薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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最終章

第四話 メンバー集め

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 学園に帰って来たシャワーライトだったが、重要なことを伝えようとした瞬間に魔王に見つかってしまった。それにより、彼女は魔法陣に飲み込まれてどこかに転移させられてしまった。

 彼女を助けようとしたが、助けてあげることができなかった。こうなった場合、彼女が処刑場に転移させられていないことを祈るしかない。

 シャワーライトが転移する前に残した言葉を思い出す。魔王軍のメンバーは11名、その中には俺たちが良く知っている人物もおり、そしてギミックは俺たちが不利になるようなものが用意されていると言う。

 どんな内容のものなのかは教えてもらうことができなかったが、色々な展開を予想していた方が良いだろうな。

「シャワーライトは消えてしまったが、こうなってしまった以上は、我々がどうこうできる訳ではない。今は彼女が無事であることを祈ろう」

 俺の心の中で考えていたことを代弁するかのように、ルーナが言葉を連ねる。

「先ほどのシャワーライトが言っていた言葉からして、魔王軍は11名でレースに参加すると言うことであろう。ゲートはフルで18名、つまり、残り7名が参加できる」

「魔王プリパラは、俺を勇者役に任命していた。俺が参加することは決定事項だろうな」

 魔王プリパラは勇者シャカールと愉快な仲間たちと言っていた。つまり、彼女は魔王軍VS勇者チームのレースを望んでいると言うことになる。

「あの魔王プリパラが言っていた言葉を思い出すに、俺が率いるチーム戦を望んでいるみたいだ。誰か、俺と一緒に魔王杯に参加してくれる人は居るか?」

 一緒に戦ってくれるメンバーを、シェアハウスのメンバーから募ってみると、いくつかの手が上がる。

「もちろん、あたしも参加させてもらうわ。万が一、魔王がレースに勝つなんてことになった場合、悔しい思いをするかもしれない。なら、悔いのない方を選ぶためにも、あたし自身が参加するべきと判断したわ」

「ママも参加しますね。きっとあの魔王プリパラさんは、愛が欠けているのです。ママが優しくギュッて抱きしめてあげれば、きっと良い子になってくれると思います」

「マーヤも参加するよ! 魔王って世界を滅ぼす存在だよね? もし、世界が滅ぼされたら、マーヤとシャカールちゃんとの新婚旅行ができなくなってしまうもん!」

「ゼロナ兄! 私も参加する! みんなよりは、力不足な面もあるかもしれないけれど、魔王軍が勝つようなことになれば、世界が悪い方に進みそうな気がするから」

『下ネタ番号、安心しろ。ナナミの身に万が一のことが起きれば、直ぐに妾が入れ替わってやるから』

 タマモ、クリープ、マーヤ、ナナミ&カレンニサキホコルの4名が参加を希望する中、アイリンだけが参加の意を示さなかった。当然、彼女にみんなの視線が向けられる。

「皆さん頑張ってください! わたしは全力で応援させていただきます」

「お前は参加しないのかよ。流れ的にお前も参加する流れだろう?」

「わたしは自分自身の力量を把握しております。わたしが出走したところで、足手纏いになって皆さんに迷惑をかけることは目に見えております。足を引っ張るようなことはしたくないので、今回は遠慮させていただきます」

 アイリンのやつ何言っているんだ? 確かに俺たちのメンバーの中では最弱かもしれない。けれど、彼女はG Iレースのツインターボステークスで1着を取った実力者だ。足手纏いになることなんてあり得ない。

「本当は?」

「本当は参加したくないので建前を言いました。だって、もし負けてしまったら責任重大ではないですか。わたしにはそんな重責を負えないので、見ている方が楽で良いのです。責任は他人に押し付けて、リスクを回避した方が色々と安心しますからね……ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁシャ、シャカールトレーナーやめてください! 痛いですよ」

 本当のことを訊ねると、彼女は本音を口にした。だが、その内容が内容だったので、アイリンの頭に手を置き、アイアンクローをした。

「シャカール、やめなさいよ!」

「そうです。ケンカはダメですよ。アイリンちゃんの気持ちもママは分かります」

 タマモとクリープが止めに入ってきた。

 2人の言う通り、アイリンの気持ちも分かる。だけど、俺は彼女に参加して欲しい。

 彼女の実力は、トレーナーである俺自身が把握している。彼女は強い。でも、自分に自身を持っていないのだ。

「ルーナ学園長がいるではないですか! ルーナ学園長なら、きっと勝ってくれますよ」

「確かにワタシなら魔王プルパラとも対等に走れるかもしれない。だが、それはあくまでも現役の場合だ。引退した今では体力が低下している。ワタシの方が余程足手纏いになるだろうな」

 アイリンは参加したくない。そしてルーナは現役時代に比べると体力が劣っている。

 初めて彼女と出会ってレース勝負を行った時は負けてしまったが、今の俺ならルーナに勝てる自身がある。そのことを考えても、やっぱりルーナの参加は控えるべきだ。

 そしてレオも論外だ。そもそも子犬の状態で走っても負けが確定しているようなものだ。

「話は聞きました。私たちで良ければ、微力ながら強力致しましょう」

 玄関の入り口から声が聞こえ、そちらに顔を向ける。すると、ウマのケモノ族の男女が立っていた。

「ルビー、シュヴァルツ」

「前回のレースで負けた私はなんでもあなたの言うことを聞かなければならない立場です。あなたが参加メンバーを求めていると言うのであれば、是非参加させていただきます。ついでに兄さんも参加させます。使い物にならないところが保証されていて悲しい存在ではありますが、いないよりはマシです。風避けの道具のようにお使いください」

「妹よ、事実であっても言い方がキツくないか? 俺、心のヒットポイントがどんどん削られていくのだが」

 ルビーとシュヴァルツが参加してくれれば、とりあえずメンバーは揃うことになる。

 ルビーは心強いが、できることなら、やっぱりアイリンにも参加して欲しい。

「アイリン、本当に良いのだな。お前の代わりにシュヴァルツが走って」

「え? ええ。やった。これで思い切って応援ができますね。あははははは」

 俺の問いにアイリンは答えるが、どこからどう見ても心の底からの喜びの声には聞こえなかった。
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