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光苔を見つけた滝のほとりは、私のお気に入りの場所になりました。
さらさら流れる水の音は、私の心をとても落ち着かせてくれます。
「この光苔の力が、もっと多くの人のために使えないでしょうか」
岩に生える神秘的な苔を眺めて、私はぽつりとつぶやきました。
足元に座っていたルーンが、私の顔を心配そうに見上げてくれます。
「わふん?」
「ありがとうルーン、大丈夫ですよ。ただこの素敵な力を、私だけのものにするのはもったいないのです」
私はルーンのふわふわした頭を、優しく撫でてあげます。
私の【清浄】のスキルがあれば、私自身が病や怪我で困ることはありません。
でもこの森の外には、私の力を必要とする人がまだたくさんいるはずです。
聖水だけでは、救うことができない命もあるかもしれません。
光苔を薬にすることができれば、きっと多くの人を助けられるでしょう。
家に帰った私は、バーンズ子爵が届けてくれた本を広げました。
それは薬草や調合に関する、専門的な知識が書かれた本でした。
私は夢中になって、その本を何時間も読みふけります。
薬を作るためには、たくさんの知識と経験が必要なようです。
それに色々な種類の薬草や、特別な道具も揃えなければいけません。
「これは、思ったよりもずっと大変そうですね」
私が一人で唸っていると、いつの間にか部屋に小さな人影がありました。
土の精霊ノームの、一人の若者だったのです。
彼は薬草の栽培が得意だと、以前に自己紹介してくれました。
「主殿、何かお困りごとですかな」
「まあ、いつの間にいたのですか。実は、薬を作ってみたいと考えていました」
私がそう伝えると、ノームの若者は目をきらきらと輝かせました。
「薬作りですと、それは素晴らしいことですね。わしも、ぜひお手伝いをさせてください」
彼は、とても乗り気な様子で話してくれます。
「わしらノームの一族には、古くから伝わる薬草の知識がございます」
「きっと、主殿のお力になれるやもしれません」
「本当ですか、それはとても心強いお話です」
それから私たちは、夜が更けるのも忘れて薬草の話に花を咲かせました。
ノームの知識は、本に書かれているものよりずっと実践的で興味深いです。
彼は、様々な薬草の育て方や効果的な組み合わせを知っていました。
「光苔と他の薬草を合わせれば、きっとすごい薬ができますぞ」
「そのためには、まず薬草を育てるための特別な畑が必要になります」
「普通の畑では、繊細な薬草はうまく育ちませんから」
「分かりました、早速明日から準備を始めましょう」
私の中に、新しい目標がはっきりと見えました。
それはこの森の中に、世界一の薬草園を作ることです。
そして、そこで作った薬でたくさんの人を救うことでした。
翌日から、私たちの薬草園作りが始まりました。
場所は、家の裏手にある日当たりの良い丘の中腹に決めたのです。
ノームたちが、慣れた手つきで土地をどんどん耕し始めます。
普通の畑とは違って、薬草の種類ごとに土や水はけを細かく調整してくれました。
その専門的な仕事ぶりは、まさに職人技と呼ぶべきものです。
森の動物たちも、その手伝いをしてくれています。
森のあちこちから、薬草栽培に適した栄養のある土を運んでくれるのです。
私も【清浄】の力を使って、土地そのものを浄化していきました。
穢れのない清らかな土壌が、薬草作りには何よりも大切だとノームは教えてくれました。
数日後には、見事な段々畑の薬草園が完成しました。
「すごいわ、まるで天空の庭園みたいです」
その美しい光景に、私は思わず感嘆の声を上げました。
あとは、ここに植える薬草の種を手に入れるだけです。
普通の野菜の種と違い、薬草の種はとても貴重で簡単には手に入りません。
私は次の取引の時に、バーンズ子爵にお願いしてみようと考えました。
彼ならきっと、私のために王都中を探し回ってくれることでしょう。
そんなある日の、夕方のことでした。
私が新しい家の暖炉の前で、読書を楽しんでいました。
突然、窓をこんこんと、誰かが優しく叩く音が聞こえます。
「あら、誰でしょう」
私が不思議に思って窓を開けると、そこには一羽の大きなフクロウが枝にいました。
そのフクロウは、片眼鏡をかけた博士のようなとても賢そうな顔をしています。
そして驚いたことに、そのフクロウが流暢な人間の言葉を話したのです。
『やあごめんください、こちらが森の主殿のお住まいで間違いないですかな』
その声は、落ち着いた老紳士のような深みのある声でした。
「ええ、そうですけれど。あなたは、どちら様でしょうか」
私は、驚きを隠せないままそう尋ねます。
『わしは、ホーウェルと申します。見ての通り、ただの年老いたフクロウです』
ホーウェルと名乗ったフクロウは、優雅に片翼を上げてお辞儀をしてみせました。
『この森が、素晴らしい聖域になったという噂を聞きましてな。ぜひ、この目で見てみたいと思い遠方より飛んでまいりました』
彼は、とても丁寧な言葉遣いをします。
その瞳には、深い知性の光が宿っていました。
ただのフクロウでないことは、すぐに分かります。
「まあ、ようこそおいでくださいました。どうぞ、中でお茶でもいかがでしょう」
私は、この賢そうな訪問者を、心から歓迎しました。
『おお、それはありがたいです。では、お言葉に甘えさせていただこうかの』
ホーウェルさんは、器用に枝から飛び降りて、開いた窓から家の中に入ってきます。
そしてテーブルの上の止まり木に、ちょこんと止まりました。
私は、ハーブティーを淹れて彼に差し出します。
彼は、小さなカップを、器用に翼で持ってそれを飲み始めました。
その仕草は、まるで人間の貴族のように洗練されています。
「ホーウェルさんは、ずっと旅をしていらっしゃるのですか」
『うむ、わしは、知識を求める旅をしております。世界のあらゆる不思議や、秘密を知ることがわしの生きがいなのですよ』
彼は、今まで旅してきた様々な国の話を聞かせてくれました。
砂漠の国で見た、巨大なピラミッドの話です。
海の底に沈んだ、古代都市の話も聞きました。
その話は、どれも私の知らないことばかりで、とても興味深かったです。
私は、すっかり彼の話に引き込まれてしまいました。
ホーウェルさんも、この森の成り立ちや精霊たちのことを話すと、とても興味深そうに耳を傾けてくれます。
『ふむ、なるほどのう。主殿の【清浄】の力が、この奇跡の源であったということですな』
彼は、何かを深く納得したように、何度も頷いていました。
「ホーウェルさんは、本当に物知りなのですね」
『なに、長いこと生きておりますからな。知識だけが、わしの取り柄です』
私は、彼にあることをお願いしてみることにしました。
「実は今、薬草園を作っています。ホーウェルさんなら、珍しい薬草の種のありかをご存知ではないでしょうか」
私の言葉に、ホーウェルさんは片眼鏡の奥の目を、きらりと光らせます。
『薬草、ですと。ほう、それはまた、興味深いことを始められましたな』
『よろしい、わしの知っている限りの知識で、主殿のお力になりましょう』
彼は、快く私の願いを聞き入れてくれました。
そして彼の口から語られたのは、私の想像をはるかに超える驚くべき情報でした。
『例えば、月の光を浴びて輝くという月光草の種は、南の霊峰の山頂にしか咲かぬと言われております』
『あらゆる毒を中和する太陽の雫という薬草は、火山の火口近くに自生しているとか』
彼は、まるで物語を語るように、伝説級の薬草のありかを次々と教えてくれます。
その場所は、どれも人間が簡単には近づけない、険しい場所ばかりでした。
「まあ、そんなにすごい薬草が、本当に存在するのですね」
『存在しますとも。そして、主殿には、それらを手に入れる仲間がいるではありませんか』
ホーウェルさんは、そう言って窓の外にいるグリフォンたちを、ちらりと見ました。
確かに、グレンとフィリアの飛行能力があれば、どんな険しい場所へも行けるでしょう。
『わしが、詳しい場所を記した地図を描いてしんぜましょう』
ホーウェルさんは、そう言うと懐から羽ペンとインクを取り出しました。
そしてテーブルの上の羊皮紙に、すらすらと正確な地図を描き始めたのです。
その知識と記憶力は、まさに賢者と呼ぶにふさわしいものでした。
私は、心強い味方がまた一人増えたことを、とても嬉しく思います。
ホーウェルさんは、しばらくこの森に滞在してくれることになりました。
彼の知識は、これからの私の活動に、計り知れないほどの助けとなるに違いありません。
私の楽園は、日に日にその豊かさを増していきます。
さらさら流れる水の音は、私の心をとても落ち着かせてくれます。
「この光苔の力が、もっと多くの人のために使えないでしょうか」
岩に生える神秘的な苔を眺めて、私はぽつりとつぶやきました。
足元に座っていたルーンが、私の顔を心配そうに見上げてくれます。
「わふん?」
「ありがとうルーン、大丈夫ですよ。ただこの素敵な力を、私だけのものにするのはもったいないのです」
私はルーンのふわふわした頭を、優しく撫でてあげます。
私の【清浄】のスキルがあれば、私自身が病や怪我で困ることはありません。
でもこの森の外には、私の力を必要とする人がまだたくさんいるはずです。
聖水だけでは、救うことができない命もあるかもしれません。
光苔を薬にすることができれば、きっと多くの人を助けられるでしょう。
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それは薬草や調合に関する、専門的な知識が書かれた本でした。
私は夢中になって、その本を何時間も読みふけります。
薬を作るためには、たくさんの知識と経験が必要なようです。
それに色々な種類の薬草や、特別な道具も揃えなければいけません。
「これは、思ったよりもずっと大変そうですね」
私が一人で唸っていると、いつの間にか部屋に小さな人影がありました。
土の精霊ノームの、一人の若者だったのです。
彼は薬草の栽培が得意だと、以前に自己紹介してくれました。
「主殿、何かお困りごとですかな」
「まあ、いつの間にいたのですか。実は、薬を作ってみたいと考えていました」
私がそう伝えると、ノームの若者は目をきらきらと輝かせました。
「薬作りですと、それは素晴らしいことですね。わしも、ぜひお手伝いをさせてください」
彼は、とても乗り気な様子で話してくれます。
「わしらノームの一族には、古くから伝わる薬草の知識がございます」
「きっと、主殿のお力になれるやもしれません」
「本当ですか、それはとても心強いお話です」
それから私たちは、夜が更けるのも忘れて薬草の話に花を咲かせました。
ノームの知識は、本に書かれているものよりずっと実践的で興味深いです。
彼は、様々な薬草の育て方や効果的な組み合わせを知っていました。
「光苔と他の薬草を合わせれば、きっとすごい薬ができますぞ」
「そのためには、まず薬草を育てるための特別な畑が必要になります」
「普通の畑では、繊細な薬草はうまく育ちませんから」
「分かりました、早速明日から準備を始めましょう」
私の中に、新しい目標がはっきりと見えました。
それはこの森の中に、世界一の薬草園を作ることです。
そして、そこで作った薬でたくさんの人を救うことでした。
翌日から、私たちの薬草園作りが始まりました。
場所は、家の裏手にある日当たりの良い丘の中腹に決めたのです。
ノームたちが、慣れた手つきで土地をどんどん耕し始めます。
普通の畑とは違って、薬草の種類ごとに土や水はけを細かく調整してくれました。
その専門的な仕事ぶりは、まさに職人技と呼ぶべきものです。
森の動物たちも、その手伝いをしてくれています。
森のあちこちから、薬草栽培に適した栄養のある土を運んでくれるのです。
私も【清浄】の力を使って、土地そのものを浄化していきました。
穢れのない清らかな土壌が、薬草作りには何よりも大切だとノームは教えてくれました。
数日後には、見事な段々畑の薬草園が完成しました。
「すごいわ、まるで天空の庭園みたいです」
その美しい光景に、私は思わず感嘆の声を上げました。
あとは、ここに植える薬草の種を手に入れるだけです。
普通の野菜の種と違い、薬草の種はとても貴重で簡単には手に入りません。
私は次の取引の時に、バーンズ子爵にお願いしてみようと考えました。
彼ならきっと、私のために王都中を探し回ってくれることでしょう。
そんなある日の、夕方のことでした。
私が新しい家の暖炉の前で、読書を楽しんでいました。
突然、窓をこんこんと、誰かが優しく叩く音が聞こえます。
「あら、誰でしょう」
私が不思議に思って窓を開けると、そこには一羽の大きなフクロウが枝にいました。
そのフクロウは、片眼鏡をかけた博士のようなとても賢そうな顔をしています。
そして驚いたことに、そのフクロウが流暢な人間の言葉を話したのです。
『やあごめんください、こちらが森の主殿のお住まいで間違いないですかな』
その声は、落ち着いた老紳士のような深みのある声でした。
「ええ、そうですけれど。あなたは、どちら様でしょうか」
私は、驚きを隠せないままそう尋ねます。
『わしは、ホーウェルと申します。見ての通り、ただの年老いたフクロウです』
ホーウェルと名乗ったフクロウは、優雅に片翼を上げてお辞儀をしてみせました。
『この森が、素晴らしい聖域になったという噂を聞きましてな。ぜひ、この目で見てみたいと思い遠方より飛んでまいりました』
彼は、とても丁寧な言葉遣いをします。
その瞳には、深い知性の光が宿っていました。
ただのフクロウでないことは、すぐに分かります。
「まあ、ようこそおいでくださいました。どうぞ、中でお茶でもいかがでしょう」
私は、この賢そうな訪問者を、心から歓迎しました。
『おお、それはありがたいです。では、お言葉に甘えさせていただこうかの』
ホーウェルさんは、器用に枝から飛び降りて、開いた窓から家の中に入ってきます。
そしてテーブルの上の止まり木に、ちょこんと止まりました。
私は、ハーブティーを淹れて彼に差し出します。
彼は、小さなカップを、器用に翼で持ってそれを飲み始めました。
その仕草は、まるで人間の貴族のように洗練されています。
「ホーウェルさんは、ずっと旅をしていらっしゃるのですか」
『うむ、わしは、知識を求める旅をしております。世界のあらゆる不思議や、秘密を知ることがわしの生きがいなのですよ』
彼は、今まで旅してきた様々な国の話を聞かせてくれました。
砂漠の国で見た、巨大なピラミッドの話です。
海の底に沈んだ、古代都市の話も聞きました。
その話は、どれも私の知らないことばかりで、とても興味深かったです。
私は、すっかり彼の話に引き込まれてしまいました。
ホーウェルさんも、この森の成り立ちや精霊たちのことを話すと、とても興味深そうに耳を傾けてくれます。
『ふむ、なるほどのう。主殿の【清浄】の力が、この奇跡の源であったということですな』
彼は、何かを深く納得したように、何度も頷いていました。
「ホーウェルさんは、本当に物知りなのですね」
『なに、長いこと生きておりますからな。知識だけが、わしの取り柄です』
私は、彼にあることをお願いしてみることにしました。
「実は今、薬草園を作っています。ホーウェルさんなら、珍しい薬草の種のありかをご存知ではないでしょうか」
私の言葉に、ホーウェルさんは片眼鏡の奥の目を、きらりと光らせます。
『薬草、ですと。ほう、それはまた、興味深いことを始められましたな』
『よろしい、わしの知っている限りの知識で、主殿のお力になりましょう』
彼は、快く私の願いを聞き入れてくれました。
そして彼の口から語られたのは、私の想像をはるかに超える驚くべき情報でした。
『例えば、月の光を浴びて輝くという月光草の種は、南の霊峰の山頂にしか咲かぬと言われております』
『あらゆる毒を中和する太陽の雫という薬草は、火山の火口近くに自生しているとか』
彼は、まるで物語を語るように、伝説級の薬草のありかを次々と教えてくれます。
その場所は、どれも人間が簡単には近づけない、険しい場所ばかりでした。
「まあ、そんなにすごい薬草が、本当に存在するのですね」
『存在しますとも。そして、主殿には、それらを手に入れる仲間がいるではありませんか』
ホーウェルさんは、そう言って窓の外にいるグリフォンたちを、ちらりと見ました。
確かに、グレンとフィリアの飛行能力があれば、どんな険しい場所へも行けるでしょう。
『わしが、詳しい場所を記した地図を描いてしんぜましょう』
ホーウェルさんは、そう言うと懐から羽ペンとインクを取り出しました。
そしてテーブルの上の羊皮紙に、すらすらと正確な地図を描き始めたのです。
その知識と記憶力は、まさに賢者と呼ぶにふさわしいものでした。
私は、心強い味方がまた一人増えたことを、とても嬉しく思います。
ホーウェルさんは、しばらくこの森に滞在してくれることになりました。
彼の知識は、これからの私の活動に、計り知れないほどの助けとなるに違いありません。
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