パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

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「さてミナト殿、早速ですが商売の話を始めましょうか。」
ダリウスさんは葉巻を灰皿に置いて、商人の顔つきになった。
ここからが、本番だ。
俺は背筋を伸ばして、彼と向き合った。
「ええ、よろしくお願いします。ダリウスさん。」
「まずはこちらから、契約書の案を用意させていただきました。」
エリアーナさんが、羊皮紙を一枚テーブルに置いた。
そこには細かい字が、ぎっしりと書かれていた。
さすがは、大商会というべき仕事の速さである。

俺は、その契約書にゆっくりと目を通し始めた。
隣からバルガスとルナが、興味深そうに覗き込んでくる。
内容は、俺が作った水産加工品の独占販売契約についてだった。
ダリウス商会が、俺の商品をすべて買い取る。
そして彼らが持つ販売の仕組みを使い、この国の隅々まで売りさばくというものだ。
示された買い取り価格は、俺が考えていたよりもずっと高い。
これだけでも、俺には大きな利益が入ってくる計算になる。
「ミナト殿、我々の示す条件はどうですかな。」
ダリウスさんは、自信に満ちた顔で俺の様子を見ている。
この条件なら、普通の商人なら大喜びで飛びつくだろう。
だが俺は、首を横に振った。
「いえ、この内容では足りません。」
俺の言葉に、ダリウスさんとエリアーナさんの顔が驚きに変わる。
「なんと、これでもまだ不満だと言うのですか。」
ダリウスさんが、信じられないというように言った。
「ええ。俺が提供できるのは、ただの燻製だけではありませんから。」
俺は、にやりと笑って見せた。
そして懐から、もう一つの小さな瓶を取り出す。
中には、琥珀色に輝く液体が入っていた。
「これは魚醤です。魚を腐らせずにうまく変化させて作る、特別な調味料ですよ。」
俺は、瓶の蓋を開けた。
濃くて良い香りが、部屋いっぱいに広がった。
ダリウスさんとエリアーナさんは、その匂いに思わず目を見開いている。
「なんと、これも魚から作られたものなのですか。」
「ええ。料理の隠し味に使えば、驚くほど味が深くなります。特に、スープや煮込み料理とはとても相性が良いですよ。」
俺は、小さなスプーンに魚醤を数滴垂らした。
そして、二人に味見を勧める。
ダリウスさんは、恐る恐るそれを口へ運んだ。
その瞬間、彼の顔が驚きでいっぱいになった。
「こ、これは。旨味がぎゅっと詰まった、こんな調味料は初めてだ。」
エリアーナさんも、ほんの少しだけ舐めてみたらしい。
彼女も先ほどの燻製を食べた時と同じように、その場で固まっている。
そしてその白い頬を、興奮で赤くしていた。
「信じられませんわ。これさえあれば、王宮の料理さえも超えることができます。」
「でしょう。俺は、この魚醤もダリウス商会に卸すつもりです。」
俺の言葉に、ダリウスさんはごくりと喉を鳴らした。
商売人としての勘が、この魚醤の持つすごい可能性を感じ取ったのだろう。
「ですが、それだけじゃありませんよ。」
俺は、さらに話を続けた。
「俺の船には、特別な生け簀があります。それを使えば、生きたままの新鮮な川魚をこの都市まで運べるんです。」
「なんと、生きた魚をですか。それは、今までにないすごいことですぞ。」
内陸にあるこの都市では、新鮮な川魚はとても値段が高い品だった。
ほとんどは、塩漬けや干物に加工されたものしか出回っていない。
もし生きた魚を安定して届けることができれば、それだけで大きな商売になるのだ。
「それに鉱山の町で手に入れた特別な金属で、新しい加工機械も作りました。それを使えば、魚のすり身を使った練り物なども大量に作れます。」
かまぼこや、ちくわのようなものである。
この世界にはない、新しい食の文化を俺は生み出せる。
俺の口から次々に出てくる新しい商売の話に、ダリウスさんとエリアーナさんは完全に驚いていた。
もはや、口をぽかんと開けて俺の話を聞いているだけだ。
「つまり俺が言いたいのは、こういうことです。」
俺は、人差し指を立てて言った。
「俺とダリウス商会は、単なる商品の売買契約を結ぶのではありません。この世界に、新しい食の文化を作る仲間になるのです。」
俺の言葉は、部屋の中によく響いた。
ダリウスさんは、しばらくの間ぼうぜんとしていた。
だがやがて、その顔に満面の笑みを浮かべた。
そして、腹の底から大きく笑い出した。
「はっはっは、いやはや参りました。ミナト殿、あなたという方は私の想像をはるかに超える大人物だ。」
彼は、涙を拭いながら言った。
「仲間、ですか。なんと、胸が躍る言葉でしょう。ええ、ええ。ぜひ、そうさせていただきたい。」
彼は、エリアーナさんに向かって力強く言った。
「エリアーナ、契約書をすぐに作り直せ。ミナト殿は、我々の最も大切なパートナーだ。待遇も、我々の商会の最高基準とするのだ。」
「は、はい。かしこまりました。」
エリアーナさんは、慌てて立ち上がると新しい羊皮紙を取りに行った。
その顔には、先ほどまでの冷たい様子はもうない。
俺に対する、尊敬の気持ちが浮かんでいた。
こうして俺たちの契約は、最初の予定よりもずっと大きなものになった。
俺は、ダリウス商会の特別なパートナーとして迎えられることになったのだ。
それはこの世界の商売の歴史が、大きく変わる第一歩だったのかもしれない。

新しい契約書の作成には、少しだけ時間がかかった。
その間、俺たちはダリウスさんと世間話をして楽しむ。
バルガスは、すっかり安心した様子でソファに深く座っていた。
そしてメイドが運んできた高級な菓子を、美味そうに食べている。
ルナは、部屋の隅にある大きな地球儀に興味を持っているようだった。
指でくるくると回しながら、この世界の広さを考えているようだ。
「それにしてもミナト殿、あなたのその知識と発想はどこから来るのですかな。」
ダリウスさんが、本当に不思議そうに尋ねてきた。
「さあ、どうでしょうね。俺はただ、美味しいものが好きなだけですよ。」
俺は、笑ってごまかした。
まさか、別の世界から来ましたなどとは言えない。
俺たちは、お互いのこれまでの旅の話などをした。
俺が、悪い役人を懲らしめた話。
ダリウスさんが、砂漠の国で珍しい香辛料を手に入れた話。
どれも、わくわくする面白い話ばかりだった。
やがてエリアーナさんが、完成した契約書を持ってきた。
そこには、俺にとても有利な条件が書かれている。
俺は、その内容に満足して名前を書いた。
「これで、我々は晴れて正式なパートナーですな。ミナト殿、今後とも末永くよろしくお願いしますぞ。」
ダリウスさんは、嬉しそうに俺の手を握った。
「こちらこそ。一緒に、世界をあっと言わせましょう。」
固い握手を交わして、俺たちの契約は無事に成立した。
「さて、と。記念すべき契約成立を祝して、今夜は宴を開きましょう。この都市で、一番美味いと評判の店を予約させました。」
ダリウスさんの素敵な計らいに、俺たちは喜んでうなずいた。
「やったあ、ごちそうだあ。」
ルナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「はっはっは、そいつは楽しみだぜ。どんな美味いものが食えるのか、今からよだれが出てくらあ。」
バルガスも、腹をさすりながら大きく笑った。
俺も、この都市で一番の料理には興味があった。
きっと、素晴らしい材料と腕で作られた絶品が味わえるだろう。
俺たちは、ダリウスさんの用意してくれた豪華な馬車に乗り込んだ。
エリアーナさんも、一緒に行くことになった。
馬車は、石畳の道を滑るように進んでいく。
窓の外には、きらびやかな都市の夜の景色が流れていった。
ガス灯の柔らかな光が、美しい街並みを照らし出している。
道を行き交う人々も、皆どこか楽しそうだ。
俺は、その光景をぼんやりと眺めていた。
大きな都市での、新しい生活が始まる。
俺は、隣に座るルナの小さな手をそっと握った。
ルナは、にこりと微笑んで俺の手を握り返してくれた。
その温かさが、俺の心に伝わってくる。
馬車は、やがて一軒の店の前で止まった。
そこは、俺が思っていたよりもずっと落ち着いた雰囲気の店だった。
派手な看板はなく、入り口に小さなランプが灯っているだけだ。
だがその様子からは、知る人ぞ知る名店だという自信が感じられた。
「さあ、着きましたぞ。ここが、今、食通の間で一番の話題になっている店です。」
ダリウスさんは、誇らしげにそう言った。
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