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夜会用のドレス
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女の子にとって、ドレスはただの服ではありません。特に、これから行われる『星降る夜会』のような大きなパーティーでは、ドレスは「私はこれだけ素敵なレディです」と発表するための大事な武器なのです。
私はこの日のために、三ヶ月も前から準備をしていました。デザイナーの先生と何度も相談し流行を取り入れつつ、私の瞳の色に合わせた深い青色の『ラピスラズリ』という宝石のような色のドレスを注文したのです。
生地も遠くの国から取り寄せた最高級のシルク。デザインは夜空に輝く星のように、細かいダイヤモンドを散りばめた特注品です。
「ふふっ。これならきっと、お父様も喜んでくださるわ」
完成したデザイン画を見て、私は久しぶりにウキウキしていました。最近、胃が痛いことばかりでしたが綺麗なものを見ると元気が出ます。
誰にも真似できない私だけのドレス。それを着て会場に入れば、きっとアルベルト様も「おっ、見直したぞ」と言ってくれるかもしれません。
いえ、あの鈍感な人には無理かもしれませんが、少なくとも公爵家の娘としてのプライドは守れます。今日の昼休みまでは、そう思っていたのです。
「やっほー、ロゼリア!」
学園の中庭にあるテラス。貴族の生徒たちが紅茶を飲んで休憩するその場所に、いつもの能天気な声が響きました。 アルベルト様です。そして、その腕には当然のようにミナがぶら下がっています。
私は紅茶のカップを置いて、ため息交じりに振り返りました。そして固まりました。時が止まったかと思いました。
「見てくれよロゼリア! ミナの新しいドレス姿! 今度の夜会のために仕立てたんだってさ!」
アルベルト様が自慢げに指差した先。そこに立っているミナが着ているドレス。それは……。
「……え?」
私の目がおかしくなったのでしょうか? そこには、私が注文したはずの『ラピスラズリ色のドレス』がありました。深い青色の生地に胸元のリボンの形、スカートの広がり方に散りばめられたビーズの位置。
全部が同じです。私のデザイン画と瓜二つなのです。
「あ、ロゼリア様ぁ、ごきげんよぉ」
ミナは悪びれもせず、クルッと一回転して見せました。
「どうかなぁ? 私、いつもはピンク色だけどぉ、たまには大人っぽい青色もいいかなって思って! アルベルト君が『似合う』って言ってくれたの!」
「ああ、最高だよミナ! 夜空の女神様みたいだ!」
カチャン。私の手からスプーンが滑り落ちてお皿に当たりました。血の気が引いていくのがわかります。
「……ミナさん。そのドレス、どうされたの?」
震える声で聞くと、ミナはニッコリ笑いました。
「えへへ、私のアイデアなの! 夢の中でね、女神様が出てきて『このデザインにしなさい』って教えてくれたのよぉ。すごくない?」
「すごい! さすがミナだ! 天才的なセンスだな!」
アルベルト様が手を叩いて絶賛します。夢? 女神様? そんなわけありません。
そのリボンのねじれ方は、私がデザイナーさんと三時間も議論して決めたこだわりの形です。偶然の一致なんてありえません。
「……アルベルト様。わたくしも、今度の夜会では……同じ青色のドレスを着る予定でしたのよ」
私が静かに告げると、アルベルト様はきょとんとしました。そして、信じられないことを言ったのです。
私はこの日のために、三ヶ月も前から準備をしていました。デザイナーの先生と何度も相談し流行を取り入れつつ、私の瞳の色に合わせた深い青色の『ラピスラズリ』という宝石のような色のドレスを注文したのです。
生地も遠くの国から取り寄せた最高級のシルク。デザインは夜空に輝く星のように、細かいダイヤモンドを散りばめた特注品です。
「ふふっ。これならきっと、お父様も喜んでくださるわ」
完成したデザイン画を見て、私は久しぶりにウキウキしていました。最近、胃が痛いことばかりでしたが綺麗なものを見ると元気が出ます。
誰にも真似できない私だけのドレス。それを着て会場に入れば、きっとアルベルト様も「おっ、見直したぞ」と言ってくれるかもしれません。
いえ、あの鈍感な人には無理かもしれませんが、少なくとも公爵家の娘としてのプライドは守れます。今日の昼休みまでは、そう思っていたのです。
「やっほー、ロゼリア!」
学園の中庭にあるテラス。貴族の生徒たちが紅茶を飲んで休憩するその場所に、いつもの能天気な声が響きました。 アルベルト様です。そして、その腕には当然のようにミナがぶら下がっています。
私は紅茶のカップを置いて、ため息交じりに振り返りました。そして固まりました。時が止まったかと思いました。
「見てくれよロゼリア! ミナの新しいドレス姿! 今度の夜会のために仕立てたんだってさ!」
アルベルト様が自慢げに指差した先。そこに立っているミナが着ているドレス。それは……。
「……え?」
私の目がおかしくなったのでしょうか? そこには、私が注文したはずの『ラピスラズリ色のドレス』がありました。深い青色の生地に胸元のリボンの形、スカートの広がり方に散りばめられたビーズの位置。
全部が同じです。私のデザイン画と瓜二つなのです。
「あ、ロゼリア様ぁ、ごきげんよぉ」
ミナは悪びれもせず、クルッと一回転して見せました。
「どうかなぁ? 私、いつもはピンク色だけどぉ、たまには大人っぽい青色もいいかなって思って! アルベルト君が『似合う』って言ってくれたの!」
「ああ、最高だよミナ! 夜空の女神様みたいだ!」
カチャン。私の手からスプーンが滑り落ちてお皿に当たりました。血の気が引いていくのがわかります。
「……ミナさん。そのドレス、どうされたの?」
震える声で聞くと、ミナはニッコリ笑いました。
「えへへ、私のアイデアなの! 夢の中でね、女神様が出てきて『このデザインにしなさい』って教えてくれたのよぉ。すごくない?」
「すごい! さすがミナだ! 天才的なセンスだな!」
アルベルト様が手を叩いて絶賛します。夢? 女神様? そんなわけありません。
そのリボンのねじれ方は、私がデザイナーさんと三時間も議論して決めたこだわりの形です。偶然の一致なんてありえません。
「……アルベルト様。わたくしも、今度の夜会では……同じ青色のドレスを着る予定でしたのよ」
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