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決戦の舞台
王宮の大広間は、まるで宝石箱をひっくり返したような輝きに包まれていました。今日は『星降る夜会』です。この国の貴族たちが一堂に会する、一年で一番豪華なパーティーです。
天井からは巨大な水晶のシャンデリアが吊り下がり、数えきれないほどのロウソクが着飾った紳士や淑女たちを照らしています。楽団が奏でる上品なワルツの調べ。テーブルに並ぶ、色とりどりの美味しそうな料理。
でも、今夜の主役は料理でもダンスでもありません。会場のあちこちで、ヒソヒソという噂話が飛び交っていました。
「ねえ、聞いた? バレンシア公爵家のロゼリア様のこと」
「ああ、なんでも男爵令嬢に嫉妬して、教科書を破ったとか」
「ドレスのデザインまで真似したそうよ。落ちたものねぇ……」
根も葉もない噂が毒のように広がっています。その中心にいたのは、もちろん彼らでした。
「うわぁ、すごいねアルベルト様! お城のパーティーなんて初めて!」
「ハハハ、君のためならこれくらい当然だよ、ミナ」
会場の中央に、アルベルト様とミナが立っていました。ミナが着ているのは、あの盗作された青いドレスです。デザイン自体は私が考えたものなので悪くありませんが、生地がペラペラで光沢も安っぽく見えます。それでもミナは「私が一番!」という顔で、アルベルト様の腕にぶら下がっていました。
「見てミナ。みんなが君の美しさに注目しているよ」
「えへへ、やっぱりこの青いドレスにして正解だったわ! ロゼリア様とお揃いになっちゃったけど、私の方が似合うもんね!」
二人は勝利を確信して笑い合っています。ロゼリアは恥をかいて欠席するか、同じドレスを着てきて笑い者になるか。どちらにしても、自分たちの勝ちだと思っているのです。
その時でした。
ジャァァァァァァァン……。
入り口の扉の前で、重厚なドラが鳴り響きました。会場の空気が一変します。衛兵が、腹の底から声を張り上げました。
「バレンシア公爵令嬢、ロゼリア・バレンシア様、ご入場!!」
「および、エスコートは、近衛騎士団、キース・グランディ様!!」
重たい扉が、ゆっくりと左右に開かれます。その瞬間、会場中の時間が止まりました。
ヒソヒソ話も、グラスのカチャンという音も、すべてが消え失せました。誰もが息をのんで目を見開いて、入り口の二人に釘付けになったのです。
そこに立っていたのは、夜空そのものをまとった女神でした。
「……きれい……」
誰かがポツリと漏らしました。
私が身にまとっているのは、キース様が用意してくださった特注ドレスです。色はミナと同じ青。デザインも盗まれたものと同じです。ですが、モノが違いました。
天井からは巨大な水晶のシャンデリアが吊り下がり、数えきれないほどのロウソクが着飾った紳士や淑女たちを照らしています。楽団が奏でる上品なワルツの調べ。テーブルに並ぶ、色とりどりの美味しそうな料理。
でも、今夜の主役は料理でもダンスでもありません。会場のあちこちで、ヒソヒソという噂話が飛び交っていました。
「ねえ、聞いた? バレンシア公爵家のロゼリア様のこと」
「ああ、なんでも男爵令嬢に嫉妬して、教科書を破ったとか」
「ドレスのデザインまで真似したそうよ。落ちたものねぇ……」
根も葉もない噂が毒のように広がっています。その中心にいたのは、もちろん彼らでした。
「うわぁ、すごいねアルベルト様! お城のパーティーなんて初めて!」
「ハハハ、君のためならこれくらい当然だよ、ミナ」
会場の中央に、アルベルト様とミナが立っていました。ミナが着ているのは、あの盗作された青いドレスです。デザイン自体は私が考えたものなので悪くありませんが、生地がペラペラで光沢も安っぽく見えます。それでもミナは「私が一番!」という顔で、アルベルト様の腕にぶら下がっていました。
「見てミナ。みんなが君の美しさに注目しているよ」
「えへへ、やっぱりこの青いドレスにして正解だったわ! ロゼリア様とお揃いになっちゃったけど、私の方が似合うもんね!」
二人は勝利を確信して笑い合っています。ロゼリアは恥をかいて欠席するか、同じドレスを着てきて笑い者になるか。どちらにしても、自分たちの勝ちだと思っているのです。
その時でした。
ジャァァァァァァァン……。
入り口の扉の前で、重厚なドラが鳴り響きました。会場の空気が一変します。衛兵が、腹の底から声を張り上げました。
「バレンシア公爵令嬢、ロゼリア・バレンシア様、ご入場!!」
「および、エスコートは、近衛騎士団、キース・グランディ様!!」
重たい扉が、ゆっくりと左右に開かれます。その瞬間、会場中の時間が止まりました。
ヒソヒソ話も、グラスのカチャンという音も、すべてが消え失せました。誰もが息をのんで目を見開いて、入り口の二人に釘付けになったのです。
そこに立っていたのは、夜空そのものをまとった女神でした。
「……きれい……」
誰かがポツリと漏らしました。
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