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連載2
ある騎士の渇望3
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俺の言葉に、男は驚いたように目を見開いた。
自然と、口から舌打ちが漏れる。
「……早く行け。斬り殺されたいのか」
「ひ、ひゃい!」
回らない舌で返事をして、ほうほうの体で逃げて行った男の背中を黙って見送る。
寛大な慈悲の心を示しても、【黎明】は俺を主として認めない。
だが、俺が男を斬り殺したところで、結果は同じだっただろう。
なぜ、【黎明】が俺を認めないのか。ーー本当は、俺はその理由を知っている。
「俺があの時……エイドリーと剣を交わしたあの時間。ディアナを守ること以上に、復讐に囚われていたからだ……」
【黎明】は、主に忠実に仕える騎士の為に作られた剣。
何より各が主を優先できる人間じゃなければ、けして自らの使い手として認めない。
父さんは、どこまでも主であるアシュリナに忠実で、自らの命を盾にしてアシュリナを逃がそうとした。
だからこそ、父さんは【黎明】に認められた。
それに対して、俺はどうだ?
俺はエイドリーと対峙したあの時……ディアナの守護よりも自分の復讐心を優先しなかったか?
もし、あの時ディアナが俺に手を貸さなかったら。
エイドリーが、たまたまチェーンが切れたペンダントに特別な執着を抱いてなければ。
今頃俺はエイドリーに殺されて、ディアナを救い出す為に足掻くことすらできなかったというのに。
「……くそっ……」
あの時、俺が最優先すべきだったのは、ディアナの安全を確保することだった。
その為には、エイドリーを倒すことよりも、ディアナの逃げ道を探すことを、第一に動かなければならなかったのに。
俺は間違えた。
俺は感情に流された。
俺は復讐に囚われたまま、抜け出せなかった。
俺はディアナの騎士として……いや、兄として失格だ。
「でも……それでも俺は、ディアナを守りたいんだ……頼む。守らせてくれっ……俺は、俺はディアナを失いたくないっ……!」
【黎明】を握りしめ、震える声で情けなく懇願する。
騎士としても兄としても失格な俺だけど、だからといってディアナを諦められるはずがない。
俺のディアナ。
世界で一番大切な、俺の妹。
誰よりも守りたい、特別な女の子。
ーーもう二度と、失いたくない。
「……もう二度と? 一度だって、死んでもごめんだ」
不意に脳裏に浮かぶ、知らない記憶。
腕の中で冷たくなっていくディアナとよく似た女の子と、それをかき抱いて吠えるように泣く俺と似た男。
こんな記憶は知らないし、もしこれが未来予知だとしても、こんな未来は必ず打ち壊してみせる。
「だから【黎明】……どうか俺をディアナのもとに連れて行ってくれ……!」
自然と、口から舌打ちが漏れる。
「……早く行け。斬り殺されたいのか」
「ひ、ひゃい!」
回らない舌で返事をして、ほうほうの体で逃げて行った男の背中を黙って見送る。
寛大な慈悲の心を示しても、【黎明】は俺を主として認めない。
だが、俺が男を斬り殺したところで、結果は同じだっただろう。
なぜ、【黎明】が俺を認めないのか。ーー本当は、俺はその理由を知っている。
「俺があの時……エイドリーと剣を交わしたあの時間。ディアナを守ること以上に、復讐に囚われていたからだ……」
【黎明】は、主に忠実に仕える騎士の為に作られた剣。
何より各が主を優先できる人間じゃなければ、けして自らの使い手として認めない。
父さんは、どこまでも主であるアシュリナに忠実で、自らの命を盾にしてアシュリナを逃がそうとした。
だからこそ、父さんは【黎明】に認められた。
それに対して、俺はどうだ?
俺はエイドリーと対峙したあの時……ディアナの守護よりも自分の復讐心を優先しなかったか?
もし、あの時ディアナが俺に手を貸さなかったら。
エイドリーが、たまたまチェーンが切れたペンダントに特別な執着を抱いてなければ。
今頃俺はエイドリーに殺されて、ディアナを救い出す為に足掻くことすらできなかったというのに。
「……くそっ……」
あの時、俺が最優先すべきだったのは、ディアナの安全を確保することだった。
その為には、エイドリーを倒すことよりも、ディアナの逃げ道を探すことを、第一に動かなければならなかったのに。
俺は間違えた。
俺は感情に流された。
俺は復讐に囚われたまま、抜け出せなかった。
俺はディアナの騎士として……いや、兄として失格だ。
「でも……それでも俺は、ディアナを守りたいんだ……頼む。守らせてくれっ……俺は、俺はディアナを失いたくないっ……!」
【黎明】を握りしめ、震える声で情けなく懇願する。
騎士としても兄としても失格な俺だけど、だからといってディアナを諦められるはずがない。
俺のディアナ。
世界で一番大切な、俺の妹。
誰よりも守りたい、特別な女の子。
ーーもう二度と、失いたくない。
「……もう二度と? 一度だって、死んでもごめんだ」
不意に脳裏に浮かぶ、知らない記憶。
腕の中で冷たくなっていくディアナとよく似た女の子と、それをかき抱いて吠えるように泣く俺と似た男。
こんな記憶は知らないし、もしこれが未来予知だとしても、こんな未来は必ず打ち壊してみせる。
「だから【黎明】……どうか俺をディアナのもとに連れて行ってくれ……!」
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