16 / 25
その16
しおりを挟む
贅沢な生活を送ること約1週間。
先輩との生活は快適すぎて俺は楽で良いけど、先輩がどう思っているのか気になる所だ。
そういえば、先輩のニュースに関してだが、先輩の事務所は全否定しており、相手方の女優さんはノーコメントを貫いているらしい。
その情報は全て社内の女の子たちの話から得たもので、先輩からは何一つ聞いていない。
果たして聞いて良いものなのかどうかも分からず、今日も家に帰っては仕事をして床で寝て朝を迎えるのだと思っていたのだが。
「明日の夕食は外だから食べてくるなよ」
夕食を食べていたときに急にそんなことを言われ、何故だと警戒していれば、鼻で笑われた。
ご飯を作るのが大変になったとか、食料品が切れたとかそういうことなのかと思って尋ねようとするも、タイミングが掴めないまま翌日を迎えた。
そして、何時ものごとくヘロヘロになりながら帰ればその状態のまま先輩にとある小さな居酒屋に連れていかれた。
その店の扉には、本日貸し切りという札が下がっており、その扉を潜り抜ければそこには。
「え?!望月先輩にふなっち?!」
高校の頃の友人と望月先輩が店のカウンターに座っていた。
まさか再会出来ると思っていなかったので凄く嬉しい。
この間の飲み会だって本当は行けることなら行きたかったのだ。
「よう、笠原」
「久しぶりだね、笠原君」
「久しぶりっすね、元気でしたか?」
さっきまで感じていた仕事の疲れなどぶっ飛ばし、望月先輩の隣の席に座れば、その隣に先輩は大人しく座っていた。
「俺も船守は変わらねぇが、お前は変わったな。何だこの目の下の隈と痩せ細った身体は」
無理やり顔を掴まれて目の下を親指でごしごしと下から上に擦られた。
昔から強引な所が多かったが、今も健在だ。
「痛いっす、望月先輩」
「痛くしてんだよ。その隣の野郎は有名になったからって調子乗ってチャラチャラしてすっぱ抜かれてるしよ」
「チャラチャラしてませーん。俺は真面目に仕事していただけです」
うりゃうりゃ、と両手で人の顔を潰そうとする望月先輩の手を外そうと頑張っている横で先輩は注文を済ませ、ビールを片手に飲み始めているのが見えた。
何気に俺の斜め前にもビールのジョッキが置かれているあたり、一緒に頼んでくれたようだ。
「嘘つけ、真面目にやってたら抜かれるわけねぇだろ」
「ホントですー。それにあの女優と一度も共演したこともないし、仕事でもプライベートでも会ったことないんだよ。連絡先だって知らねーし、俺」
「はぁ?そんなんでニュースになったってか?」
「そ。しかも、俺が笠原と再会した日時に俺はその子と密会していたことになってるから余計に意味が分からねぇ」
「抱き合ってたってのも、嘘だってか?」
「嘘嘘、会ってないのに抱き合えるわけないじゃん」
ポンポンと明るい空気のまま、あのニュースのことを聞ける望月先輩って凄い。
俺なんて1週間も先輩と過ごしてきて1度もこの話が出来なかったのに。
やっぱり望月先輩にも敵わないな。
先輩との生活は快適すぎて俺は楽で良いけど、先輩がどう思っているのか気になる所だ。
そういえば、先輩のニュースに関してだが、先輩の事務所は全否定しており、相手方の女優さんはノーコメントを貫いているらしい。
その情報は全て社内の女の子たちの話から得たもので、先輩からは何一つ聞いていない。
果たして聞いて良いものなのかどうかも分からず、今日も家に帰っては仕事をして床で寝て朝を迎えるのだと思っていたのだが。
「明日の夕食は外だから食べてくるなよ」
夕食を食べていたときに急にそんなことを言われ、何故だと警戒していれば、鼻で笑われた。
ご飯を作るのが大変になったとか、食料品が切れたとかそういうことなのかと思って尋ねようとするも、タイミングが掴めないまま翌日を迎えた。
そして、何時ものごとくヘロヘロになりながら帰ればその状態のまま先輩にとある小さな居酒屋に連れていかれた。
その店の扉には、本日貸し切りという札が下がっており、その扉を潜り抜ければそこには。
「え?!望月先輩にふなっち?!」
高校の頃の友人と望月先輩が店のカウンターに座っていた。
まさか再会出来ると思っていなかったので凄く嬉しい。
この間の飲み会だって本当は行けることなら行きたかったのだ。
「よう、笠原」
「久しぶりだね、笠原君」
「久しぶりっすね、元気でしたか?」
さっきまで感じていた仕事の疲れなどぶっ飛ばし、望月先輩の隣の席に座れば、その隣に先輩は大人しく座っていた。
「俺も船守は変わらねぇが、お前は変わったな。何だこの目の下の隈と痩せ細った身体は」
無理やり顔を掴まれて目の下を親指でごしごしと下から上に擦られた。
昔から強引な所が多かったが、今も健在だ。
「痛いっす、望月先輩」
「痛くしてんだよ。その隣の野郎は有名になったからって調子乗ってチャラチャラしてすっぱ抜かれてるしよ」
「チャラチャラしてませーん。俺は真面目に仕事していただけです」
うりゃうりゃ、と両手で人の顔を潰そうとする望月先輩の手を外そうと頑張っている横で先輩は注文を済ませ、ビールを片手に飲み始めているのが見えた。
何気に俺の斜め前にもビールのジョッキが置かれているあたり、一緒に頼んでくれたようだ。
「嘘つけ、真面目にやってたら抜かれるわけねぇだろ」
「ホントですー。それにあの女優と一度も共演したこともないし、仕事でもプライベートでも会ったことないんだよ。連絡先だって知らねーし、俺」
「はぁ?そんなんでニュースになったってか?」
「そ。しかも、俺が笠原と再会した日時に俺はその子と密会していたことになってるから余計に意味が分からねぇ」
「抱き合ってたってのも、嘘だってか?」
「嘘嘘、会ってないのに抱き合えるわけないじゃん」
ポンポンと明るい空気のまま、あのニュースのことを聞ける望月先輩って凄い。
俺なんて1週間も先輩と過ごしてきて1度もこの話が出来なかったのに。
やっぱり望月先輩にも敵わないな。
138
あなたにおすすめの小説
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
漫画みたいな恋がしたい!
mahiro
BL
僕の名前は杉本葵。少女漫画が大好きでクラスの女の子たちと一緒にその話をしたり、可愛い小物やメイク、洋服の話をするのが大好きな男の子だよ。
そんな僕の夢は少女漫画の主人公みたいな素敵な恋をすること!
そんな僕が高校の入学式を迎えたときに漫画に出てくるような男の子が登場して…。
ポメった幼馴染をモフる話
鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる