パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

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店の名前は、どうやら「水辺の隠れ家」というらしい。
その名の通り店は、落ち着いた路地裏にあった。
俺たちが馬車を降りると、店の入り口から上品な身なりの主人が出てくる。
そして深々と頭を下げて、俺たちを迎えてくれた。
「ダリウス様、ようこそお越しくださいました。お待ちしておりました。」
「うむ、主。今夜は、私の大事な客人を連れてきた。最高の料理と酒を、頼むぞ。」
「かしこまりました。腕によりをかけて、おもてなしさせていただきます。」
主人の丁寧な案内に従って、俺たちは店の中へと入った。
店の中は、外と同じように落ち着いた雰囲気だった。
薄暗い明かりが、磨かれた木のテーブルを優しく照らしている。
客の数は、それほど多くない。
客は皆、落ち着いて話をしながら食事を楽しんでいた。
俺たちは、一番奥にある個室へと通された。
そこは、川に面した窓のある特別な部屋のようだ。
窓の外には、都市のきらびやかな夜の景色が広がっている。
「ほう、これは素晴らしい眺めですな。」
俺は、思わず感心の声を漏らした。
「でしょう。この景色も、この店の自慢の一つなのですよ。」
ダリウスさんは、満足そうにうなずいた。
俺たちは、テーブルの席に着く。
すぐに、給仕の女性が冷たい飲み物を持ってきた。
俺とバルガスは、エールを頼んだ。
ダリウスさんとエリアーナさんは、葡萄酒だ。
ルナには、甘い果物の水が用意された。
俺たちは、それぞれのグラスを軽く掲げて乾杯した。
「我々の、輝かしい未来に。」
ダリウスさんの言葉を合図に、楽しい宴が始まった。
すぐに、最初の料理が運ばれてきた。
それは、色とりどりの野菜を使った美しい前菜の盛り合わせだった。
一つ一つが、まるで宝石のように輝いている。
「すごい、きれい。」
ルナが、嬉しそうな声を上げた。
俺も、その芸術のような盛り付けに感心する。
味も、もちろん最高だった。
野菜が本来持つ甘みと旨味が、口の中にじゅわっと広がる。
新鮮で、質の良い材料を使っているのがすぐに分かった。
「うめえ、なんだこの野菜は。まるで、果物みたいに甘いぜ。」
バルガスも、目を丸くして驚いていた。
「これは、王家の農園で特別に育てられた野菜です。市場には、めったに出回らない品ですよ。」
エリアーナさんが、静かに説明してくれた。
さすがは、高級店と言うべきだろう。
材料へのこだわりが、普通ではない。
次に運ばれてきたのは、魚や貝のスープだった。
黄金色に輝く、透き通ったスープである。
中には、大ぶりの海老や帆立がたくさん入っていた。
一口飲むと、魚介の濃い旨味が口いっぱいに広がった。
だが後味は、驚くほどさっぱりしている。
「こいつは、すごいな。今まで飲んだどのスープより、美味いかもしれん。」
バルガスが、心の底から感心したように言った。
料理好きの彼に、ここまで言わせるとはたいしたものだ。
「ミナト様、いかがですかな。この店の料理は。」
ダリウスさんが、俺の感想を尋ねてきた。
「ええ、素晴らしいの一言です。ですが。」
俺は、少しだけいたずらっぽく笑って見せた。
「このスープへ俺の魚醤を入れれば、もっと美味しくなるでしょうね。」
俺の言葉に、ダリウスさんは目を輝かせた。
「ほう、それはぜひ試してみたいものですな。主、すまないが少しだけ小皿を借りられるかな。」
ダリウスさんの頼みに、店の主人は喜んで応じてくれた。
俺は、懐から魚醤の小瓶を取り出す。
そして自分のスープに、ほんの数滴だけ垂らしてみた。
途端に、スープの香りががらりと変わる。
魚介の香りに、深い発酵の香りが加わったのだ。
より複雑で、食欲をそそる匂いになった。
俺は、そのスープを一口飲む。
「……うん、やはりな。」
俺の思った通り、味は格段に良くなっていた。
魚醤の旨味が、スープ全体の味を一つにまとめている。
そして後味に、深い余韻を残した。
俺は、その小皿をダリウスさんたちに回す。
三人も、恐る恐るそのスープを味わった。
そして、全員が言葉を失ってしまった。
「こ、これは……。」
ダリウスさんは、驚きのあまり言葉が続かないようだった。
エリアーナさんも、信じられないという顔で自分の舌を確かめている。
「ば、化け物か。ただの調味料で、ここまで味が変わるなんてよ。」
バルガスが、あきれたように言った。
俺は、満足してうなずく。
「これが、俺の商品の力ですよ。」
この小さな実演は、何よりの宣伝になっただろう。
ダリウスさんたちの、俺の商品に対する信頼はさらに高まったはずだ。
その後も、次々と絶品の料理が運ばれてきた。
柔らかく煮込まれた、子羊の肉。
香ばしく焼き上げられた、川魚の料理もあった。
どれも、最高の材料と最高の腕で作られたものばかりだ。
俺たちは、夢中になって料理を味わった。
美味しい料理は、自然と会話を楽しくさせる。
俺たちは、商売の話だけでなく色々なことを話した。
ダリウスさんが、若い頃に経験した失敗の話。
エリアーナさんが甘いものに目がないという、意外な一面も知ることができた。
バルガスは、騎士団時代の自慢話を語って聞かせた。
ルナは、旅の途中で見た美しい景色について話す。
俺も、前の世界のことを少しだけ話した。
もちろん、異世界から来たとは言わなかったが。
故郷には海という、大きな水の塊があったこと。
そこには、見たこともないような不思議な生き物がたくさんいたこと。
俺の話に、皆は興味を持って耳を傾けてくれた。
「ほう、海ですか。私も、一度は見てみたいものですな。」
ダリウスさんが、遠い目をして言った。
この世界では、海は魔物が多く住む危険な場所とされている。
船で、自由に旅するなど夢のような話なのだ。
いつか俺の力で安全な船を作り、皆を海に連れて行ってあげたい。
俺は、そんなことを思った。
宴は、夜遅くまで続いた。
俺たちは、美味しい料理と酒を心ゆくまで楽しんだ。
そして、お互いのことをより深く知ることができた。
仕事の仲間としてだけでなく、友人としての絆が生まれたように思う。
宴がお開きになった後、ダリウスさんが俺たちに一つの提案をしてきた。
「ミナト殿、もしよろしければなのですが。この都市にいる間、私の別宅をお使いになりませんか。」
「別宅、ですか。」
「ええ。船での生活も、気楽で良いでしょうが何かと不便なこともあるでしょう。私の別宅は、この店のすぐ近くにあります。落ち着いていて、過ごしやすい家ですよ。」
願ってもない、申し出だった。
確かに、これだけ大きな都市だ。
船を停めているだけでも、色々と危ないことがあるかもしれない。
安全な場所があるに越したことはないだろう。
「ですが、よろしいのですか。そこまで、ご迷惑をおかけするわけには。」
俺が遠慮すると、ダリウスさんは大きく笑った。
「はっはっは、迷惑だなんてとんでもない。あなたは、私の大事なパートナーなのですから。遠慮なさらず、使ってください。」
その言葉に、俺は甘えることにした。
「分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます。」
こうして俺たちは、この都市にいる間の仮の住まいを手に入れることになった。
ダリウスさんの案内で、俺たちはその別宅へと向かう。
そこは、レストランから歩いて数分の場所にあった。
石造りの、二階建ての立派な家だった。
周りは高い塀で囲まれており、入り口には頑丈な鉄の門がある。
「ここです。さあ、中へどうぞ。」
ダリウスさんが、鍵で門を開けてくれた。
俺たちは、少しだけどきどきしながら敷地の中へと足を踏み入れた。
門から玄関までの短い道には、手入れの行き届いた美しい庭が広がっていた。
色とりどりの花が、夜の闇の中でひっそりと咲いている。
そして、玄関の扉を開けた瞬間。
俺たちは、その光景に息を呑んだ。
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