11 / 44
私の指揮不足
しおりを挟む
「マリー、風向きを見て! キース、延焼を防ぐために【遮断】結界を!」
私は指示を飛ばしながら、自分でも砂をかけたりして消火活動を手伝いました。
キース様とマリーの的確な動きのおかげで、なんとか火はすぐに消し止められました。けが人も軽い火傷と、ススで顔が真っ黒になった四人組だけです。
「はぁ……はぁ……」
けむりが収まり、みんながホッと息をついた時でした。顔を真っ黒にしたアルベルト様が、立ち上がって私を指差しました。
「ロ、ロゼリア……! お前のせいだぞ!!」
「……は?」
私は耳を疑いました。今、なんと?
「お前が! 僕が集中している時に、横から『やめて!』なんて大声を出すから! ビックリして手元が狂ったんじゃないか!!」
アルベルト様は本気で怒っていました。ミナも、ススだらけの顔で泣き真似を始めます。
「そうよぉ! アルベルト様、すっごく上手にコントロールしてたのに! ロゼリア様が脅かすから……怖くて魔法が失敗しちゃったのよぉ!」
さらに、ガストンが叫びます。
「そうだそうだーっ! ロゼリア様の『やめて』という声が、俺の【増幅】魔法と干渉して、事故を招いたんだーっ! 俺たちは被害者だーっ!」
……開いた口がふさがりません。
(私が止めたから、事故が起きた? 私が止めなかったら、あなたたちは今頃、消し炭になっていましたよ?)
しかし、恐ろしいことに騒ぎを聞きつけてやってきた学年主任の先生(この人は事なかれ主義で有名です)が、彼らの言い分を聞いてうなずいたのです。
「なるほど……。ロゼリア嬢、君が余計な口出しをしたのが原因か」
「先生! 違います! 私は彼らの魔力が暴走しそうだったから……」
「言い訳はいい!」
先生は私の言葉をさえぎりました。
「君は公爵令嬢であり、アルベルト殿下の婚約者だろう? ならば、彼が気持ちよく魔法を使えるようにサポートするのが務めではないかね? 大声で驚かせて失敗させるなど、管理不足もいいところだ!」
周りの生徒たちも、ヒソヒソと話し始めます。
「ロゼリア様、嫉妬して邪魔したんじゃない?」
「自分よりミナちゃんが目立つのが嫌だったのよ」
「危ないわねぇ……」
ああ。また、これです。正しいことをしたのに、全部私が悪いことになる。アルベルト様たちは「可哀想な被害者」で、私は「ヒステリックな加害者」になりました。
(胃が痛い)
ズキズキと脈打つように痛みます。悔しくて拳を握りしめました。爪が手のひらに食い込みます。でも、私は泣きませんでした。その代わり右目をカッと見開きました。
(記録します。今の発言、今の状況、燃えたテント。そしてあなたたちの『ニヤリ』と笑った顔)
私の脳内で映像データが保存されます。【ファイル名:魔法実技の冤罪】保存完了。
その時、私の背中にそっと温かい手が触れました。キース様です。彼は何も言わず、私の背中をポンポンと優しく叩いてくれました。その反対側にはマリーが立っていました。
「……ロゼリア、大丈夫よ」
マリーが小声でささやきます。
「今の爆発の魔力データ、私が全部【解析】済みよ。ガストンの魔力が90%の原因だって、数値で証明できるわ」
「……ありがとう、二人とも」
私は深呼吸をして顔を上げました。先生に向かって優雅にお辞儀をします。
「……申し訳ございませんでした、先生。以後は、アルベルト様が『自爆』なさらないよう、遠くから見守ることにいたしますわ」
精一杯の皮肉です。
「ふん、わかればいい」
先生は鼻を鳴らして去っていきました。アルベルト様たちは「勝った!」という顔でハイタッチをしています。
(いいでしょう。今はまだ、笑っていなさい。その爆発が、あなたたちの破滅へのカウントダウンだということも気づかずにね)
私は焦げた芝生の匂いの中で、復讐の決意をまた一つ固くしたのでした。
私は指示を飛ばしながら、自分でも砂をかけたりして消火活動を手伝いました。
キース様とマリーの的確な動きのおかげで、なんとか火はすぐに消し止められました。けが人も軽い火傷と、ススで顔が真っ黒になった四人組だけです。
「はぁ……はぁ……」
けむりが収まり、みんながホッと息をついた時でした。顔を真っ黒にしたアルベルト様が、立ち上がって私を指差しました。
「ロ、ロゼリア……! お前のせいだぞ!!」
「……は?」
私は耳を疑いました。今、なんと?
「お前が! 僕が集中している時に、横から『やめて!』なんて大声を出すから! ビックリして手元が狂ったんじゃないか!!」
アルベルト様は本気で怒っていました。ミナも、ススだらけの顔で泣き真似を始めます。
「そうよぉ! アルベルト様、すっごく上手にコントロールしてたのに! ロゼリア様が脅かすから……怖くて魔法が失敗しちゃったのよぉ!」
さらに、ガストンが叫びます。
「そうだそうだーっ! ロゼリア様の『やめて』という声が、俺の【増幅】魔法と干渉して、事故を招いたんだーっ! 俺たちは被害者だーっ!」
……開いた口がふさがりません。
(私が止めたから、事故が起きた? 私が止めなかったら、あなたたちは今頃、消し炭になっていましたよ?)
しかし、恐ろしいことに騒ぎを聞きつけてやってきた学年主任の先生(この人は事なかれ主義で有名です)が、彼らの言い分を聞いてうなずいたのです。
「なるほど……。ロゼリア嬢、君が余計な口出しをしたのが原因か」
「先生! 違います! 私は彼らの魔力が暴走しそうだったから……」
「言い訳はいい!」
先生は私の言葉をさえぎりました。
「君は公爵令嬢であり、アルベルト殿下の婚約者だろう? ならば、彼が気持ちよく魔法を使えるようにサポートするのが務めではないかね? 大声で驚かせて失敗させるなど、管理不足もいいところだ!」
周りの生徒たちも、ヒソヒソと話し始めます。
「ロゼリア様、嫉妬して邪魔したんじゃない?」
「自分よりミナちゃんが目立つのが嫌だったのよ」
「危ないわねぇ……」
ああ。また、これです。正しいことをしたのに、全部私が悪いことになる。アルベルト様たちは「可哀想な被害者」で、私は「ヒステリックな加害者」になりました。
(胃が痛い)
ズキズキと脈打つように痛みます。悔しくて拳を握りしめました。爪が手のひらに食い込みます。でも、私は泣きませんでした。その代わり右目をカッと見開きました。
(記録します。今の発言、今の状況、燃えたテント。そしてあなたたちの『ニヤリ』と笑った顔)
私の脳内で映像データが保存されます。【ファイル名:魔法実技の冤罪】保存完了。
その時、私の背中にそっと温かい手が触れました。キース様です。彼は何も言わず、私の背中をポンポンと優しく叩いてくれました。その反対側にはマリーが立っていました。
「……ロゼリア、大丈夫よ」
マリーが小声でささやきます。
「今の爆発の魔力データ、私が全部【解析】済みよ。ガストンの魔力が90%の原因だって、数値で証明できるわ」
「……ありがとう、二人とも」
私は深呼吸をして顔を上げました。先生に向かって優雅にお辞儀をします。
「……申し訳ございませんでした、先生。以後は、アルベルト様が『自爆』なさらないよう、遠くから見守ることにいたしますわ」
精一杯の皮肉です。
「ふん、わかればいい」
先生は鼻を鳴らして去っていきました。アルベルト様たちは「勝った!」という顔でハイタッチをしています。
(いいでしょう。今はまだ、笑っていなさい。その爆発が、あなたたちの破滅へのカウントダウンだということも気づかずにね)
私は焦げた芝生の匂いの中で、復讐の決意をまた一つ固くしたのでした。
168
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!
放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】
侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。
しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。
「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」
利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。
一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる