離したくない、離して欲しくない

mahiro

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その15

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早めに仕事を終え、自宅に帰ると普段電気がついていない家に電気がついていた。
ドアを開ければ、良い香りがする。
これはビーフシチューだろうか。


「お帰り、早かったじゃん」


台所の方に気を取られていたら、洗面所の方から先輩が出てきた。
久しぶりに『お帰り』なんて言われたな。
寮で暮らしていたときだってあまり言われなかった気がする。


「ただいま」


「夕飯も風呂も出来てるぞ」


「ありがとうございます。そしたらご飯食べてから風呂入ります」


「了解」


靴を脱いで部屋の奥へ行けば、部屋全体が綺麗に整頓され、シワシワのヨレヨレだったスーツが皺一つない状態でハンガーにかかっているのが見えた。
洗濯物は干した後に畳んだ形跡もあるし、先輩が有能すぎてホントにどうしよう。
一家に1人居てほしいくらいだわ。
いや、心臓に悪いからやっぱりそれはなしで。
先輩もこれじゃ疲れるだろうし。


「何百面相してんだよ、さっさと着替えろよ」


「すんません、ぼーっとしてました」


急かされるように部屋に入り部屋着に着替えれば、後ろから視線を感じて振り返る。
すると、眉間に皺を寄せた先輩が腕を組んで俺を見ていた。
何だ、なんでそんな顔で見てくるんだ?
俺可笑しな所ないよな?


「お前、痩せすぎ。昔もそんな太っていた訳じゃないが…なんというか、骨皮じゃん。しっかり食べて寝ろよ。身体壊すぞ?」


「いや、食べてますよ?これでも。睡眠も取れるときは取ってますし」


「足りないからこんな骨が浮き出てるんだよ」


確かに先輩の言うように肋骨辺りが少し、いやだいぶ痩せてるように見えるけど。


「そうなんすかね?」


「そうだよ。ほら、俺がいる時くらいいっぱい食べろよ。別に食費だせとか言わねぇから」


「あ、ありがとうございます」


そう言われてそういえば食費だとか調理器具だとかお金一切払ってないや、と気付いた。
俺ってまだまだ甘いなぁ、と気落ちしつつ先輩の作ったビーフシチューは上手かったし、風呂はいつもより綺麗で気分もすっきりした気がした。
こんな贅沢な生活してて良いのかね、と思いながら、今日も変わらず家でも仕事して床で寝た。
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