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ズレた正義感
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ルーカス王子は、私の反応などお構いなしに熱っぽく語り始めました。
「聞いたよ。アルベルトが廃嫡され、辺境の開拓村に送られたと! なんて酷い仕打ちだ! 彼は僕の幼馴染で、昔から純粋で優しい男だったんだぞ!」
アルベルト様のことをそんな風に言うなんて、この人は彼の外面しか知らないのでしょう。
「あの、ルーカス殿下」
私が言おうとしたらキース様が私の前に立ちふさがり、不機嫌そうに言いました。
「事情をご存知ないようですが、アルベルト元王子は、ロゼリアを裏切り、傷つけ、国に損害を与えたんです。自業自得ですよ」
「ノンノンノン!」
ルーカス王子は、チッチッと人差し指を振りました。アルベルト様に似て、どうも知恵が足りないように感じられます。
「事情なら聞いているさ! 悪いのは、ミナとかいう女だろう? 彼女が怪しい魔法を使ったから、純粋なアルベルトは騙されたんだ! つまり、アルベルトも被害者じゃないか!」
彼は両手を広げて空を仰ぎました。
「被害者なのに罰を受けるなんて、正義に反する! ロゼリア嬢、君もそう思うだろ? 長年連れ添った婚約者じゃないか。魔法で操られていた彼を見捨てるなんてよくないよ! 君はもっと慈悲深い女性のはずだ!」
……あぁ。頭が痛くなってきました。一番厄介なタイプです。
彼は「自分が正しい!」と微塵も疑っていないのです。悪気がない。だからこそ、こちらの言葉が届かない。
「ルーカス殿下」
私は深呼吸をして、冷静に言葉を返しました。
「お言葉ですが、アルベルト様が罰を受けたのは、魔法にかかったからではありません。魔法にかかる前から私を蔑ろにし、自分の意志で安易な道を選んだ『心の弱さ』が罪とされたのです。これは国王陛下が下された正式な裁定ですわ」
「陛下だって間違うことはあるさ!」
ルーカス王子は爽やかに言い放ちました。
「実は昨日、君の国の国王陛下に会いに行ったんだ。『アルベルトを呼び戻しましょう!』ってね」
「へっ!?」
私とキース様は絶句しました。他国の王子が、いきなり国王に文句を言いに行ったのですか?
「そしたら陛下は、『頭が痛いから帰ってくれ』と仰っていたよ。きっと、息子を失った悲しみで憔悴しているんだね……かわいそうに」
いいえ、違います。 十中八九、陛下はあなたの相手をするのが面倒くさかっただけです!
「だからロゼリア嬢、君の出番だ! 君が『アルベルト様を許します』と言えば、陛下も彼を呼び戻しやすくなる! さあ、僕と一緒に辺境の村へ迎えに行こう! 感動の再会だ!」
彼は私の手を取ろうとしました。
バシッ! キース様が、その手を乱暴に払いのけました。
「……いい加減にしろ」
キース様の声は、とても低くて怒っているのがはっきりわかりました。
「ロゼリアがどれだけ苦しんだか、知りもしないくせに……二度と彼女に触るな」
「おや、怖いねぇ騎士君」
ルーカス王子は余裕の笑みを崩しません。
「でも、暴力では心は動かせないよ? 僕は諦めないからね。正義は必ず勝つんだ!」
彼はマントをひるがえすと、キラキラした粉を撒き散らしながら校舎へと消えていきました。残された私たちは、ドッと疲れが出ました。
「……キース様。面倒なことになりましたわ」
「ああ。まさか、こんな『おせっかい男』が現れるとはな」
しかし、ルーカス王子の本当の恐ろしさはここからでした。彼は自分の顔と人気を最大限に利用し始めたのです。
昼休み。食堂でランチを食べていると一年生の女子生徒たちが、おずおずと私たちのテーブルにやってきました。
「あのぅ……ロゼリア様」
「はい、なんでしょう?」
彼女たちは、モジモジしながら言いました。
「その……アルベルト王子のこと、許してあげないんですか?」
「えっ?」
「ルーカス様が言ってたんです。『アルベルトは純粋すぎただけなんだ。彼をずっと独りぼっちにするなんて、あまりにも可哀想だ』って……」
「私たちも、そう思うんです」
「ロゼリア様は優しい方だって聞いてたから……」
彼女たちの目には、私を非難しているような気持ちが見えます。
「聞いたよ。アルベルトが廃嫡され、辺境の開拓村に送られたと! なんて酷い仕打ちだ! 彼は僕の幼馴染で、昔から純粋で優しい男だったんだぞ!」
アルベルト様のことをそんな風に言うなんて、この人は彼の外面しか知らないのでしょう。
「あの、ルーカス殿下」
私が言おうとしたらキース様が私の前に立ちふさがり、不機嫌そうに言いました。
「事情をご存知ないようですが、アルベルト元王子は、ロゼリアを裏切り、傷つけ、国に損害を与えたんです。自業自得ですよ」
「ノンノンノン!」
ルーカス王子は、チッチッと人差し指を振りました。アルベルト様に似て、どうも知恵が足りないように感じられます。
「事情なら聞いているさ! 悪いのは、ミナとかいう女だろう? 彼女が怪しい魔法を使ったから、純粋なアルベルトは騙されたんだ! つまり、アルベルトも被害者じゃないか!」
彼は両手を広げて空を仰ぎました。
「被害者なのに罰を受けるなんて、正義に反する! ロゼリア嬢、君もそう思うだろ? 長年連れ添った婚約者じゃないか。魔法で操られていた彼を見捨てるなんてよくないよ! 君はもっと慈悲深い女性のはずだ!」
……あぁ。頭が痛くなってきました。一番厄介なタイプです。
彼は「自分が正しい!」と微塵も疑っていないのです。悪気がない。だからこそ、こちらの言葉が届かない。
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私は深呼吸をして、冷静に言葉を返しました。
「お言葉ですが、アルベルト様が罰を受けたのは、魔法にかかったからではありません。魔法にかかる前から私を蔑ろにし、自分の意志で安易な道を選んだ『心の弱さ』が罪とされたのです。これは国王陛下が下された正式な裁定ですわ」
「陛下だって間違うことはあるさ!」
ルーカス王子は爽やかに言い放ちました。
「実は昨日、君の国の国王陛下に会いに行ったんだ。『アルベルトを呼び戻しましょう!』ってね」
「へっ!?」
私とキース様は絶句しました。他国の王子が、いきなり国王に文句を言いに行ったのですか?
「そしたら陛下は、『頭が痛いから帰ってくれ』と仰っていたよ。きっと、息子を失った悲しみで憔悴しているんだね……かわいそうに」
いいえ、違います。 十中八九、陛下はあなたの相手をするのが面倒くさかっただけです!
「だからロゼリア嬢、君の出番だ! 君が『アルベルト様を許します』と言えば、陛下も彼を呼び戻しやすくなる! さあ、僕と一緒に辺境の村へ迎えに行こう! 感動の再会だ!」
彼は私の手を取ろうとしました。
バシッ! キース様が、その手を乱暴に払いのけました。
「……いい加減にしろ」
キース様の声は、とても低くて怒っているのがはっきりわかりました。
「ロゼリアがどれだけ苦しんだか、知りもしないくせに……二度と彼女に触るな」
「おや、怖いねぇ騎士君」
ルーカス王子は余裕の笑みを崩しません。
「でも、暴力では心は動かせないよ? 僕は諦めないからね。正義は必ず勝つんだ!」
彼はマントをひるがえすと、キラキラした粉を撒き散らしながら校舎へと消えていきました。残された私たちは、ドッと疲れが出ました。
「……キース様。面倒なことになりましたわ」
「ああ。まさか、こんな『おせっかい男』が現れるとはな」
しかし、ルーカス王子の本当の恐ろしさはここからでした。彼は自分の顔と人気を最大限に利用し始めたのです。
昼休み。食堂でランチを食べていると一年生の女子生徒たちが、おずおずと私たちのテーブルにやってきました。
「あのぅ……ロゼリア様」
「はい、なんでしょう?」
彼女たちは、モジモジしながら言いました。
「その……アルベルト王子のこと、許してあげないんですか?」
「えっ?」
「ルーカス様が言ってたんです。『アルベルトは純粋すぎただけなんだ。彼をずっと独りぼっちにするなんて、あまりにも可哀想だ』って……」
「私たちも、そう思うんです」
「ロゼリア様は優しい方だって聞いてたから……」
彼女たちの目には、私を非難しているような気持ちが見えます。
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