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52あくまで平和な①
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成人になってもレオポルドの務めは変わらない。
軍務と王宮での執務が巡るようにやって来て、いつも動き回っている。加速する王宮の変わりぶりに、むしろレオポルドの奮励は際立つようになっていった。働きすぎて、その内身体を壊すのではないかと心配されるほど。懸命な取り組みは見ている側の心も震わせた。
ルイは忙しそうにしている夫のため、できる限りの援助をしていった。湖畔に集まる貴族諸侯、子どもたちの父母を呼び出して、王宮の雑事を手伝ってほしいと願い出る。すべては夫のレオポルドのためだと潔く伝えると、彼らは重い腰を上げてくれた。
「王子のためなら仕方ない」
「ルイ様には恩がある」
子どもたちを養うことで得た交流が、レオポルドを支える力となる。ルイは貴族への感謝を忘れず、また後日お礼をしたいという旨の伝書を飛ばしまくった。
さて貴族や従者が庶務にあたってくれるようになると、レオポルドの手が空くことになる。当然、この余暇でたらたら休むような彼ではない。いつだって何かをしていなければ落ち着かない彼は、もっぱら鍛錬をして時間を過ごすようになる。
「ルイ、模擬戦に付き合ってくれ」
ちょうどルイの日課が終わるころに、絶妙な流れで顔を出してくる。レオポルドの特訓には、妻側は必ずといっていいほど呼ばれている。剣術や棒術の相手としてではなく、あくまで助言や戦術を話し合うため。「客観的な意見がほしい」というレオポルドの意向によるものだ。
「俺も騎士として大会に出られるぞ」
レオポルドの嬉しそうな顔を見れば、手放しで支えたくなってしまう。18歳のみなぎる彼。いっさい仕事などせず、決闘大会のことだけに集中してほしいと言ってやりたいぐらいだった。
ルイはひとまず、自分よりも実戦経験のあるベテランをかき集めた。のべ60人の王宮の手練れを、王子の練習相手として召し出す。またロイド王子の臣下たちにも接近し、夫の技能を引き上げてほしいと求めた。実費はすべてルイの嫁入りの金を注ぎ込んだので誰にも文句は言わせない。
「臣下が一人もいない王子」
そうやって呼ばれていた第三王子の周りには、いつしか多くの人間が行き来するようになっていた。
「レオ様には圧倒的に経験が足りていませんから。だからもっと多くの人の支えが必要だと思うんです」
「俺だけでは心許ないって?」
「そうです。レオ様が兄君たちを超える時は、彼らにないものを勝ち得た時でしょう」
剣を振るいながら、ほのかに笑う。レオポルドの汗ばんだ顔が夕暮れに照り輝いていた。庭を埋め尽くす人だかりで、それでも目に映るのは彼のみである。
「俺にはルイがいるんだ」
熱情を込めて、さも当たり前のように告げてくる。
「だから負けないさ」
「まったく、油断はいけませんよ」
「俺たちなら無敵だ」
根拠のない言葉が、これほど力強い説得力を持つなんて。彼以外に言っていたら笑ってしまうような文言であろう。ルイは、レオポルドに心酔する気分で、月日を刻むように過ごしていく。あらゆる物事が軌道にのり始めている。
充実した毎日。近づいてくる大会の日まで、力を出し惜しみするつもりはない。
レオポルドが兄王子と揉め事を起こしたのは、そんな普段通りの日々でのことであった。
~~~~~
下書きからわずかに加筆しています。52~55話は編集(手直し)が増えるかと思います、ご了承ください
軍務と王宮での執務が巡るようにやって来て、いつも動き回っている。加速する王宮の変わりぶりに、むしろレオポルドの奮励は際立つようになっていった。働きすぎて、その内身体を壊すのではないかと心配されるほど。懸命な取り組みは見ている側の心も震わせた。
ルイは忙しそうにしている夫のため、できる限りの援助をしていった。湖畔に集まる貴族諸侯、子どもたちの父母を呼び出して、王宮の雑事を手伝ってほしいと願い出る。すべては夫のレオポルドのためだと潔く伝えると、彼らは重い腰を上げてくれた。
「王子のためなら仕方ない」
「ルイ様には恩がある」
子どもたちを養うことで得た交流が、レオポルドを支える力となる。ルイは貴族への感謝を忘れず、また後日お礼をしたいという旨の伝書を飛ばしまくった。
さて貴族や従者が庶務にあたってくれるようになると、レオポルドの手が空くことになる。当然、この余暇でたらたら休むような彼ではない。いつだって何かをしていなければ落ち着かない彼は、もっぱら鍛錬をして時間を過ごすようになる。
「ルイ、模擬戦に付き合ってくれ」
ちょうどルイの日課が終わるころに、絶妙な流れで顔を出してくる。レオポルドの特訓には、妻側は必ずといっていいほど呼ばれている。剣術や棒術の相手としてではなく、あくまで助言や戦術を話し合うため。「客観的な意見がほしい」というレオポルドの意向によるものだ。
「俺も騎士として大会に出られるぞ」
レオポルドの嬉しそうな顔を見れば、手放しで支えたくなってしまう。18歳のみなぎる彼。いっさい仕事などせず、決闘大会のことだけに集中してほしいと言ってやりたいぐらいだった。
ルイはひとまず、自分よりも実戦経験のあるベテランをかき集めた。のべ60人の王宮の手練れを、王子の練習相手として召し出す。またロイド王子の臣下たちにも接近し、夫の技能を引き上げてほしいと求めた。実費はすべてルイの嫁入りの金を注ぎ込んだので誰にも文句は言わせない。
「臣下が一人もいない王子」
そうやって呼ばれていた第三王子の周りには、いつしか多くの人間が行き来するようになっていた。
「レオ様には圧倒的に経験が足りていませんから。だからもっと多くの人の支えが必要だと思うんです」
「俺だけでは心許ないって?」
「そうです。レオ様が兄君たちを超える時は、彼らにないものを勝ち得た時でしょう」
剣を振るいながら、ほのかに笑う。レオポルドの汗ばんだ顔が夕暮れに照り輝いていた。庭を埋め尽くす人だかりで、それでも目に映るのは彼のみである。
「俺にはルイがいるんだ」
熱情を込めて、さも当たり前のように告げてくる。
「だから負けないさ」
「まったく、油断はいけませんよ」
「俺たちなら無敵だ」
根拠のない言葉が、これほど力強い説得力を持つなんて。彼以外に言っていたら笑ってしまうような文言であろう。ルイは、レオポルドに心酔する気分で、月日を刻むように過ごしていく。あらゆる物事が軌道にのり始めている。
充実した毎日。近づいてくる大会の日まで、力を出し惜しみするつもりはない。
レオポルドが兄王子と揉め事を起こしたのは、そんな普段通りの日々でのことであった。
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