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邪魔されるデート
アルベルト王子を許してあげないロゼリア様は、冷たい人なんじゃないか?
ルーカス王子は、自分のファンである女子生徒たちに『アルベルト可哀想キャンペーン』を吹き込んだのです!
事情を知らない新入生たちは、あのキラキラ王子の言葉を信じてしまっています。
「……事情は複雑なの。簡単には言えないわ」
私が困って答えると、彼女たちは不満そうに顔を見合わせました。
「そうですか……。なんだか、ガッカリです」
彼女たちは去っていきました。胸がチクリと痛みます。今まで築き上げてきた信頼が、ルーカス王子の無責任な善意によって崩されていく恐怖。
「ロゼリア、気にするな」
キース様が私の手を握りしめました。
「あいつらは何も分かってない。君は何も悪くない」
「ありがとう、キース。でも、このままでは学園中が『アルベルトを許そう』という空気になってしまいますわ」
私は危機感を感じました。空気というのは、時として法律よりも重い鎖になります。
このままでは、私はいじめっ子のレッテルを貼られてしまうかもしれません。
放課後。私たちはマリーの研究室に駆け込みました。
「マリー! 助けてくださいまし!」
「あらあら、今日はずいぶんと参ってるわね」
白衣を着たマリーは、机に広げた書物に目を向けたまま言った。私たちは事情をすべて話した。
「――なるほどねぇ。ルーカス王子……『主人公症候群』の重症患者ね」
マリーは眼鏡をクイッと押し上げました。
「主人公症候群?」
「ええ。『自分は正義の味方だ』『僕のやることは全て正しい』と思い込んでいる人のことよ。彼はアルベルトを助けることで、自分自身が気持ちよくなりたいだけなの。ロゼリアの気持ちなんて、最初から考えていないわ」
「まさにその通りですわ! あんなに話の通じない人は初めてです」
「対策は一つよ」
マリーはニヤリと笑いました。
「彼に『現実』を見せてあげること。アルベルトがどれだけダメな男だったか、そしてルーカスのやっていることがどれだけ迷惑か、徹底的に分からせてあげるの」
「現実、ですか……」
「でも、今は少しリフレッシュが必要ね。キース、ロゼリアを連れ出してあげたら? 明日からは学園祭の準備期間でしょ?」
マリーのアドバイスに従い翌日の放課後、私たちは街へ出ることにしました。学園祭の買い出しという名目のデートです。
にぎやかな商店街。私は久しぶりにキース様と手を繋いで歩きました。
「ロゼリア、あそこの屋台で限定のスイーツが出てるらしいぞ」
「まあ! 行きましょう、キース!」
甘いクレープを買って、公園のベンチで二人で食べる。ほんの一瞬、ルーカス王子のことを忘れて、幸せな時間を過ごしていました。
「おいしい……。やっぱりキースと一緒にいる時が、一番落ち着きますわ」
「俺もだよ。君の笑顔を守るためなら、俺は何だってする」
キース様が私の頬についたクリームを拭おうと、顔を近づけた時でした。
「やあ! 奇遇だね!」
頭上から、あのやたらと明るい声が降ってきました。見上げると、公園の木の枝にルーカス王子が座っていました。
ルーカス王子は、自分のファンである女子生徒たちに『アルベルト可哀想キャンペーン』を吹き込んだのです!
事情を知らない新入生たちは、あのキラキラ王子の言葉を信じてしまっています。
「……事情は複雑なの。簡単には言えないわ」
私が困って答えると、彼女たちは不満そうに顔を見合わせました。
「そうですか……。なんだか、ガッカリです」
彼女たちは去っていきました。胸がチクリと痛みます。今まで築き上げてきた信頼が、ルーカス王子の無責任な善意によって崩されていく恐怖。
「ロゼリア、気にするな」
キース様が私の手を握りしめました。
「あいつらは何も分かってない。君は何も悪くない」
「ありがとう、キース。でも、このままでは学園中が『アルベルトを許そう』という空気になってしまいますわ」
私は危機感を感じました。空気というのは、時として法律よりも重い鎖になります。
このままでは、私はいじめっ子のレッテルを貼られてしまうかもしれません。
放課後。私たちはマリーの研究室に駆け込みました。
「マリー! 助けてくださいまし!」
「あらあら、今日はずいぶんと参ってるわね」
白衣を着たマリーは、机に広げた書物に目を向けたまま言った。私たちは事情をすべて話した。
「――なるほどねぇ。ルーカス王子……『主人公症候群』の重症患者ね」
マリーは眼鏡をクイッと押し上げました。
「主人公症候群?」
「ええ。『自分は正義の味方だ』『僕のやることは全て正しい』と思い込んでいる人のことよ。彼はアルベルトを助けることで、自分自身が気持ちよくなりたいだけなの。ロゼリアの気持ちなんて、最初から考えていないわ」
「まさにその通りですわ! あんなに話の通じない人は初めてです」
「対策は一つよ」
マリーはニヤリと笑いました。
「彼に『現実』を見せてあげること。アルベルトがどれだけダメな男だったか、そしてルーカスのやっていることがどれだけ迷惑か、徹底的に分からせてあげるの」
「現実、ですか……」
「でも、今は少しリフレッシュが必要ね。キース、ロゼリアを連れ出してあげたら? 明日からは学園祭の準備期間でしょ?」
マリーのアドバイスに従い翌日の放課後、私たちは街へ出ることにしました。学園祭の買い出しという名目のデートです。
にぎやかな商店街。私は久しぶりにキース様と手を繋いで歩きました。
「ロゼリア、あそこの屋台で限定のスイーツが出てるらしいぞ」
「まあ! 行きましょう、キース!」
甘いクレープを買って、公園のベンチで二人で食べる。ほんの一瞬、ルーカス王子のことを忘れて、幸せな時間を過ごしていました。
「おいしい……。やっぱりキースと一緒にいる時が、一番落ち着きますわ」
「俺もだよ。君の笑顔を守るためなら、俺は何だってする」
キース様が私の頬についたクリームを拭おうと、顔を近づけた時でした。
「やあ! 奇遇だね!」
頭上から、あのやたらと明るい声が降ってきました。見上げると、公園の木の枝にルーカス王子が座っていました。
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