私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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私の指揮不足

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「マリー、風向きを見て! キース、延焼を防ぐために【遮断】結界を!」

私は指示を飛ばしながら、自分でも砂をかけたりして消火活動を手伝いました。

キース様とマリーの的確な動きのおかげで、なんとか火はすぐに消し止められました。けが人も軽い火傷と、ススで顔が真っ黒になった四人組だけです。



「はぁ……はぁ……」

けむりが収まり、みんながホッと息をついた時でした。顔を真っ黒にしたアルベルト様が、立ち上がって私を指差しました。

「ロ、ロゼリア……! お前のせいだぞ!!」

「……は?」

私は耳を疑いました。今、なんと?



「お前が! 僕が集中している時に、横から『やめて!』なんて大声を出すから! ビックリして手元が狂ったんじゃないか!!」

アルベルト様は本気で怒っていました。ミナも、ススだらけの顔で泣き真似を始めます。

「そうよぉ! アルベルト様、すっごく上手にコントロールしてたのに! ロゼリア様が脅かすから……怖くて魔法が失敗しちゃったのよぉ!」

さらに、ガストンが叫びます。

「そうだそうだーっ! ロゼリア様の『やめて』という声が、俺の【増幅】魔法と干渉して、事故を招いたんだーっ! 俺たちは被害者だーっ!」

……開いた口がふさがりません。



(私が止めたから、事故が起きた?  私が止めなかったら、あなたたちは今頃、消し炭になっていましたよ?)

しかし、恐ろしいことに騒ぎを聞きつけてやってきた学年主任の先生(この人は事なかれ主義で有名です)が、彼らの言い分を聞いてうなずいたのです。

「なるほど……。ロゼリア嬢、君が余計な口出しをしたのが原因か」 

「先生! 違います! 私は彼らの魔力が暴走しそうだったから……」 

「言い訳はいい!」

先生は私の言葉をさえぎりました。



「君は公爵令嬢であり、アルベルト殿下の婚約者だろう? ならば、彼が気持ちよく魔法を使えるようにサポートするのが務めではないかね? 大声で驚かせて失敗させるなど、管理不足もいいところだ!」

周りの生徒たちも、ヒソヒソと話し始めます。 

「ロゼリア様、嫉妬して邪魔したんじゃない?」 

「自分よりミナちゃんが目立つのが嫌だったのよ」 

「危ないわねぇ……」

ああ。また、これです。正しいことをしたのに、全部私が悪いことになる。アルベルト様たちは「可哀想な被害者」で、私は「ヒステリックな加害者」になりました。

(胃が痛い)



ズキズキと脈打つように痛みます。悔しくて拳を握りしめました。爪が手のひらに食い込みます。でも、私は泣きませんでした。その代わり右目をカッと見開きました。

(記録します。今の発言、今の状況、燃えたテント。そしてあなたたちの『ニヤリ』と笑った顔)

私の脳内で映像データが保存されます。【ファイル名:魔法実技の冤罪】保存完了。

その時、私の背中にそっと温かい手が触れました。キース様です。彼は何も言わず、私の背中をポンポンと優しく叩いてくれました。その反対側にはマリーが立っていました。

「……ロゼリア、大丈夫よ」  

マリーが小声でささやきます。 



「今の爆発の魔力データ、私が全部【解析】済みよ。ガストンの魔力が90%の原因だって、数値で証明できるわ」 

「……ありがとう、二人とも」

私は深呼吸をして顔を上げました。先生に向かって優雅にお辞儀をします。

「……申し訳ございませんでした、先生。以後は、アルベルト様が『自爆』なさらないよう、遠くから見守ることにいたしますわ」

精一杯の皮肉です。  

「ふん、わかればいい」

先生は鼻を鳴らして去っていきました。アルベルト様たちは「勝った!」という顔でハイタッチをしています。

(いいでしょう。今はまだ、笑っていなさい。その爆発が、あなたたちの破滅へのカウントダウンだということも気づかずにね)

私は焦げた芝生の匂いの中で、復讐の決意をまた一つ固くしたのでした。
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