僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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VSドラゴン 001

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 頭上で光る赤色。
 まるで太陽が落ちてきたと錯覚するような。
 赤々と燃える火球が、撃ち下ろされる。

「――っ」

 その灼熱の球体がドラゴンのスキル、【ブレス】であると判断するのは容易だった。
 だが、そんなことがわかったところで意味はない。
 あと数秒足らずで、あの炎は地上に到達する。
 こうして思考をしている時間すら惜しいのに、有効な手段が何も思いつかない。
 完全な不意打ちを受け、身体は動かず。
 ただ、空を見上げるしかなかった。

「みなさん、伏せて‼」

 僕を含め、この場にいる者が呆然と立ち尽くす中。
 レヴィ・コラリスだけが、動く。
 僕らの頭上一0数メートルまで近づいた火球に対し、レヴィが両手を突き出した。

「【腐った白薔薇メルヘンフラワー】‼」

 直後。
 手のひらが青白く光り出し、蒼い波動が発せられる。

「……なっ」

 波動は火球とぶつかり合い、混ざり合い、溶け合い――そして。
 煌々と照る炎を、消滅させた。

「レヴィ、今のスキルは……」
「実は昨日、レベルアップしまして……新しいスキルを覚えたんです。お二人をビックリさせようと思って、黙っていたんですけれど」

 そう言って、照れくさそうに笑うレヴィ。

「【腐った白薔薇】……変質系のスキルを腐らせる、防御スキルです」

 ドラゴンの【ブレス】は、体内のマナを変質させて炎に変えるスキル……要は、あのでかい火球はマナの塊でもあるのだ。
 レヴィが新しく習得したスキルは、そうした変質系のスキルを消滅させることができるらしい。

「……なんだよ、それ。滅茶苦茶強いじゃないか」
「これがそうでもないですよ。例えば、マナを使って物質を操る操作系のスキルや、ステータスの上下に関わるステータス系のスキル相手には使えませんし……それに何より、燃費が悪いです」

 確かに、レヴィの顔色は若干青ざめているように見える。
 あのドラゴンの攻撃すら防御できるスキルだ、マナの消費も相当激しいのだろう。
 何度も連発できる代物でないなら、ここぞという時のためにマナを温存してもらって……

「ゆっくり話してる場合じゃないわよ! くるわ!」

 ミアの声で、ハッと緊張感を取り戻す。
 彼女の視線の先には、猛スピードで接近してくる影。
 数回の瞬きの後。
 巨大な影が、地上に舞い降りた。

「グガアアアアアアラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 ドラゴンが咆える。
 それはスキルでも何でもない、ただの生物としての行動。
 だが、とんでもない風圧と轟音に飲まれ、自然と後ずさりしてしまった。

「……近くで見ると、結構いかついわね。とてもじゃないけどペットには無理そう」

 ミアは軽口を叩くが、そうでもしないと敵の威圧感に圧されてしまうのだろう。
 体長二0メートル以上。
 巨体を浮かせる両翼に、しなやかな尻尾。
 全身を覆う鱗は、絶対の物理防御力を誇り。
 蜥蜴に似た頭部から放たれる炎は、全てを焼き尽くす。
 Aランクモンスター、ドラゴン。

「……」

 これから先は、一挙手一投足が生死に直結する。
 ドラゴンの繰り出す攻撃、その全てを躱さなければならない。
 ミアとレヴィは、掠っただけで致命傷。
 僕は即死だ。
 僕の場合はスキルで数回耐えられるとしても……二人は別である。
 故に、慎重に。
 けれど、恐れ過ぎず。
 確実に、堅実に。
 スキルを――叩き込む。

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