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強襲
しおりを挟む『クイーンズ東部にもドラゴンが接近! 近くにいる冒険者は至急対応されたし! 中央部の被害は甚大! Aランク以上の冒険者は中央へ!』
ギルドの放送が街中に響き、逼迫した状況を伝えている。
「街の東部にまで……やっぱり、被害はどんどん広がってるみたいですね」
「この辺りも直に戦場になるはず……とにかく、一匹でも多く討伐しましょ」
「はい。お二人のサポート、全力で遂行します」
前を行くレヴィとミアが、決意を新たにしている。
ちなみに、男である僕が彼女たちの後塵を拝しているのは、マナによる身体能力の強化が全くできていないからだ。
レヴィはレベル34、ミアは30と、共にそれなりのステータスを有しているわけで……レベル1の僕は、ただまっすぐ走るだけでも遅れを取ってしまう。
だが、そんなことを悲観している暇はない。
僕の役目は一つ、スキルを使うことだけ。
それ以外は考えるな。
『クイーンズ南西部にドラゴン接近! 空中を猛スピードで移動中! 付近の冒険者は討伐に向かってください!』
突如、近況を知らせる放送と共に、大音量の警報が鳴り響く。
クイーンズ南西部……って、この辺りじゃないか。
「きたわね! 気合入れるわよ!」
先導するミアの足が一層速くなる。
彼女はすっかり覚悟を決めたらしく、やる気は充分だ。
「……」
僕は震える右手に力を込めた。
怖くないと言えば嘘になる。
だが、不思議とその恐怖が身体に馴染んでいた。
何故かはわからない。
ただ言えること。
僕は今、生きている。
「グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
耳をつんざく轟音。
遥か上空から発せられたその音波は、僕らの身体をビリビリと震わせた。
「おい、お前たち!」
と、いきなり声を掛けられる。
見れば、如何にも冒険者といった風体の男たちが二十人程……恐らく緊急依頼を請けてやってきたのだろう。
「放送を聞いてなかったのか! 巻き込まれたくなきゃ、どっか離れた場所まで移動しな!」
「その、僕たちもドラゴン討伐にきたんです」
「はぁ? お前ら冒険者なのか? まだガキじゃねえかよ」
団体のリーダー格らしき男がこちらに近づき、僕のことを見下ろした。
「小僧、レベルは?」
「……1です」
「ああ? ふざけてんじゃねえぞ」
男は威圧的な態度でにらみを利かせてくる。
そりゃまあ、ふざけて冗談を言っていると受け取られても仕方ないか。
ただ、事実は事実である。
「僕のレベルは1です。でも、スキルがあるので……」
「でももクソもねえんだよ! お前のレベルが本当に1だとしたら、今すぐここから消えろ! 遊びじゃねえんだぞ!」
唾を飛ばし、物凄い剣幕である。
とてもこちらの話を聞いてくれそうにない。
「そう言うおじさんのレベルはおいくつなんですか?」
トコトコと歩いてきたレヴィが、僕と男の間に割り込んだ。
「おじ……俺のレベルは65だ。後ろにいるあいつらと協力すりゃあ、ドラゴン一頭くらい屁でもねえさ」
レベル65ということは、Cランクか……ドラゴンを討伐するには心許ないレベルだが、しかし人数が人数である。
二十人全員がCランク相当なのだとしたら、上手くいけばドラゴンを倒せるだろう。
「ってことで、この場は俺たちが取り仕切る。低レベルなガキ共はさっさと失せろ。大方、討伐のおこぼれでももらいにきたんだろうが、そうはいかねえ。そんなせこい真似してねえで、スライムでも狩ってレベルを上げてな」
目障りだとばかりに手を振り、男は僕らに背を向けた。
「……何だか私、すっげームカついてます。あの人、イチカさんとミアさんの強さも知らずに適当なこと言って……」
「いいんだよ、レヴィ。ここはあの人たちに任せて、僕らは別の場所へ行こう」
この街と住人が無事なら、最悪、僕らの出番がなくてもいいのだ。
彼らがやってくれると言うのだから、無理に食い下がる必要もない。
「でも、ほんとにあんな人たちでドラゴンを倒せるんですか? 如何にも真っ昼間っから飲んだくれてそうな輩ですけど」
「まあ、あれだけ大人数のパーティーなら、多分大丈夫――」
未だ渋い顔のレヴィをなだめるため、言葉を選んでいると。
空が――赤く燃えた。
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