61 / 76
第61話 思い出の地
しおりを挟む
ギルドで水木さんに不動産屋を紹介してほしいと頼んだが、手配というか、不動産屋が休みの日のため連絡に少し時間がかかるとのことだった。俺は軽く頭を下げてから、ふと3人に向かって口を開いた。
「じゃあさ、俺、ちょっと行きたいところがあるからここで解散かな」
その時、浅香が俺の顔をじっと見つめてきた。
「先輩、なんか様子が変だよ。どこに行くの?」
弘美も不思議そうな表情で言葉を継ぐ。
「確かに気になる・・・先輩、私たちも行っていいですか?」
友理奈も控えめに頷いた。
「一人で行くのはあれなんで、私も一緒に行くよ。だめ?」
俺はちょっと戸惑ったが強引な3人に押し切られ、結局4人で行くことになった。ギルドの近くでタクシーを呼び、全員で乗り込む。
「お、俺、前に座るから。」
そう言って助手席に座り、住所を運転手に告げた。今の状態で後部座席に座ると誰かが前にいかざるを得ないが、それよりも横に座った者から色々聞かれそうなので自ら前に行く。
後部座席では浅香と弘美が何か話している声が聞こえたが、気にはならなかった。
タクシーに揺られること15分。車が目的地付近に差し掛かったので近くで降りてそこから歩く。
俺の視界に入ってきた家並みがどこかおかしいことに気づいた。
「ん…?なんだこれ…?」
俺は眉をひそめ、周囲を見渡した。かつての記憶と照らし合わせてみるが、どうも隣家の配置が微妙にずれている気がする。いや、隣家の隣にあるはずの塀が見当たらない。今の住人が壊したのかな?
「どうしたの?」
友理奈が心配そうに声をかけてきたが、俺は首を振り、先を急いだ。そして、ついに目の前にその場所が現れる。
そこで足を止めた俺は、言葉を失った。
かつて家があったはずの場所。・・そこには規制線が張られ、警察官が数人立っていた。俺の家だった場所は、ただの更地になり果てていたのだ。
「これ…なんだよ…?」
声にならない声が漏れ、膝が崩れそうになる。理解不能だ。まあ、更地になることはさもあらんだけど、何故規制線が張られている?殺人事件とか発生してたら立ち直れないよ・・
友理奈が慌てて俺の横に駆け寄り、肩を支えてくれた。
「銀治、大丈夫?ここが銀治の家があった場所なんだよね?」
俺は無言で頷く。それを見た浅香が規制線の向こうをじっと見つめた。
「ただの更地…じゃないよね。これって何かあったんじゃない?」
弘美も険しい顔で規制線の内側を凝視していた。
「普通の事故じゃなさそう。どうしてこんなことに…?」
俺は唇を噛みしめ、もう一度その場所を見つめた。そして、その瞬間、全身に嫌な予感が走る。
「これ…この感じダンジョンだよな?入り口はどこにある?」
俺の声に3人が驚いたように目を丸くする。その時、規制線近くにいた警察官がこちらに気づき、近寄ってきた。
「君たち、ここは立ち入り禁止区域だ。何か用か?」
俺は警察官に一歩近づき、できるだけ冷静を装って尋ねた。
「すみません、ここって昔僕が住んでいた家があった場所なんですけど…。この感じって…ダンジョンですよね?何があったんですか?」
警察官はきょとんとした顔で俺を見返す。
「ダンジョン?いや、今朝からここで異変が起きているとは聞いているが…詳しいことは警視庁の専門チームが来るまで分からない。本官はそれまで誰も入らせないようにと聞いている」
俺は携帯を取り出し、すぐに水木さんに連絡を入れた。
「水木さん、た、大変です。市内に新しいダンジョンが現れたみたいです。場所は…」
言いながら俺は、目の前の光景にぎりっと拳を握りしめた。かつての家族との思い出の場所が、今、新たなダンジョンの入り口として目を覚まそうとしていた。
「じゃあさ、俺、ちょっと行きたいところがあるからここで解散かな」
その時、浅香が俺の顔をじっと見つめてきた。
「先輩、なんか様子が変だよ。どこに行くの?」
弘美も不思議そうな表情で言葉を継ぐ。
「確かに気になる・・・先輩、私たちも行っていいですか?」
友理奈も控えめに頷いた。
「一人で行くのはあれなんで、私も一緒に行くよ。だめ?」
俺はちょっと戸惑ったが強引な3人に押し切られ、結局4人で行くことになった。ギルドの近くでタクシーを呼び、全員で乗り込む。
「お、俺、前に座るから。」
そう言って助手席に座り、住所を運転手に告げた。今の状態で後部座席に座ると誰かが前にいかざるを得ないが、それよりも横に座った者から色々聞かれそうなので自ら前に行く。
後部座席では浅香と弘美が何か話している声が聞こえたが、気にはならなかった。
タクシーに揺られること15分。車が目的地付近に差し掛かったので近くで降りてそこから歩く。
俺の視界に入ってきた家並みがどこかおかしいことに気づいた。
「ん…?なんだこれ…?」
俺は眉をひそめ、周囲を見渡した。かつての記憶と照らし合わせてみるが、どうも隣家の配置が微妙にずれている気がする。いや、隣家の隣にあるはずの塀が見当たらない。今の住人が壊したのかな?
「どうしたの?」
友理奈が心配そうに声をかけてきたが、俺は首を振り、先を急いだ。そして、ついに目の前にその場所が現れる。
そこで足を止めた俺は、言葉を失った。
かつて家があったはずの場所。・・そこには規制線が張られ、警察官が数人立っていた。俺の家だった場所は、ただの更地になり果てていたのだ。
「これ…なんだよ…?」
声にならない声が漏れ、膝が崩れそうになる。理解不能だ。まあ、更地になることはさもあらんだけど、何故規制線が張られている?殺人事件とか発生してたら立ち直れないよ・・
友理奈が慌てて俺の横に駆け寄り、肩を支えてくれた。
「銀治、大丈夫?ここが銀治の家があった場所なんだよね?」
俺は無言で頷く。それを見た浅香が規制線の向こうをじっと見つめた。
「ただの更地…じゃないよね。これって何かあったんじゃない?」
弘美も険しい顔で規制線の内側を凝視していた。
「普通の事故じゃなさそう。どうしてこんなことに…?」
俺は唇を噛みしめ、もう一度その場所を見つめた。そして、その瞬間、全身に嫌な予感が走る。
「これ…この感じダンジョンだよな?入り口はどこにある?」
俺の声に3人が驚いたように目を丸くする。その時、規制線近くにいた警察官がこちらに気づき、近寄ってきた。
「君たち、ここは立ち入り禁止区域だ。何か用か?」
俺は警察官に一歩近づき、できるだけ冷静を装って尋ねた。
「すみません、ここって昔僕が住んでいた家があった場所なんですけど…。この感じって…ダンジョンですよね?何があったんですか?」
警察官はきょとんとした顔で俺を見返す。
「ダンジョン?いや、今朝からここで異変が起きているとは聞いているが…詳しいことは警視庁の専門チームが来るまで分からない。本官はそれまで誰も入らせないようにと聞いている」
俺は携帯を取り出し、すぐに水木さんに連絡を入れた。
「水木さん、た、大変です。市内に新しいダンジョンが現れたみたいです。場所は…」
言いながら俺は、目の前の光景にぎりっと拳を握りしめた。かつての家族との思い出の場所が、今、新たなダンジョンの入り口として目を覚まそうとしていた。
43
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。
人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。
それからおよそ20年。
ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。
ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。
そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。
ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。
次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。
そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。
ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。
採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。
しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。
そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。
そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。
しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。
そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。
本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。
そうして始まった少女による蹂躙劇。
明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。
こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような……
※カクヨムにて先行公開しています。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる