私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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夜会用のドレス

女の子にとって、ドレスはただの服ではありません。特に、これから行われる『星降る夜会』のような大きなパーティーでは、ドレスは「私はこれだけ素敵なレディです」と発表するための大事な武器なのです。

私はこの日のために、三ヶ月も前から準備をしていました。デザイナーの先生と何度も相談し流行を取り入れつつ、私の瞳の色に合わせた深い青色の『ラピスラズリ』という宝石のような色のドレスを注文したのです。

生地も遠くの国から取り寄せた最高級のシルク。デザインは夜空に輝く星のように、細かいダイヤモンドを散りばめた特注品オートクチュールです。



「ふふっ。これならきっと、お父様も喜んでくださるわ」

完成したデザイン画を見て、私は久しぶりにウキウキしていました。最近、胃が痛いことばかりでしたが綺麗なものを見ると元気が出ます。

誰にも真似できない私だけのドレス。それを着て会場に入れば、きっとアルベルト様も「おっ、見直したぞ」と言ってくれるかもしれません。

いえ、あの鈍感な人には無理かもしれませんが、少なくとも公爵家の娘としてのプライドは守れます。今日の昼休みまでは、そう思っていたのです。  



「やっほー、ロゼリア!」

学園の中庭にあるテラス。貴族の生徒たちが紅茶を飲んで休憩するその場所に、いつもの能天気な声が響きました。  アルベルト様です。そして、その腕には当然のようにミナがぶら下がっています。

私は紅茶のカップを置いて、ため息交じりに振り返りました。そして固まりました。時が止まったかと思いました。

「見てくれよロゼリア! ミナの新しいドレス姿! 今度の夜会のために仕立てたんだってさ!」

アルベルト様が自慢げに指差した先。そこに立っているミナが着ているドレス。それは……。



「……え?」

私の目がおかしくなったのでしょうか? そこには、私が注文したはずの『ラピスラズリ色のドレス』がありました。深い青色の生地に胸元のリボンの形、スカートの広がり方に散りばめられたビーズの位置。

全部が同じです。私のデザイン画と瓜二つなのです。

「あ、ロゼリア様ぁ、ごきげんよぉ」

ミナは悪びれもせず、クルッと一回転して見せました。

「どうかなぁ? 私、いつもはピンク色だけどぉ、たまには大人っぽい青色もいいかなって思って! アルベルト君が『似合う』って言ってくれたの!」 

「ああ、最高だよミナ! 夜空の女神様みたいだ!」



カチャン。私の手からスプーンが滑り落ちてお皿に当たりました。血の気が引いていくのがわかります。

「……ミナさん。そのドレス、どうされたの?」

震える声で聞くと、ミナはニッコリ笑いました。

「えへへ、私のアイデアなの! 夢の中でね、女神様が出てきて『このデザインにしなさい』って教えてくれたのよぉ。すごくない?」

「すごい! さすがミナだ! 天才的なセンスだな!」

アルベルト様が手を叩いて絶賛します。夢? 女神様?  そんなわけありません。

そのリボンのねじれ方は、私がデザイナーさんと三時間も議論して決めたです。偶然の一致なんてありえません。

「……アルベルト様。わたくしも、今度の夜会では……同じ青色のドレスを着る予定でしたのよ」

私が静かに告げると、アルベルト様はきょとんとしました。そして、信じられないことを言ったのです。

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