役立たずの【清浄】スキルと追放された私、聖女の浄化が効かない『呪われた森』を清めたら、もふもふ達と精霊に囲まれる楽園になりました

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私たちの初めての商談は、見事な大成功と言える結果に終わりました。
白鹿商会のゲオルグ会頭が、私たちの薬を心から認めてくれたのです。
そして何より私たちの計画に、深く賛同してくれたことが嬉しかったです。
丘の上から彼らの馬車が、夜の闇に消えるまで見送りました。
私は森の仲間たちに、ゆっくりと向き直ってにっこりと微笑みます。
「みんな、本当にありがとう。私たちの新しい挑戦が、いよいよ始まりますわ。」
私のその言葉に、仲間たちはわっと大きな喜びの声を上げました。
ノームたちは陽気に踊りだし、動物たちも嬉しそうに鳴き声をあげています。
みんなの顔には、これからの未来に対する明るい希望が輝いていました。
私の楽園から始まる小さな善意が、今ゆっくりと世界へ広がろうとしていました。

温かい我が家に帰ると、私たちはすぐに今後の生産体制を話し合います。
白鹿商会との、本格的な取引がいよいよ始まるのです。
今までみたいに、のんびりと薬を作っているわけにはいきません。
たくさんの薬を、安定して作り続けるための仕組みが必要でした。
「ホーウェルさん、何か良い考えはありますでしょうか。」
私がそう尋ねると、賢者のフクロウは片眼鏡の奥の目を細めました。
「うむ、ここは役割分担を、はっきりと決めるのが良いでしょうな。」
「この森に住む、皆の得意なことをそれぞれ活かすのです。」
ホーウェルさんの提案は、とても納得できるものでした。
森の仲間たちは、それぞれが素晴らしい能力を持っています。
その力をうまく合わせれば、きっと世界一の工房が出来上がるはずでした。
「まず薬草の栽培と収穫は、薬草知識が豊富な彼に任せましょう。」
ホーウェルさんは、ノームの若者を翼で示しました。
彼は、照れくさそうに頭をかいています。
「わしに、任せてくだされ。必ずや、最高の薬草を育ててみせますぞ。」
ユニコーンの親子は、聖なる力で薬草園の土を豊かにしてくれます。
動物たちは、収穫した薬草を調合室まで運ぶ係になりました。
次に薬の調合ですが、これは手先が器用なノームたちが担当します。
「火加減の難しい煮詰めの工程は、我ら火の精霊が手伝おう。」
サラマンダーの長老が、頼もしくそう言ってくれました。
そして完成した薬の品質管理は、博識なホーウェルさんにお願いします。
彼の厳しい目で、一つ一つの薬を丁寧に調べてもらうのです。
少しでも基準に満たないものは、決して外には出しません。
最後に、完成した薬を容器に詰めて美しく包む作業です。
この繊細な作業は、森の女性陣が担当してくれることになりました。
ノームの奥さんたちや、水の精霊ウンディーネたちです。
彼女たちの、細やかな気配りはきっと素敵な製品を生み出すでしょう。
「そしてエリアーナ様の役目は、全ての工程に祝福を与えることですな。」
ホーウェルさんが、私を見て優しく言いました。
薬草園の土に、調合に使う聖なる水に、そして完成した薬そのものです。
私の聖なる力が加われば、私たちの薬は他にはない特別なものになります。
役割分担が決まると、森はまるで一つの大きな工房のように活気づきました。
みんな、自分の役割に誇りを持って、生き生きと働いています。
ノームたちが、調合室をさらに広くしてくれました。
作業がしやすいように、いくつもの作業台や棚が新しく作られます。
サラマンダーたちも、薬を煮詰めるための特別な竈を増やしてくれました。
薬草園では、動物たちが楽しそうに歌いながら収穫作業を進めています。
森全体が、新しい目標に向かって確かに一つになっていました。
その活気ある光景を眺めていると、私の胸も温かい気持ちでいっぱいになります。

その頃、王都に戻ったゲオルグ会頭はすぐに薬の販売準備を始めました。
彼はまず、薬の驚くべき効能を、自分の目で確かめることにします。
白鹿商会で働く者の中には、長引く咳に悩む番頭がいました。
胃の不調を訴える、若い店員もいました。
ゲオルグ会頭は、彼らにエリアーナの薬を試すように優しく勧めます。
「会頭、これは一体、どういう薬なのでしょうか。とても清らかな香りがしますな。」
「まあ良いから、飲んでみなさい。きっと、驚くことになりますよ。」
半信半疑で薬を飲んだ者たちは、次の瞬間、言葉を失いました。
数年間も医者に通っても治らなかった咳が、ぴたりと止まってしまったのです。
いつも重かった胃が、すうっと軽くなり食欲まで湧いてきました。
「こ、これは、奇跡ですな。体が、羽のように軽いです。」
「会頭、この薬はどこで手に入れたのですか。」
薬の効果を目の当たりにした者たちは、とても驚いていました。
ゲオルグ会頭は、満足そうにうなずきます。
そして、この薬が森の聖女エリアーナ様から授かったものだと、ゆっくり明かしました。
「森の聖女様の奇跡の薬」という評判は、まず商会の内部から広がり始めます。
そしてゲオルグ会頭が付き合いのある施療院で薬を試したことで、その評判は決定的になりました。
どんな治療も効かなかった病人が、この薬で次々と回復していったのです。
「信じられない、長年の痛みが消えました。」
「もう一度、歩けるようになるなんて夢のようです。」
施療院は、患者たちの喜びの声で満ち溢れました。
その噂は、口コミであっという間に王都中に広まっていきました。

ゲオルグ会頭は、薬を販売するための新しい店舗の準備を進めます。
場所は、王都の中でも人通りの多い、一番良い場所を選びました。
店の名前は、『森の恵み亭』と名付けられます。
店舗のデザインは、私の住む森の神秘的な様子を取り入れたものです。
壁には、腕利きの画家に森の美しい風景を描かせました。
店内には、いつも清らかな水のせせらぎが聞こえる仕掛けが作られます。
それは、訪れる客の心を癒やすための、ゲオルグ会頭の心遣いでした。
店の開店準備は、順調に進んでいきます。
民衆の期待は、日に日に高まっていきました。
まだ見ぬ奇跡の薬への、期待と憧れが王都の空気を満たしていきます。

森では、薬の本格的な生産が始まっていました。
毎日、たくさんの薬が作られ、美しい容器に詰められていきます。
ノームたちが、陽気な歌を歌いながら作業をしていました。
その歌声が、森の中に心地よく響き渡ります。
私は、完成した薬の箱を一つ一つ丁寧に確認していました。
どの薬も、私の聖なる力と仲間たちの愛情がたっぷり込められています。
「これなら、きっとたくさんの人を幸せにできるわ。」
私がそうつぶやくと、そばにいたルーンが「わふん」と同意してくれました。
そんな時、グリフォンのグレンがバーンズ子爵からの新しい手紙を持って帰ってきます。
手紙には、ゲオルグ会頭が正式な契約を結びに来たいと書かれていました。
そして、契約書と最初の取引で必要な物資のリストも入っています。
そのリストには、私が欲しかった珍しい本や薬草の種の名前がたくさん並んでいました。
私は、迷うことなく契約を結ぶことを決意します。
私たちの計画が、また一歩大きく前進するのです。

再び、満月の夜がやってきました。
森の入り口で、ホーウェルさんを代理人として、ゲオルグ会頭との正式な契約が結ばれます。
ゲオルグ会頭は、とても緊張した顔で用意された契約書にサインをしていました。
契約書には、私が最も大切に考えている約束がはっきりと書かれています。
それは、薬で得た利益の一部を、必ず貧しい人々のために使うという内容でした。
「エリアーナ様の、そのお心遣い。このゲオルグ、決して忘れません。」
彼は、そう言って深く頭を下げます。
契約が、無事に成立したその瞬間でした。
森の木々が、一斉にざわめき始めます。
そして、どこからともなく無数の光の粒が現れました。
それは、精霊たちが二人を祝福して放った光です。
きらきらと輝く光が、契約書の上で優しく舞っていました。
その、あまりにも神秘的で美しい光景。
ゲオルグ会頭とバーンズ子爵は、息を呑んでただ立ち尽くしています。
「おお、精霊様が、我々の契約を祝福してくださっているようですな。」
二人は、改めてこの森の神聖さと、私の力の偉大さを感じたに違いありません。
私は、丘の上からその様子をじっと見守っていました。
契約が無事に終わったことを見届けると、私は仲間たちに合図を送ります。
私たちの、初めての納品が始まるのです。
ノームたちが、薬の入った箱を次々と森の入り口まで運んできました。
その数は、大きな馬車数台分にもなります。
ゲオルグ会頭は、その量の多さにも再び驚いていました。
「これだけの薬があれば、当分の間は王都の需要に応えられますぞ。」
彼は、心からの感謝を何度も口にしながら、薬の箱を丁寧に馬車へと積み込んでいきます。
こうして、私たちの最初の取引は無事に終わりました。
ゲオルグ会頭の馬車が、王都へ向かってゆっくりと走り出します。
その荷台には、たくさんの人々の希望が詰まっているのです。
私は遠ざかる馬車を見送り、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
初めての納品に向けて、森は再び活気に満ち溢れます。
ノームたちが、陽気な歌を歌いながら次々と薬を瓶に詰めていました。
私は、その活気ある様子を微笑ましく眺めながら、みんなのためにおいしい夜食を作ることにしたのです。
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