報も持っていなかった。

 【黎明】を持つ手に自然と力が入る。
 男は子どものように鼻水を垂らして泣きながら、俺に悲痛な眼差しを向けた。

「俺はもう、あんたに何もしないよ! き、騎士もやめる! 騎士をやめて家族と一緒にこの国を出るから……だからどうか殺さないでくれ! こ、婚約者がいるんだ! 来年には結婚するつもりだった!」

 男を生かすメリットはなく、逆にデメリットは大きい。
 隙を見て襲ってくるかもしれないし、いったん逃げたふりをして、新たな仲間を連れて来る可能性もある。
 向こうだって殺すつもりで俺に剣を向けたのだから、返り討ちにあって殺されたとしても自業自得だろう。
 婚約者云々の話は同情するが、襲いかかって来た敵一人一人の事情を慮っていたらきりがない。そもそもその話自体が、同情を誘う為の嘘かもしれない。
 
 泣きじゃくる男を、まっすぐに見返す。
 時間がない。さっさと決着をつけよう。

 もしかしたら、この男を斬ることで、【黎明】が俺を主として認めてくれるかもしれない。
 主に深い忠誠を誓い、主の為なら情に流されたりせず躊躇いなく剣を振るってこそ騎士だ。それを行動で示すことが、【黎明】に主として認められる為に必要なのかもしれない。

 そうだ。これはきっと【黎明】に認められる為の試験なんだ。

 間違ってはいけない。騎士として正しい行動をしなければ。

 俺は【黎明】の先を男の首元から離すとーーそのまま【黎明】を鞘に収めた。

「……見逃してやるから、さっさと行け。俺の気が変わらないうちに」
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