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最終章
第五話 アイリンの決断
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~アイリン視点~
魔王杯のメンバーが決まり、わたしは参加しないで済んで一安心しました。だって、わたしなんかが出たところで、足手纏いになるのは明白ですからね。
でも、何ででしょうか? 何故か後悔しているわたしが居るのです。
わたしなんか出ても、皆さんのお力になれないことは分かっているのに、心の奥底ではモヤモヤしています。
「どうして、こんな気持ちになるのでしょうか」
1人で学園のベンチに座りながら小さく息を吐き、ボーッと外の風景を眺めます。
「何を1人で黄昏ていますの? そんな顔、あなたには相応しくありませんことよ。もっとアホ面を晒して頂かないと」
隣から声が聞こえ、そちらに顔を向けると、一目で美少女と分かるほどの美しい顔立ちのエルフが隣に座っていることに気付きます。
「アイネスビジンさん! いつの間に!」
「つい先ほどですわよ。それにしても、珍しいですわね。あなたが黄昏れるなんて。何かありましたの?」
「私だって悩む時だってありますよ」
アイネスビジンさんの問いに答える訳でもなく、わたしだって悩む時くらいあると言うことを告げます。
「そう、別に話したくないのであれば話さなくともいいですわよ。ここで会ったのも何かの縁ですし、ちょっとワタクシの話に付き合ってくれません?」
「まぁ、別にいいですけど」
アイネスビジンさんがわたしと話がしたいなんて珍しいですね。いったい何の話しなのでしょうか?
「あなたは知らないでしょうが、ワタクシの親戚の子がとあるレースのメンバーに選ばれたのです。ですが、その子は自分に自信がなく、参加を拒否してしまったのです」
アイネスビジンさんの言葉が耳に入った瞬間、彼女の言葉が胸に突き刺さります。
その親戚の子、今のわたしと近い。
「ですが、その子は心の中では後悔していました。本当は出たかった。でも、出場して、もし負けてみんなの期待に応えられなかったことを考えると、とても怖かったのです」
彼女の話に耳を傾け、言葉が耳に入ってくる度に心臓の鼓動が大きくなっていきます。
わたしと同じだ。その親戚の子、今の私と同じ気持ちになっている。
「その親戚の子は、それからどうしたの!」
思わず声を上げて、アイネスビジンさんに問い掛けてしまいました。
「その子はレースには出場しないで応援する側に回ったのです。ですがレースが始まった直後、その子は後悔しました。一生懸命に走り、優勝を目指す走者たちの輝かしい姿を見て、自分も走りたい気持ちで一杯になりました。そして死ぬ程後悔したのです。やっぱりレースに出ておけば良かったと」
レースに出れば良かったと後悔した。もし、それがわたしだったら、どうなるのだろう? このまま応援の方に回って安心するのかな? それともその人のように後悔――。
そんなことを思っていると、アイネスビジンさんがわたしの肩に両手を置きます。
「そのレースを通してその子が思ったことを今から伝えますね『走者なら走れ! 何も怖がるな! 期待される程重責は大きいが、それから逃げていては、これからも逃げ続ける人生を送ることになる! あなたは強い! 走れ! 走れ! 走れ!』」
アイネスビジンさんの走れと言う言葉が連呼される度に、わたしの体は自然と立ち上がり、彼女に背を向けます。そして最後の走れの言葉がわたしの背中を押したかのように感じられ、自然とわたしは走り出します。
やっぱり嫌だよ。シャカールトレーナーなら何とかしてくれると思っているけれど、でも、それは彼に全てを投げ出して、自分だけが楽な道を選んでいるだけ。
わたしだってシェアハウスのメンバーなんだ。みんなと一緒に、これからも未来に向かって走っていきたい! わたしだけ置いてけぼりにされるのは嫌!
全力で走り、シャカールトレーナーを探します。
もしかしたら、わたしの枠なんて残っていないかもしれない。でも、このままわたしの意思を伝えないで終わるより、伝えて終わった方が何倍もマシ。
息が荒くなる中、懸命に走っていると、シャカールトレーナーを発見しました。彼の近くには、ルビーさんとシュヴァルツさんがいます。
「シャ……シャカールトレーナー!」
「アイリンじゃないか? どうした? そんなに息を荒くして」
彼の前に来ると、その場で立ち止まって膝に両手を付いて呼吸を整えます。
あーあ、もっと格好良く、わたしの今の気持ちを告げるつもりだったのに、格好悪い。やっぱり、転生者が伝えた漫画のキャラクターたちのようにはいかないみたい。
「あ、兄さんのほっぺたに蚊が」
「ぶへええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ルビーさんの棒読みのような言葉に続き、シュバルツさんの悲鳴のような言葉が耳に入り、驚いてそちらに顔を向けます。
「あ、今度は左頬に。あ、今度は右頬、あ、右腕に逃げた。今度は左腕、右足に左足にも移動していく~」
棒読みのセリフを吐き、次々とシュヴァルツさんをルビーさんが叩いたり殴ったりしていきます。
「大変、蚊のせいで兄さんがこんなにボロボロに。これでは魔王杯に出ることはできませんね。空いてしまった枠はどうしましょう。とりあえず、兄さんは保健室へと連れていきます」
シュバルツさんを引き釣り、ルビーさんはこの場から離れていきます。
もしかして、わたしの気持ちに気付いて気を使ってくれた?
もしそうなら、体を張ってくれた2人に応えるためにも、ちゃんと伝えないと。
「シャカールトレーナー! わたし、魔王杯に出ます! もう逃げません!」
魔王杯のメンバーが決まり、わたしは参加しないで済んで一安心しました。だって、わたしなんかが出たところで、足手纏いになるのは明白ですからね。
でも、何ででしょうか? 何故か後悔しているわたしが居るのです。
わたしなんか出ても、皆さんのお力になれないことは分かっているのに、心の奥底ではモヤモヤしています。
「どうして、こんな気持ちになるのでしょうか」
1人で学園のベンチに座りながら小さく息を吐き、ボーッと外の風景を眺めます。
「何を1人で黄昏ていますの? そんな顔、あなたには相応しくありませんことよ。もっとアホ面を晒して頂かないと」
隣から声が聞こえ、そちらに顔を向けると、一目で美少女と分かるほどの美しい顔立ちのエルフが隣に座っていることに気付きます。
「アイネスビジンさん! いつの間に!」
「つい先ほどですわよ。それにしても、珍しいですわね。あなたが黄昏れるなんて。何かありましたの?」
「私だって悩む時だってありますよ」
アイネスビジンさんの問いに答える訳でもなく、わたしだって悩む時くらいあると言うことを告げます。
「そう、別に話したくないのであれば話さなくともいいですわよ。ここで会ったのも何かの縁ですし、ちょっとワタクシの話に付き合ってくれません?」
「まぁ、別にいいですけど」
アイネスビジンさんがわたしと話がしたいなんて珍しいですね。いったい何の話しなのでしょうか?
「あなたは知らないでしょうが、ワタクシの親戚の子がとあるレースのメンバーに選ばれたのです。ですが、その子は自分に自信がなく、参加を拒否してしまったのです」
アイネスビジンさんの言葉が耳に入った瞬間、彼女の言葉が胸に突き刺さります。
その親戚の子、今のわたしと近い。
「ですが、その子は心の中では後悔していました。本当は出たかった。でも、出場して、もし負けてみんなの期待に応えられなかったことを考えると、とても怖かったのです」
彼女の話に耳を傾け、言葉が耳に入ってくる度に心臓の鼓動が大きくなっていきます。
わたしと同じだ。その親戚の子、今の私と同じ気持ちになっている。
「その親戚の子は、それからどうしたの!」
思わず声を上げて、アイネスビジンさんに問い掛けてしまいました。
「その子はレースには出場しないで応援する側に回ったのです。ですがレースが始まった直後、その子は後悔しました。一生懸命に走り、優勝を目指す走者たちの輝かしい姿を見て、自分も走りたい気持ちで一杯になりました。そして死ぬ程後悔したのです。やっぱりレースに出ておけば良かったと」
レースに出れば良かったと後悔した。もし、それがわたしだったら、どうなるのだろう? このまま応援の方に回って安心するのかな? それともその人のように後悔――。
そんなことを思っていると、アイネスビジンさんがわたしの肩に両手を置きます。
「そのレースを通してその子が思ったことを今から伝えますね『走者なら走れ! 何も怖がるな! 期待される程重責は大きいが、それから逃げていては、これからも逃げ続ける人生を送ることになる! あなたは強い! 走れ! 走れ! 走れ!』」
アイネスビジンさんの走れと言う言葉が連呼される度に、わたしの体は自然と立ち上がり、彼女に背を向けます。そして最後の走れの言葉がわたしの背中を押したかのように感じられ、自然とわたしは走り出します。
やっぱり嫌だよ。シャカールトレーナーなら何とかしてくれると思っているけれど、でも、それは彼に全てを投げ出して、自分だけが楽な道を選んでいるだけ。
わたしだってシェアハウスのメンバーなんだ。みんなと一緒に、これからも未来に向かって走っていきたい! わたしだけ置いてけぼりにされるのは嫌!
全力で走り、シャカールトレーナーを探します。
もしかしたら、わたしの枠なんて残っていないかもしれない。でも、このままわたしの意思を伝えないで終わるより、伝えて終わった方が何倍もマシ。
息が荒くなる中、懸命に走っていると、シャカールトレーナーを発見しました。彼の近くには、ルビーさんとシュヴァルツさんがいます。
「シャ……シャカールトレーナー!」
「アイリンじゃないか? どうした? そんなに息を荒くして」
彼の前に来ると、その場で立ち止まって膝に両手を付いて呼吸を整えます。
あーあ、もっと格好良く、わたしの今の気持ちを告げるつもりだったのに、格好悪い。やっぱり、転生者が伝えた漫画のキャラクターたちのようにはいかないみたい。
「あ、兄さんのほっぺたに蚊が」
「ぶへええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ルビーさんの棒読みのような言葉に続き、シュバルツさんの悲鳴のような言葉が耳に入り、驚いてそちらに顔を向けます。
「あ、今度は左頬に。あ、今度は右頬、あ、右腕に逃げた。今度は左腕、右足に左足にも移動していく~」
棒読みのセリフを吐き、次々とシュヴァルツさんをルビーさんが叩いたり殴ったりしていきます。
「大変、蚊のせいで兄さんがこんなにボロボロに。これでは魔王杯に出ることはできませんね。空いてしまった枠はどうしましょう。とりあえず、兄さんは保健室へと連れていきます」
シュバルツさんを引き釣り、ルビーさんはこの場から離れていきます。
もしかして、わたしの気持ちに気付いて気を使ってくれた?
もしそうなら、体を張ってくれた2人に応えるためにも、ちゃんと伝えないと。
「シャカールトレーナー! わたし、魔王杯に出ます! もう逃げません!」
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