快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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顔を変えた過去

ターゲット変更

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しばらくの間、ナツは周囲をくまなくチェックしながら清掃をしていたが、これといった動きはなく、数日が過ぎた。

達也は沢渡をチェックしろと言ったが、いつも送迎車に乗って帰宅するので、中々尻尾を出さずにいた。

(もしかしたら、あの人の単なる思い込みでは?)

ナツに疑問が生じた。

達也は自分が消されると言った。
だが、社内では全くと言っていいほど動きはなく、沢渡も何事もなく、業務をこなしていた。

「もしもし…全く動きが無いけど、ホントにあの人が要注意人物なの?」

【…全く動きは無しか。いや、そんな事はないはずだ。
ナツ、あの男の車の中に、盗聴器を仕掛ける事は出来るか?】

「無理よ!どうやって、車の中に入っていくのよ…」

【んー、そうか難しいよな。いや、待てよ。ナツ、沢渡はいつも、何時頃に退社するんだ?】

「えーっと…確か、五時半から六時頃には帰るみたいだけど…」

【そうか。何か他に方法はないかな…】

「ねぇ…もしかしたら、あなたの思い込みなんじゃないの?とてもあなたを消すなんて、いう風には見えないんだけど」

【それは表向きの顔だ。裏ではヤクザと繋がってる。ヤクザ…?そうか、思い付いたぞ!】

「…何を?」

【ナツ、場所を教えるから、そこにも盗聴器を仕掛けてもらえないだろうか?】

「まさか、ヤクザの事務所?そんな事したら、私が殺されるわよ!」

【いや、ヤクザじゃない!弁護士の事務所だ…】

「弁護士?」

【そうだ!ヤクザ相手に、法外な金額をふっかけるブラックな弁護士だ】

「どうやって?」

【そうだな…表向きは弁護士の仕事だから、何か法律に関する事、離婚だとか、借金による債務整理とか、自己破産について聞いてみるってのはどうだろう?】

「…何か私、もうスパイしてる意味無いんじゃない?あなた、被害妄想なんかじゃないの?何でわざわざ顔変えて、海外にまで行くの?」

【被害妄想なんかじゃねえんだよ!間違いなくヤツはオレを消す!必ず消すだろう、アイツは】

「でも、その弁護士とあの人がどんな関係であなたが消されるの?私には何が何だか…」

【…参ったな…他にやり方はないものか…】

「ねぇ、もう日本に帰ってきたら?あまりにも無意味な事に思えてくるんだけど…」

達也の言う通り沢渡をマークしたが、何一つおかしいところは無い。
こんな事続けて、一体何になると言うのだ?

達也に対する不信感が、沸々と湧いてきた。

【オレを信じろ、ナツ!アイツは必ず尻尾出す!
…そうか、何も沢渡じゃなくてもいいんだ。他のヤツをマークすりゃいいんだ】

「今度は誰?また空振りに終わるんじゃないの?」

【そんな事はない!沢渡に常にくっついてるヤツ、常務の中島だ!アイツは口が軽い。
ナツ、沢渡にいつもくっついてる、背の小さい中年がいるだろ?】

ナツは昼間の社内での様子を思い出していた。

あ、もしかしたら頭の薄い人かな?

「それって、頭の薄い人の事?」

【そうだ!ソイツが中島だ。アイツの机に、盗聴器を仕掛けてくれ!】

「ホントに、それで大丈夫なの!?」

ナツはスパイをする事に、限界を感じていた。

【…ナツ、オレの事信用出来ないと思うが、中島の机に盗聴器を仕掛けて、数日間何も無かったらスパイを止めても構わない。
とりあえず、中島の机に仕掛けてくれ、頼む!】

「…ホントにこれが最後よ。もしこれで何も無かったら私、スパイ止めるからね」

【もちろんだ。明日、掃除するフリしながら、ヤツの机に仕掛けてくれ】

「…分かったわ…」

ホントにそれで大丈夫なのだろうか?ナツはムダだと思っていた。


翌日、ナツは清掃をしながら、中島の座る机の下に盗聴器を仕掛けた。

(多分無理だと思うけどね…)


達也はターゲットを、沢渡から中島に変更した。

中島は達也に一番酷い仕打ちをされてきた。
達也を一番恨んでるのは中島だ。

社長風を吹かせて怒鳴り散らし、時には暴力をふるう事もあった。

特に中島の何が悪い、という事はない。
ただ単に、中島の顔を見るとムカついてくるので、八つ当たりの対象となっていた。

学校のイジメと何ら変わりはない。

だが、あの顔を見ていると、何故か無性に腹が立ち、ターゲットにしていた。

中島は沢渡の腹心でもあり、中島が達也に八つ当たりされてるのを、何度も見てきた。
その度に中島を庇っていたが、達也は暴君と化し、中島を庇う沢渡も、何度か達也の暴力に耐えてきた。

この二人が、達也を社長の座から下ろす計画を練っていた。

やりたい放題の達也を失脚させれば、会社は以前のような収益を得られる。
しかし、達也は私腹を肥やし、今や赤字の状況で傾きかけている。

沢渡はそれを見越して、別の会社を設立し、この会社は達也がいる限り、いずれは倒産するだろうと思い、徐々に新しい会社を達也に内緒で、基盤固めをしている最中だ。

達也を始末して、この会社を売却し、新たな会社をメインとして、再スタートを切るつもりだ。

だから何としてでも、達也は消さなければならない人物であり、一日でも早く始末する方法を考えていた。


そして、ナツは中島の机に盗聴器を仕掛け、いつものように清掃をしていた。

すると、達也の言う通り、尻尾を出した。

「副社長、あのバカ社長の始末、どのようにして行いますか?」

「慌てるな。とにかく、日本に帰ってきたら連絡が行くようにしてある」

「あの、弁護士にですか?」

「そうだ。あの人は影で始末する人物を雇っている」

「…恐ろしい弁護士ですね」

「中島。いくら盗聴器が無くなったとはいえ、この事を会社で話すのは控えるんだ、いいな?」

「…はい、分かっております。ただ、その日が待ち遠しくて…」

「…だな。まぁ、とにかく帰国するまで、我々は極秘に事を進めなきゃならん」


(ホントだ!あの人を殺そうとしているんだわ!)

ナツは二人のやり取りを、達也に伝えた。
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