私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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決定的な証拠

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「ロゼリア様……私と『お友達』になりましょうよ」

ミナの声が、甘くねっとりと響きました。瞳が怪しく光ります。

「私の目を見てぇ……。私がどんなに可愛いか、わかるでしょぉ? 私のお願い、なんでも聞きたくなっちゃうでしょぉ?」

ゾワッ!  背筋に冷たいものが走りました。これは、アルベルト様にかけていた【魅了】魔法そのものです。

彼女は焦りのあまり、あろうことか私に直接をかけようとしているのです。



(危険ですね……)

私は本能的に身を固めました。目に見えないピンク色の触手が、私の顔に向かって伸びてきます。あれに触れられたら、私の心も汚染されてしまうかもしれません。

「ロゼリアっ!!」

その時でした。私の前に、大きな背中が飛び出しました。



ガキンッ!!

硬い金属音のような音が響きました。キース様です。彼が私の前に立ちふさがり、片手を前に突き出していました。

その手の先には、透明なガラスのような壁【遮断シールド】の結界が張られていました。

ミナから放たれたピンク色の魔力が、キース様の結界にぶつかり火花を散らして弾け飛んだのです。



「きゃっ!?」  

自分の放った魔力が跳ね返ってきて、ミナが悲鳴を上げました。

「……汚らわしい」  

キース様は、地獄の底から響くような低い声で言いました。

「俺の大切な人に、その汚い魔法を向けるな」

(か、かっこいい!) 

心臓がドキンッ! と高鳴りました。キース様の背中は広くて頼もしくて、私をあらゆる悪意から守ってくれる絶対的な壁でした。



「な、なによこれぇ! 私の魔法が……効かない!?」  

ミナは信じられないという顔で自分の手を見ています。  

今まで、男の子たちはみんなイチコロだったのでしょう。自分の魔法が拒絶されたのは初めての経験なのです。

「お前のその魔法は、精神の弱い奴には効くかもしれないが……。俺には通用しない。俺が見ているのはロゼリアだけだ。他の誰かが入り込む隙間なんて、1ミリもない」

キース様は断言しました。その言葉は、どんな【防御】魔法よりも強力に、ミナのプライドを粉々に砕きました。



「……撮れましたわ」

私はキース様の背中越しに右目を開きました。【記録完了】

今のやりとり。ミナが意図的に私に魔法を放ち、それがキース様の結界にぶつかって弾かれた瞬間。その映像は、ミナが魔法を使って他人を攻撃したという動かぬ証拠になります。

これまでは「無意識に出ちゃったの~」と言い逃れできたかもしれませんが今のは違います。明確な殺意にも似た悪意ある攻撃でした。



「ア、アルベルト様! あの人たちが私をいじめるの! なんとかしてよぉ!」  

ミナは泣きついて誤魔化そうとしました。しかし、アルベルト様も今の異様な光景を見て呆然としています。ミナの体から出たピンク色の煙を彼も見てしまったからです。

「ミナ……? 今のは……何だ?」 

「な、なんでもないの! 幻覚よ! きっとリリィが失敗したのよ!」

ミナは必死に取りつくろいますが手遅れです。

私はキース様の背中からそっと顔を出しました。そして、冷たく静かに告げました。



「ミナさん。今の攻撃魔法、しっかりと記録させていただきました。貴族への魔法攻撃はですわよ?」

「ひっ……」

「覚悟していてくださいね。次の『星降る夜会』……そこで、全てを清算して差し上げます」

私の言葉に、ミナは顔を引きつらせて後ずさりしました。自分が今までやってきたことの恐ろしさが、やっと分かってきたのかもしれません。



「行こう、ロゼリア。ここにいると空気が悪い」  

キース様が私の肩を抱き寄せました。 

「はい、キース」

私たちは、青ざめるミナと混乱するアルベルト様を残してその場を去りました。帰り道、私はキース様の袖をちょっとだけ掴みました。

「……あの、キース」 

「ん?」 

「守ってくださって、ありがとうございました。とても、嬉しかったです」

キース様は少しだけ耳を赤くして、そっぽを向きました。



 「……当然のことをしたまでだ。君に指一本でも触れさせるものか」

(ああ、本当に……)

どうして私は今まで、あの馬鹿なアルベルト様に固執していたのでしょう。本物のナイトは、こんなに近くにいたのに。

証拠は揃いました。ガストンは沈黙し、リリィは逃亡し、ミナは尻尾を出しました。

舞台は整いました。あとは、仕上げです。最高のドレスを着て最高のパートナーと共に、最高のをお見舞いするだけです!
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