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15.オティーリエ王女
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オティーリエ王女の部屋は、最高級で重厚な趣の品々で調えた。
「きらきらしたものが好き」と手紙にかいていらっしゃったので、ドレッサーは銀の彫金に宝石を嵌めた物を作らせた。
カテーナ王国にいる使節団にサイズを聞いて、最新流行のドレスを十二着仕立てた。
バシュロ殿下は
「甘やかし過ぎだ」
と渋い顔をしたが。
私はその顔を見ない振りをして
「宝飾品はいかがしますか?」
と問うた。
バシュロ殿下はますます渋い顔をして
「母上に相談して決めよう」
とおっしゃった。
王妃殿下は、さて困ったという顔をしておっしゃった。
「あちらのご趣味もありますし、お持ちになるドレスに合わせなくてはなりませんからね。あちらからも持ってくるでしょうし。いくつか当たり障りのないジュエリーセットを用意しましょう」
オティーリア王女の到着の日、私は驚いた。
インジャル王国から送った教師団と護衛の他は、馬車がたった三台だったからだ。荷物は後から送られてくるのだろうか。
それにカテーナ王国からの護衛がいない。
カテーナ王国は、現在インジャル王国と反対側のフェディリア王国と国境線で揉めている。そのせいで兵力を割けないのだろうか。
銀星宮の馬車止めにオティーリア王女が乗っている馬車が止まった。
扉が開き、侍女らしい黒いお仕着せの年配の女性が二人出てきて、オティーリア王女がステップを降りるのを両側から支えた。
オティーリア王女は深紅のドレスだった。そこにルビーのネックレスとイヤリング。全部の指に様々な指輪を嵌めている。
驚きを隠して、私は礼をとった。
「ようこそ、インジャル王国へ。心から歓迎いたします」
顔を上げずに礼をとったまま歓迎の言葉を述べる。
「あなたが側妃?」
カテーナ語だ。棘がある。
「はい。側妃のベルナデットでございます。王太子妃殿下の補佐を務めることになります」
カテーナ語で答える。
「補佐って?」
「後宮運営や慈善事業の補佐でございます」
すこし沈黙がある。
オティーリエ王女がカテーナ王国から連れてきた側仕えの次女が言った。
「オティーリエ様は王太子宮の第一の女性です。後宮の運営をなさらなくてはいけないと習っていらっしゃったではないですか」
「わたくしを働かせるって本気だったのね」
「王太子妃の義務でございます」
また少し沈黙。
「あなた」
オティーリエ王女が私を呼ぶ。
「はい」
「今まであなたがやってきたのよね」
「はい。左様でございます」
「ではあなたがやって。わたくしは忙しいの」
そうはいかない。これからは王太子妃の署名が要る。
「恐れながら、王太子妃に就かれて後は王女殿下が後宮の最上位の方です。いかなる書類にも王太子妃殿下の署名が必要になるのです」
「ふうん」
おもしろくなさそうにオティーリエ王女が鼻声を出す。
「書類仕事なんて卑しいことはあなたにまかせるわ」
そういう訳にはいかないが、今は何を言っても無駄らしい空気を感じる。オティーリエ王女の側仕え達がオロオロしているのが目の端に見える。落ち着きなく手を上げ下げしている。
「それより疲れたの。部屋へ案内して」
私は脇へのき、王太子妃宮の最高統括侍女に指示を出した。最高統括侍女が
「ご案内いたします」
と言うとオティーリエ王女は
「インジャル語はわからないわ。あなた!あなたが案内しなさい」
と私に指示した。
「かしこまりました」
私はおとなしく斜め前に立って、オティーリエ王女の部屋まで案内をした。
オティーリエ王女の居室は銀星宮の二階にあり、いちばん広い。
広々とした居間、執務室、着替えの間、バスルームに衣装室、そして寝室だ。どの部屋にも控えの間がついている。
「地味ね」
オティーリエ王女の感想だ。
落ち着いているが、最高級のものばかりだ。
「わたくし、バシュロ様にきらきらしたものが好きと言ったはずなのに」
ダンっと足を踏み鳴らす。
「王太子妃殿下の居室に相応しいものを用意いたしました」
「余計なことしないで」
オティーリエ王女は怒っているようだ。
「わたくしが決めるわ。商人を呼んで頂戴」
まだ王子妃宮の予算の話もしていない。
「王女殿下におかれましては、到着したばかりでお疲れかと存じます。諸々の連絡事項もございますし、商人を呼ぶには王太子殿下の許可が必要になります」
またダンっと足を踏み鳴らす。
「めんどうね!」
正直私は、手紙の可愛らしい印象と違ったオティーリエ王女を目の当たりにして、かなり驚いていたのだ。
「恐れながら、今夜は歓迎の晩餐がございます。それまで少しお休みになってから、お支度をなさってはいかがでしょう?商人については、わたくしから王太子殿下にお伺いを立てますので」
「それもそうね。少し休むわ。バシュロ様のために着飾らなくては」
「では、わたくしは退出いたします」
オティーリエ王女は私を無視して、侍女に指示し始めたのを潮に退出した。
その足でバシュロ殿下へ報告に行く。
公務をしたがらない様子、商人を呼ぶ話を聞くと、バシュロ殿下は露骨にイヤな顔をしておっしゃった。
「確かにその様子では、後宮の運営は任せられないな。今まで通りベルがやってくれ。ベルの署名で通るようにはからおう。それから」
ちょっと考えておっしゃった。
「王太子妃宮の予算をそのまま任せられない。ベルが管理して。オティーリア王女は小遣い制にする」
「なんですって!?」
私は驚いた。
「つまり、自由に遣える予算を切り取って、後はベルに任せる」
バシュロ殿下は少し、いやかなりオティーリエ王女に厳しい。
「きらきらしたものが好き」と手紙にかいていらっしゃったので、ドレッサーは銀の彫金に宝石を嵌めた物を作らせた。
カテーナ王国にいる使節団にサイズを聞いて、最新流行のドレスを十二着仕立てた。
バシュロ殿下は
「甘やかし過ぎだ」
と渋い顔をしたが。
私はその顔を見ない振りをして
「宝飾品はいかがしますか?」
と問うた。
バシュロ殿下はますます渋い顔をして
「母上に相談して決めよう」
とおっしゃった。
王妃殿下は、さて困ったという顔をしておっしゃった。
「あちらのご趣味もありますし、お持ちになるドレスに合わせなくてはなりませんからね。あちらからも持ってくるでしょうし。いくつか当たり障りのないジュエリーセットを用意しましょう」
オティーリア王女の到着の日、私は驚いた。
インジャル王国から送った教師団と護衛の他は、馬車がたった三台だったからだ。荷物は後から送られてくるのだろうか。
それにカテーナ王国からの護衛がいない。
カテーナ王国は、現在インジャル王国と反対側のフェディリア王国と国境線で揉めている。そのせいで兵力を割けないのだろうか。
銀星宮の馬車止めにオティーリア王女が乗っている馬車が止まった。
扉が開き、侍女らしい黒いお仕着せの年配の女性が二人出てきて、オティーリア王女がステップを降りるのを両側から支えた。
オティーリア王女は深紅のドレスだった。そこにルビーのネックレスとイヤリング。全部の指に様々な指輪を嵌めている。
驚きを隠して、私は礼をとった。
「ようこそ、インジャル王国へ。心から歓迎いたします」
顔を上げずに礼をとったまま歓迎の言葉を述べる。
「あなたが側妃?」
カテーナ語だ。棘がある。
「はい。側妃のベルナデットでございます。王太子妃殿下の補佐を務めることになります」
カテーナ語で答える。
「補佐って?」
「後宮運営や慈善事業の補佐でございます」
すこし沈黙がある。
オティーリエ王女がカテーナ王国から連れてきた側仕えの次女が言った。
「オティーリエ様は王太子宮の第一の女性です。後宮の運営をなさらなくてはいけないと習っていらっしゃったではないですか」
「わたくしを働かせるって本気だったのね」
「王太子妃の義務でございます」
また少し沈黙。
「あなた」
オティーリエ王女が私を呼ぶ。
「はい」
「今まであなたがやってきたのよね」
「はい。左様でございます」
「ではあなたがやって。わたくしは忙しいの」
そうはいかない。これからは王太子妃の署名が要る。
「恐れながら、王太子妃に就かれて後は王女殿下が後宮の最上位の方です。いかなる書類にも王太子妃殿下の署名が必要になるのです」
「ふうん」
おもしろくなさそうにオティーリエ王女が鼻声を出す。
「書類仕事なんて卑しいことはあなたにまかせるわ」
そういう訳にはいかないが、今は何を言っても無駄らしい空気を感じる。オティーリエ王女の側仕え達がオロオロしているのが目の端に見える。落ち着きなく手を上げ下げしている。
「それより疲れたの。部屋へ案内して」
私は脇へのき、王太子妃宮の最高統括侍女に指示を出した。最高統括侍女が
「ご案内いたします」
と言うとオティーリエ王女は
「インジャル語はわからないわ。あなた!あなたが案内しなさい」
と私に指示した。
「かしこまりました」
私はおとなしく斜め前に立って、オティーリエ王女の部屋まで案内をした。
オティーリエ王女の居室は銀星宮の二階にあり、いちばん広い。
広々とした居間、執務室、着替えの間、バスルームに衣装室、そして寝室だ。どの部屋にも控えの間がついている。
「地味ね」
オティーリエ王女の感想だ。
落ち着いているが、最高級のものばかりだ。
「わたくし、バシュロ様にきらきらしたものが好きと言ったはずなのに」
ダンっと足を踏み鳴らす。
「王太子妃殿下の居室に相応しいものを用意いたしました」
「余計なことしないで」
オティーリエ王女は怒っているようだ。
「わたくしが決めるわ。商人を呼んで頂戴」
まだ王子妃宮の予算の話もしていない。
「王女殿下におかれましては、到着したばかりでお疲れかと存じます。諸々の連絡事項もございますし、商人を呼ぶには王太子殿下の許可が必要になります」
またダンっと足を踏み鳴らす。
「めんどうね!」
正直私は、手紙の可愛らしい印象と違ったオティーリエ王女を目の当たりにして、かなり驚いていたのだ。
「恐れながら、今夜は歓迎の晩餐がございます。それまで少しお休みになってから、お支度をなさってはいかがでしょう?商人については、わたくしから王太子殿下にお伺いを立てますので」
「それもそうね。少し休むわ。バシュロ様のために着飾らなくては」
「では、わたくしは退出いたします」
オティーリエ王女は私を無視して、侍女に指示し始めたのを潮に退出した。
その足でバシュロ殿下へ報告に行く。
公務をしたがらない様子、商人を呼ぶ話を聞くと、バシュロ殿下は露骨にイヤな顔をしておっしゃった。
「確かにその様子では、後宮の運営は任せられないな。今まで通りベルがやってくれ。ベルの署名で通るようにはからおう。それから」
ちょっと考えておっしゃった。
「王太子妃宮の予算をそのまま任せられない。ベルが管理して。オティーリア王女は小遣い制にする」
「なんですって!?」
私は驚いた。
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