転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

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第24話 奇跡の光と、誓いのキス

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投げ込まれた、小さな火種。
それが、空気中に充満した、小麦粉の微粒子に、触れた、瞬間。

――ドゴォォォォォォォンッ!!!!

世界が、音と、光に、包まれた。
凄まじい轟音。
そして、巨大な火球が、麒麟宮《きりんきゅう》の中庭全体を、一瞬にして飲み込んだ。

前世の化学の知識、『粉塵爆発』。
その威力は、私の想像を、遥かに、遥かに、超えていた。

「ぐわあああああっ!」
「な、なんだ、これは!?」

予期せぬ大爆発に巻き込まれた謀反軍は、大混乱に陥り、ばたばたと、その場に倒れていく。
大将軍も、その凄まじい爆風に吹き飛ばされ、手に持っていた、禁断の呪具『星砕《ほしくだ》きの壺』を、手から、滑り落としてしまった。

カシャァァァン!

呪具は、石畳に叩きつけられ、粉々に、砕け散る。
すると、麒麟宮を、そして、私を苦しめていた、あの黒い霧が、まるで、朝の光に溶けるように、嘘のように、さあっと、晴れていった。

「おお…!力が、戻ってくる…!」

倒れていた兵士たちが、次々と、意識を取り戻していく。
私の身体にも、失われていた、星詠みの力が、温かい川のように、再び、流れ込んできた。
形勢は、たった一瞬で、完全に、逆転したのだ。

しかし。
私が立っていた城壁もまた、その爆発の、凄まじい衝撃に、耐えきれなかった。
ガラガラと、足元が、崩れ始める。

「――きゃっ!」

私の身体が、ふわり、と、宙に投げ出される。

落ちる。
死ぬ。

(ああ、ここまで、か…暁《あかつき》さま…)

そう、思った、時だった。

「麗霞ァァァァァァッ!!」

暁さまが、この世の終わりのような、絶叫を上げた。
彼は、まだ、万全ではないはずの身体で、最後の、最後の力を振り絞って、地を、強く、蹴った。
まるで、黒い、流星のように。

そして、私の身体が、地面に叩きつけられる、寸前。
彼の、たくましい腕が、私を、世界で一番、優しい力で、しっかりと、受け止めてくれた。

***

暁さまの、腕の中。
私は、ゆっくりと、目を開けた。
目の前には、傷つき、疲れ果て、それでも、私だけを、愛おしそうに見つめている、彼の、美しい顔があった。
その瞳には、安堵の涙が、浮かんでいる。

「…無茶を、しおって。…俺の、心臓が、止まるかと思ったぞ」
「陛下こそ…ご無事で、よかった…」

私たちの、世界。
でも、その甘い時間を、邪魔する者がいた。

「ま、まだだ…! まだ、終わらんぞ…!」

爆風で、ボロボロになった大将軍が、最後の力を振り絞り、剣を手に、暁さまに、襲いかかってくる。

しかし、その、悪意に満ちた刃が、暁さまに届くことは、永遠になかった。
完全に回復した、暁さまの近衛兵たち。
駆けつけた、香蘭《こうらん》さまの家臣たち。
そして、アルフォンス王子の、屈強な護衛兵たちによって、彼は、あっけなく、取り押さえられた。

すべての、戦いは、終わったのだ。

「…麗霞《れいか》」

暁さまは、私の名前を呼ぶと、私を抱きしめたまま、その場に、くずおれそうになった。
彼の身体も、もう、限界だったんだ。

「陛下! しっかりしてください! 陛下!」

私は、彼の、冷たくなっていく身体を、必死に、抱きしめる。
「暁さま! 目を開けて! お願いだから…! あなたのいない世界なんて、私、いらないの…!」

私の、愛の叫び。
その涙が、彼の頬に、ぽたり、と、一粒、落ちた。

その、瞬間だった。

私の身体から、今までにないくらい、優しくて、温かくて、そして力強い、星のような光が、溢れ出したのだ。

砕け散った、呪具の欠片。
私の、愛する人を想う、一筋の涙。
その二つに、私の奥底で眠っていた星詠みの魂が、呼応したのかもしれない。

その、キラキラとした光は、傷ついた暁さまの身体を、そして、その場にいる、すべての兵士たちの傷を、奇跡のように、癒していく。

これが、星詠みの一族の、本当の力。
未来を視るだけじゃない。
真実の愛によって目覚める、すべてを癒し、再生させる、『愛の光』。

光に包まれながら、暁さまは、ゆっくりと、その瞼を開いた。
そして、彼は、私の頬に、優しく手を添えると。
今度こそ、その、熱い唇を、私の唇に、そっと、重ねた。

長くて、甘くて、そして、少しだけ、しょっぱい味がした、誓いのキス。
世界中の音が、消えて、彼の心臓の音と、私の心臓の音だけが、重なり合って、響いていた。

(私たちの恋が、この国を、救ったんだ…)

奇跡の光の中で、私たちは、ただ、お互いの存在を、確かめ合っていた。
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