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〈ダンジョンカフェ・ネスト〉のランチでお腹も心も満たされた私は、あたたかい風を感じながら、裏通りへと歩を進める。
この辺りはモンス飯亭の近くで、路地裏グルメの宝庫。
昼も夜も食べ歩きにはもってこいのエリアだけど、今日は――ちょっと新しい場所を試したくて。
「えーっと……あ、ここだ」
小さな看板に、手描きの文字で書かれていた。
《立ち飲み酒場・ミスリル小路》
その名の通り、金属加工の職人通りにひっそり紛れるようにある、立ち飲みスタイルの一杯処。
でも最近は、冒険者ギルド職員やアナリストたちがこっそり通う“お忍びスポット”になってるって噂も聞いた。
「よし……ちょっとだけ、ね」
くぐるとすぐ、カランとベルの音。
カウンターだけの細長い空間に、香ばしい匂いが立ち込めてる。
「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きな位置へ」
店主さんは口数少なめだけど、目元の笑みがやわらかい。
私もぺこりとお辞儀して、端の方にすっと立つ。
「お飲み物は?」
「えっと……“赤鉄ハイ”ありますか?」
「はい。甘口と辛口、どちらにされます?」
「じゃあ……甘口で!」
赤鉄ハイは、この店の看板ドリンク。
薄く赤みを帯びた薬草入りの炭酸酒で、名前の“赤鉄”はこの通りの名物鉱石から来ているらしい。
すぐにシュワっとしたグラスが差し出されて、私はそれを両手で受け取る。
「……ふふ、これこれ……」
口に含むと、ほんのり甘い。
でも、その奥にはちょっとした苦みがいて、あとから喉の奥をぴりっと刺激してくる。
(あ~……、大人味……!)
昼に竜粥でとろけて、今度は炭酸でピシッと引き締まる感じ。
まるで、昼と夜のスイッチがこの一杯で切り替わるみたいな……そんな味。
店内は落ち着いた雰囲気で、隣の席との間に小さな木箱が立ててある。
それも、過ごしやすさのひとつ。
こういうの、ありがたいんだよね。
「おつまみは?」
「えーっと……“ホネ付きグリッシーニ”って、何ですか?」
「骨付きの小竜鶏を細長く成形して、カリッと焼いてます。パンみたいな名前ですが、がっつり肉です」
「くださいっ」
待つこと数分。
出てきたのは、予想より“がっつり”寄りだった。
骨の先までぎっしり肉がついた、スティック状の炭火焼き。
表面に黒い焼き目、香辛料のいい香り。
手で持って、かぷっ。
「っ、あっつ……でも、うん、やわらかっ……!」
パリッとした表面の下に、ジュワッと肉汁がひろがって――
その瞬間、赤鉄ハイの甘さが、肉の塩気と絶妙に溶け合う。
「ん~~~っ、これ、これぇ……!」
もう何も考えなくていい。
ひたすらに、食べて、飲んで、それだけ。
(幸せって、たぶんこういうことだなぁ……)
骨の先までしゃぶり尽くして、赤鉄ハイをくいっと流し込む。
隣のお客さんとも話さない、会話もほとんどない、だけど居心地はすごくいい。
店主さんがこっそり差し出してくれた、次の小皿は――
「サービスです。〈魔界茸のペペロンチーノ風〉、少し残ってたので」
「えっ……あっ、ありがとうございますっ!」
魔界茸は、クセがあるけど旨味が濃い茸。
にんにくと唐辛子、塩だけのシンプルな味つけが、これまたお酒にぴったり。
「……これ、ずっと食べてられるかも」
何も足さず、何も引かず。
目の前にある小さな幸せを、ひとつずつ確かめるように味わう。
(あしたもまた、がんばれそうだなぁ……)
……いや、今日はまだ、終わらせない。
そろそろ、例の“伝説素材フェア”も始まるはず。
次に行くのは――やっぱり、モンス飯亭。
あの席が空いてますように、と願いながら。
この辺りはモンス飯亭の近くで、路地裏グルメの宝庫。
昼も夜も食べ歩きにはもってこいのエリアだけど、今日は――ちょっと新しい場所を試したくて。
「えーっと……あ、ここだ」
小さな看板に、手描きの文字で書かれていた。
《立ち飲み酒場・ミスリル小路》
その名の通り、金属加工の職人通りにひっそり紛れるようにある、立ち飲みスタイルの一杯処。
でも最近は、冒険者ギルド職員やアナリストたちがこっそり通う“お忍びスポット”になってるって噂も聞いた。
「よし……ちょっとだけ、ね」
くぐるとすぐ、カランとベルの音。
カウンターだけの細長い空間に、香ばしい匂いが立ち込めてる。
「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きな位置へ」
店主さんは口数少なめだけど、目元の笑みがやわらかい。
私もぺこりとお辞儀して、端の方にすっと立つ。
「お飲み物は?」
「えっと……“赤鉄ハイ”ありますか?」
「はい。甘口と辛口、どちらにされます?」
「じゃあ……甘口で!」
赤鉄ハイは、この店の看板ドリンク。
薄く赤みを帯びた薬草入りの炭酸酒で、名前の“赤鉄”はこの通りの名物鉱石から来ているらしい。
すぐにシュワっとしたグラスが差し出されて、私はそれを両手で受け取る。
「……ふふ、これこれ……」
口に含むと、ほんのり甘い。
でも、その奥にはちょっとした苦みがいて、あとから喉の奥をぴりっと刺激してくる。
(あ~……、大人味……!)
昼に竜粥でとろけて、今度は炭酸でピシッと引き締まる感じ。
まるで、昼と夜のスイッチがこの一杯で切り替わるみたいな……そんな味。
店内は落ち着いた雰囲気で、隣の席との間に小さな木箱が立ててある。
それも、過ごしやすさのひとつ。
こういうの、ありがたいんだよね。
「おつまみは?」
「えーっと……“ホネ付きグリッシーニ”って、何ですか?」
「骨付きの小竜鶏を細長く成形して、カリッと焼いてます。パンみたいな名前ですが、がっつり肉です」
「くださいっ」
待つこと数分。
出てきたのは、予想より“がっつり”寄りだった。
骨の先までぎっしり肉がついた、スティック状の炭火焼き。
表面に黒い焼き目、香辛料のいい香り。
手で持って、かぷっ。
「っ、あっつ……でも、うん、やわらかっ……!」
パリッとした表面の下に、ジュワッと肉汁がひろがって――
その瞬間、赤鉄ハイの甘さが、肉の塩気と絶妙に溶け合う。
「ん~~~っ、これ、これぇ……!」
もう何も考えなくていい。
ひたすらに、食べて、飲んで、それだけ。
(幸せって、たぶんこういうことだなぁ……)
骨の先までしゃぶり尽くして、赤鉄ハイをくいっと流し込む。
隣のお客さんとも話さない、会話もほとんどない、だけど居心地はすごくいい。
店主さんがこっそり差し出してくれた、次の小皿は――
「サービスです。〈魔界茸のペペロンチーノ風〉、少し残ってたので」
「えっ……あっ、ありがとうございますっ!」
魔界茸は、クセがあるけど旨味が濃い茸。
にんにくと唐辛子、塩だけのシンプルな味つけが、これまたお酒にぴったり。
「……これ、ずっと食べてられるかも」
何も足さず、何も引かず。
目の前にある小さな幸せを、ひとつずつ確かめるように味わう。
(あしたもまた、がんばれそうだなぁ……)
……いや、今日はまだ、終わらせない。
そろそろ、例の“伝説素材フェア”も始まるはず。
次に行くのは――やっぱり、モンス飯亭。
あの席が空いてますように、と願いながら。
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