薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第七章

第八話 師匠の教え

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 突然アイリンが脱衣所にやって来たかと思うと、扉が開かれてエルフの女の子が浴室に入って来た。

 バスタオルで体を覆い隠しているも、大きい布を一枚纏っていることには変わらない。バスタオルで隠せない箇所からは、少し色白の肌が露わになっている。

「ア、アイリン! お前、どうして入って来る! 俺が入っていることは、お前が脱衣所に居る段階で伝えているだろうが!」

「だから入って来たのではないのですか?」

 何を言っているんだと言いたげな顔をしながら、アイリンは黄緑色の瞳でこちらを見てくる。

 つまり、俺が風呂場にいるから彼女も入って来たと言うことだ。

 クリープやマーヤなら考えられることだが、アイリンは意外すぎた。まさか、彼女もクリープと似た性癖を持っているのか?

 どうして彼女が風呂場に入って来たのかを考えていると、次第にアイリンの顔が赤く染まって行く。そして恥ずかしそうに俺から視線を外した。

 なるほど、どうやら無理をしているようだな。どんな理由なのか知らないが、そんなに恥ずかしいのなら来なければ良いのに。

「おい、どんな理由があるのか知らないが、顔が赤いじゃないか。無理をするぐらいなら、さっさと出て行ってくれ。邪魔だ」

「む、無理なんかしていませんよ!」

「言葉を噛んでいるじゃないか。無理をしている証拠だ」

「だから無理をしていません! そ、それで、シャカールさんは体の方は洗われたのですか?」

「いや、まだだ。そろそろ出てから洗おうかと思ったタイミングでお前が入って来たからな」

「そうですか。では、わたしが背中を流して差し上げます。ほら、早く出てください」

 俺の背中を流すと良い、アイリンは浴槽から出るように促す。

 なるほど、目的はそれか。だけど自分の体くらいは自分で洗う。

「悪いが自分の体くらいは自分で洗う。何を企んでいるのか知らないが、早く浴室から出て行ってくれ」

「それはわたしのお師匠様の教えに反するので断ります」

「お師匠様の教え?」

 アイリンのお師匠様は確かサクラと言う大昔に活躍した走者だ。大逃げを得意としており、アイリンはサクラの走りに憧れていると言う。

 そのお師匠様が、アイリンに何を吹っかけやがった?

「そうです。お師匠様は言いました。アイリンが世話になる人物が居れば、その人に礼として御奉仕しなさい。なので、お師匠様の教えを守るために、シャカールさんのお背中を流させて頂きます」

 エルフらしい小振りな胸を張り、堂々と言葉を放つ。

 彼女の態度を見て、俺は右手を額に当て、ため息を吐きたい気分になった。

 このパターンはクリープの時と似ている。断り続ければ、話しは平行線のまま進まない。早く彼女を浴室から追い出すには、さっさと目的を達成してもらった方が良い。

「分かった。お師匠様の教えなら仕方がない。早く背中を洗って出て行ってくれ」

「分かりました。お任せください」

 背中を洗う許可を与えると、アイリンは顔を綻ばせた。お師匠様の教えを守ることができたからか、笑みを浮かべながら石鹸を手に取る。

「それでは、只今よりお背中を洗わせて頂きます」

 背中を洗うことをいちいち宣言すると、俺の背中にタオルらしきものが当てられる感触を感じた。

「どこか痒いところはありますか?」

「いや、大丈夫だ」

 1分ほど経っただろうか? しばらく背中を現れていたが、突如背後からアイリンの手が伸び、俺の腹部にタオルを当て始める。

「おい、背中を流すだけだと言っただろう! 前は自分でやる」

「いいえダメです。お師匠様は言いました。体を洗う場合、背中だけでは相手に失礼だ。全身を洗う覚悟で挑みなさいと」

 お前の師匠は何を考えているんだ!

 心の中で叫ぶ中、アイリンのタオルは次第に下がっていき、下腹部まで移動してくる。

 おい、まさか。そのまま下に行くわけがないよな。

「まさか、それ以上下を洗わないよな?」

「洗うに決まっているでしょう? 全身を洗わないとお師匠様の教えに反することになります」

 お師匠様の教えをクソ真面目に遂行するな! 臨機応変になって遠慮すべきところは遠慮しろ!

 心の中で叫ぶも、アイリンの手は止まらない。そのまま下がって行き、俺の太腿を洗い始める。

 予想していた場所とは違うところを洗い始め、俺は複雑な気持ちになっていた。

 うん、あそこを避けられて良かったよ。でも、何だろう? 急に期待を裏切られたような気持ちになってがっかりしている自分がいる。

 レースで例えるのなら、賭けた走者が物凄い末脚で追い上げて来たのに、最後の最後で差しきれずに2着で終わってしまったような虚しさだ。

 何とも言えない微妙な気持ちでいると、再び浴室の扉が開かれた。

「シャカールちゃん! お背中を流しに来たよ! やっぱり現在の彼女であり、将来のお嫁さんとしては、これくらいして仲を深めないとね。マーヤが気持ちよくさせてあ・げ……る?」

 扉を開き、勢い良く飛び出してきたマーヤと目が合ってしまった。

 どうしてこうも面倒臭いことが立て続けに起こってしまう!
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