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本編
7:公爵家の使用人と前妻(2)
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前妻エミリアは傾国と謳われるほどの美貌を持ちながらも、体が弱く長くは生きられない薄幸のご令嬢として、社交では有名だった。
だがアルフレッドの認識とは異なり、公爵家の使用人にとってあまり印象に残っていない女主人だ。
何故なら、主人であるアルフレッドとの婚姻期間は僅か2年と短く、病弱なため女主人として屋敷を取り纏めるようなこともなかった。
その上、公爵邸にきてからも基本的に自室に籠り、自身の世話を実家の伯爵家から連れてきた2人の侍女以外にはさせず、それ以外の者が自分に近づくことも嫌がるような潔癖。
故に公爵邸の使用人の中には彼女の遺体が棺桶に入れられるまで、その姿を見たことがないものもいたらしい。
あまり関わりのなかった奥方の死にどう反応して良いかわからず、結果取り敢えず悲しむ素振りを見せていただけの使用人も少なくないという。
厨房で、晩餐の皿洗いをしながら、ややふくよかな体型のお母さん系メイドことリサは深くため息をついた。
事情を知らない新人メイドのシノアは、同じく皿を洗いながら「どうしたのか」と首を傾げる。
「旦那様はまだエミリア様を思っていらっしゃるから、それによってシャロン様が傷つかないかと心配なのよ」
「何故シャロン様が傷つくのですか?」
「あれ?烏公爵の噂を聞いたことはない?」
「旦那様のお噂は知っていましたが…。旦那様はシャロン様がお好きだからご結婚されたのではないのですか?」
烏公爵の噂は市政でも割と有名な話だ。
だが後妻を取ると聞いて、最近雇われた新人のシノアは『とうとう烏公爵の喪が明ける』と近所の人が噂しているのを聞いたので、てっきり新たな恋をしたのだと思っていた。
「それがどうやら違うらしいのよ。なんでもシャロン様は後継を産むためだけに、旦那様に嫁いで来られたとか」
「なんと!?そんなことがあるのですか!?」
「若いあなたにはまだわかないかしら。お貴族様はそういう理由でもご結婚なさるのよ」
「そんな…子どもを産む道具みたいな扱い…。シャロン様が可哀想です」
「ほんと、まだお若いのにね」
「せっかくあれだけ魅力的で可愛らしい容姿をお持ちの方なのに、旦那様に見向きもされないのは悲しすぎます!」
シノアはふんと鼻を鳴らす。
シャロンは確かに派手さはないものの、肌は白くきめ細やかで端正な顔立ちをしている。傾国と謳われたエミリアには劣るが見目は悪くない。
彼女の微笑みを思い出しながら、シノアは「磨けば更に光る逸材ですよ」と呟いた。
すると、その呟きを聞いたリサが何かを思いついたような悪い顔をする。
「せ、せんぱい?」
「それだわ」
「へ?」
「磨き上げれば旦那様もその気になるかも。私の目が正しければ、あの露出の少ないドレスの下にはたわわな果実が隠れているはず…。シノア!」
「はい!」
「私はメイド長様のところに行って、シャロン様を磨き上げる権利をもぎ取ってくるわ!」
興奮した様子のリサは、ゴム手袋を脱ぐとシノアに後の洗い物を押しつけてメイド長を探しに行ってしまった。
「うそでしょ。まだ結構な量残ってるんですけど…リサせんぱい…」
シノアは大量に残された皿の山を見て、少し泣きたくなった。
だがアルフレッドの認識とは異なり、公爵家の使用人にとってあまり印象に残っていない女主人だ。
何故なら、主人であるアルフレッドとの婚姻期間は僅か2年と短く、病弱なため女主人として屋敷を取り纏めるようなこともなかった。
その上、公爵邸にきてからも基本的に自室に籠り、自身の世話を実家の伯爵家から連れてきた2人の侍女以外にはさせず、それ以外の者が自分に近づくことも嫌がるような潔癖。
故に公爵邸の使用人の中には彼女の遺体が棺桶に入れられるまで、その姿を見たことがないものもいたらしい。
あまり関わりのなかった奥方の死にどう反応して良いかわからず、結果取り敢えず悲しむ素振りを見せていただけの使用人も少なくないという。
厨房で、晩餐の皿洗いをしながら、ややふくよかな体型のお母さん系メイドことリサは深くため息をついた。
事情を知らない新人メイドのシノアは、同じく皿を洗いながら「どうしたのか」と首を傾げる。
「旦那様はまだエミリア様を思っていらっしゃるから、それによってシャロン様が傷つかないかと心配なのよ」
「何故シャロン様が傷つくのですか?」
「あれ?烏公爵の噂を聞いたことはない?」
「旦那様のお噂は知っていましたが…。旦那様はシャロン様がお好きだからご結婚されたのではないのですか?」
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「それがどうやら違うらしいのよ。なんでもシャロン様は後継を産むためだけに、旦那様に嫁いで来られたとか」
「なんと!?そんなことがあるのですか!?」
「若いあなたにはまだわかないかしら。お貴族様はそういう理由でもご結婚なさるのよ」
「そんな…子どもを産む道具みたいな扱い…。シャロン様が可哀想です」
「ほんと、まだお若いのにね」
「せっかくあれだけ魅力的で可愛らしい容姿をお持ちの方なのに、旦那様に見向きもされないのは悲しすぎます!」
シノアはふんと鼻を鳴らす。
シャロンは確かに派手さはないものの、肌は白くきめ細やかで端正な顔立ちをしている。傾国と謳われたエミリアには劣るが見目は悪くない。
彼女の微笑みを思い出しながら、シノアは「磨けば更に光る逸材ですよ」と呟いた。
すると、その呟きを聞いたリサが何かを思いついたような悪い顔をする。
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「へ?」
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「はい!」
「私はメイド長様のところに行って、シャロン様を磨き上げる権利をもぎ取ってくるわ!」
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シノアは大量に残された皿の山を見て、少し泣きたくなった。
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