【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)

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日曜。

午前中はお洗濯と部屋の片付けであっという間に終わって、気づけばもう、お昼が近い。

「……お腹すいたなぁ」

ベランダの洗濯物を取り込んで、ふと立ち止まる。
昨日の“天空モツ煮”が思い出に変わっていくのを感じながら、今日はまた別の楽しみを探す時間だ。

(今日は、モンス飯亭お休みだし……どこにしよう)

スマホで地図を広げて、ぱらぱらスクロール。
目に止まったのは、少し前に近所にできたという評判のごはん屋さん――

《ダンジョンカフェ・ネスト》

(あ、ここ……冒険者食堂系だけど、家庭的メニューって書いてあったやつ)

ギルド関係の人がよく通う、手作り系ランチが人気らしい。

「よし、行ってみよっ」

部屋着から外出用のゆるニットとロングスカートに着替えて、トートバッグひとつでお出かけ。

今日はがっつり食べる気満々。
だって、日曜だもん。ゆるっと好きなもの食べる日だもん。

お店はビルの二階、階段をのぼると見えてくる。

ガラス張りのドアには、かわいい手描き文字。

《本日の日替わり:竜骨スープと“ごろっと根菜”の煮込みランチ》

(……はい、絶対おいしい)

気がつくと、私はもうドアを開けてた。

「いらっしゃいませ~! おひとり様ですか?」

「はい。ランチ、まだありますか?」

「ありますよ~! カウンターでもお座敷でもどうぞ~」

「じゃあ……カウンターで」

木目のカウンターに座って、メニューを手に取ると、目に飛び込んできたのは――

●日替わりランチセット(ごはん・汁物・小鉢・漬物つき)
・メイン:竜骨スープ煮込み(本日は豚バラと根菜)
・選べるごはん:白米/十五穀米/竜粥(本日限定)
・+200Gでデザート(焼きりんごとシナモンクリーム)

「……ぜんぶ食べたい」

目にしただけで、胃袋が“がんばれます”モードに突入。

「すみません、日替わりで、竜粥つきで……あ、デザートもつけてください」

「ありがとうございます~!」

待っている間、店内の観葉植物や、冒険者たちの寄せ書きが描かれた黒板をぼーっと眺める。

〈探索帰りに食べた竜骨スープ、体力50回復しました!〉
〈これで魔力チャージ完了。今夜も行ける!〉
〈ただのごはんなのに、涙出た。ありがとう〉

ふふ……“ただの”じゃないよ。
“魔法みたいなごはん”って、あるんだから。

そんなことを考えていたら、トレイがカウンターに滑り込んできた。

「お待たせしました~! 竜粥ランチですっ!」

「わぁ……!」

目の前には、大きめの木のトレイに、湯気がふわり。

大ぶりのスープ鉢には、豚バラとごろんとしたレンコン、にんじん、ゴボウ。
そして、つやつやの竜粥。
緑の小鉢には、ほうれん草のナムルと、色鮮やかな紫キャベツのピクルス。

(この見た目、ちょっと反則……)

いただきますの合図と同時に、スプーンを竜骨スープに入れて――

「んっ……あぁっ……とろっとろ……!」

煮込まれた豚バラは、歯がいらない。
噛む前に、舌の上でほぐれる。
そのあとに根菜のホクホク感が重なって、まるでお布団にくるまれるみたいな安心感。

「レンコン……ほくっ、ってしてる……! 甘い……」

そして、竜粥。

一見するとシンプルな白がゆだけど、食べてみると――

「……っ、あ、なにこれ、やさしい……」

竜骨の出汁が米粒ひとつひとつに染みてて、飲み込むたびに、身体の中がぽかぽかしてくる。

少し塩気がきいてて、添えられた揚げエシャロットをパラっとかけると、また違う表情になる。

「うわぁ……エシャロット、香ばしさ足し算してきた……」

気づけば、無言で夢中になってスプーンを進めてた。

小鉢も、味のバランスが良くて、ピクルスがちょっとだけ口の中をリセットしてくれる。

こういうのが嬉しいんだよなぁ……って、しみじみ思う。

最後は、焼きりんご。

香ばしい焼き色のついたりんごの上に、白いクリームがふわり。

「……これは、もう勝ち確の香り……」

ぱくっ。

「っ、あっ……!」

温かい果汁がとろっと広がったあとに、シナモンの香りが追いかけてくる。

クリームと混ざると、それが一瞬、スイートポテトみたいにも感じて……

「これは……ごほうびの極み……っ!」

食後のお茶をすすりながら、私は大きく伸びをした。

胃も心も、ふんわり満たされてる。

(来週からまたがんばれるなぁ……)

ううん、違う。

もうちょっと、今日を満喫しよう。

次の行き先は……そう、あそこ。

私の晩酌のホーム――〈モンス飯亭〉はお休みだけど、
その近くにある、あの立ち飲みバーが気になってたんだった。

よし、次はそこに寄り道してみよう。

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