薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

文字の大きさ
35 / 269
第三章

第十二話 テイオー賞④

しおりを挟む
 最初のギミックを抜けた後、俺は俊足の魔法であるスピードスターを発動して、先頭を走るフェインに接近する。

『さぁ、最初のギミック、凍てついた魔の波動をものともしなかったシャカールが今、先頭ハナを走るフェインに追い付いた! その差はほぼなく、いつでも躱して前に出られる距離となっている!』

 実況担当のアルティメットの声が聞こえたのか、フェインは後を向く。

「貴様! いつの間に追い付いてきやがった!」

「つい先ほどだぜ。いやーそれにしても、スリップストリーム走行って楽で良いな! 風の影響を受けないから、スタミナを温存することが出来るうえに、走りやすいぜ」

「くそう! 俺を風避けの壁扱いしやがって! なら、これならどうだ!」

 フェインが右斜め前に跳躍をして位置を変えたことにより、一気に気圧に変化が起きた。

 俺に向かって風が吹き、少しだけ走り辛くなる。

『ここでフェインがステップを踏み、走っている位置を変更! シャカール走者、風の影響を受けて少し苦しそうだ!』

『現在走っている場所からでは、向かい風になっています。風の抵抗を受けながらの走りでは、上手く走ることは難しいですね』

 フェインが道を譲ってくれた。このまま速度を上げれば、前に出ることが出来る。でもその代わりに消費するスタミナは多いだろうな。なら、先の展開を考えると、俺がするべき行動はこれしかない。

 走っている足に力を入れ、右斜め前に跳躍。そして再びフェインの背後に位置取る。

『ここでシャカール走者が再びフェイン走者の背後を走る。意地でもフェインを風避けにするつもりだ!』

『風の影響による抵抗は、走者の敵でもありますからね。可能な限り風の抵抗を受けないように工夫するのも、走者の才能の一つです』

「貴様、またしても俺を風避けにしやがって! なら、これならどうだ!」

 余程風避けの道具にされるのが嫌だったのだろう。フェインは左右にステップを踏み、俺と直線上にならないようにしてくる。

 そっちがその気なら、こっちにも考えがあるぜ。何がなんでもお前を風避けに使わせてもらう。

『フェイン走者、見事なテイオーステップを見せる! しかし彼の動きに合わせてシャカール走者も同じステップを踏み、逃げ切ることができない! 何という執念!』

『本人や第三者からしたら嫌なレースです。ですが、これも作戦の一つ。有効な手であるのは間違いないです。同じことを真似され、フェイン走者は苛立っているのか、走りに乱れが現れ始めました』

「おのれ! ちょこまかとしつこいやつだ! 貴様、女性から嫌われるタイプだぞ!」

「悪いな、俺は最初から嫌われやすい性格なので、そんな分かりきったことは今更言われても何とも思わないな」

『フェイン走者とシャカール走者が一騎討ちをしていますが、後方も面白いことになっています』

『後方は後方で大波乱となっていますね』

『順位を振り返っていきます。現在フェインが一番手、続いてシャカール。10メートル離れて殿だったカルディアが三番手に来ています』

『氷を溶かす作戦が吉と出たみたいですね』

『四番手はヒッキー、その後ろをブリーザ、ここでアストンが並んできた。1メートル離れまして内をガーベラが走っていましたが、後方を走るアックスの火球が直撃! ここで追い越される! 倒れたガーベラをサザナミとジュエルサファイアが追い抜き、ここでガーベラが立ち上がった。ここまでが中段と言ったところでしょうか』

『先頭とはまだまだ開きがあります。この後のギミックで追いつけられるのか、ある意味楽しみな展開ですね』

『中段から5メートル離れまして、サンシャイン。その左をパワームテキが走ります。13位のカラボーアですが、ここでサイレントキルとアイリスに追い抜かれる。そして最下位を脱出しようとシンキングオパールが追いかける展開となっています』

『後段は後段でドラマティックな展開となっていますね』

 大分後ろを走る奴らとは差が開いたようだな。ここまで差が出れば、追い付かれることはほぼないと思ってもいい。だけど油断はできない。何でもありなのがこの魔競走レースだ。最後の最後まで油断はできない。

『1位争いをしているフェインとシャカールですが、おや? おかしいな? 私の目が疲れているのでしょうか? 僅かにシャカール走者が跳躍した後に、フェイン走者が遅れて跳躍しているように見えます』

『アルティメットの気のせいではないでしょう。私にも、そのように見えます。これは信じられないことですが、ほんの僅かにシャカール走者が、フェイン走者の動きを読み、先に動いていることになります』

「何だと! この俺の動きが読まれているだと!」

 前方を走るフェインが驚きの声を上げる。

 そうだ。俺はお前の動きを前もって予想している。お前の行動パターンは、前回のナイツ賞である程度覚えた。ある程度完璧にトレースができた以上は、もうフェインの一手、二手先を行動に移すことが出来る。

「それじゃあ、風が収まったところで前に行かせてもらおうかな。風避けの壁役ご苦労様!」

 フェインの横を抜き去り、先頭に躍り出る。しかしその直後、俺は次のギミックエリアに足を踏み入れ、一気に体が重くなるのを感じ取る。

『フェイン走者を追い抜いたシャカール走者ですが、ここで第2のギミック。グラヴィテープラスゾーンに突入だ!』

『このエリア内では、重力が2倍となります。体重が倍となったことで、走りに影響が出るコースとなっています。一気にスタミナを奪われるこのギミック。果たしてシャカール走者は、どのようにして突破するのか。見物です』

 体全体が重い。まるで鉄の鉄球を足首に取り付けられているみたいだ。だが、このエリアの影響は、後方のフェインが足を踏み入れた時に同じ条件となる。

 体重が軽い方が有利なエリアだが、それは同じ種族同士で走った場合だ。他種族が同じ条件であっても、種族の差がここで出てしまう。

『シャカール走者が重力の影響を受けえて速度が落ちる中、フェイン走者が追い付く!』

『やはり、ここで種族の差が出てしまうみたいですね』

「俺は人間と言う下等生物に負ける訳にはいかない! 遊びはおしまいだ! ここで本気を出し、貴様を大差で負かせる!」

 俺の横に並び立ち、今まではお遊びだったことをフェインが告げる。その刹那、彼の体に変化が起きた。

 体から体毛がびっしりと生え、体が膨らむ。目は鋭くなり、口は裂けて歯の一部が牙へと変化した。

「ワオオオオオオオオオオォォォォォォォォォン」

 フェインが体長5メートルはあるのではないかと思うほどの、巨大な獣へと変化した。

『ここでフェイン走者、ホースイエス記念以来のレースでは使用しなかった獣化を発動! 伝説の生物、フェンリルとなった彼が爆走する!』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

処理中です...