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12.ルーズヴェルト家の任務
しおりを挟むサラッとですが殺人の描写があります。ご注意ください。
剣術大会から数週間経過したが、僕は相変わらずの生活を送っている。
今日も父の命令を受けて、夜間の(無断)外出中である。
学園の敷地を出たところでクロムから資料を渡される。
どうやら今回は危険ドラッグの密輸人のアジトを壊滅させろということらしい。
この国はそこまで貧困の差が激しいわけではないが、王都内であっても少し外れたところに行けばそこには搾取する者と搾取される者がはびこる。
危険ドラッグも良い例で、きっかけはどうであれ一度手をつけたら抜け出せない。
ドラッグ依存者が仕事を継続できるわけもなく、次の分を購入するために窃盗やそれに伴う暴行が後をたたないのだ。
そんなことが広まれば王都内の治安もじわじわと悪くなるだろう。
こうした依頼はこれまでにも何回かあった。
今回はアジトの場所はわかっているようなのでやることは単純だ。
黒いローブを着て、フードを深く被る。
そうしていざ戦いの場へと乗り込んだ。
証拠を回収しつつ、関わっている連中を捕縛するが、再犯の可能性が高い者や例え国の牢に入れて更生しようとしても全く反省しないだろう者はその場で殺しの許可も得ている。
国の表の警備隊である騎士団では自己判断で殺すことは許されず、結局国としてはめんどくさい芽を早めに摘んで、なかったことにしてくれる方が楽なのだ。
すでに殺すことが決まっている者もいれば、その場で判断することもある。
神経のすり減る仕事だが、小さい頃から叩き込まれたことで感覚は他の人より麻痺しているだろう。
国の勅命には絶対服従。それが我が家の絶対であり、代々受け継がれた定めだ。
こうして国の平和を守っているのだと思えばやりがいがないとは言えない、かな。
無事任務を終えて返り血を浴びたローブをクロムに渡す。
「学園生活はどうですか?」
「うーん。相変わらず僕の噂はどこかから湧いてるし、近づいてくる人は少ないね。
でも最近はむしろそのおかげで平穏な生活を送れているような気さえするよ」
「そうした根も葉もない噂には心底腹が立ちますが、たしかに見方を変えればそれがノエル様を守ってるとも言えますね…」
「この容姿はどうも人目を集めちゃうみたいだからね」
自分の容姿にそれほど興味はないが、噂のおかげで静かな生活が送れているのだとしたらそれは悪くないかもしれないと最近開き直りつつある。
「ノエル様に無理やり言い寄ってくる輩がいるのではと心配しましたが今のところ大丈夫そうで安心です」
「学園内では相手をやっつけるわけにもいかないからね」
そう言ってウインクすると、クロムは声を上げて笑った。
「最近は図書館で面白い本も見つけたし、なんだかんだでそれなりにやってるよ」
エリスと王子の仲も進展が見られないようで、ここのところは少し心に余裕も出てきたかな。
家の任務は疲れることもあるが、こうしてクロムと定期的に話ができるのは良いリフレッシュになる。
「それではノエル様。おやすみなさいませ」
「クロムまたね。おやすみ」
学園の門に着き、クロムは一礼して音もなく消えて行った。
僕も気配を消して、誰にも気づかれぬよう慎重に自分の部屋まで戻る。
そんな日々を過ごしていたら、いつの間にか次のイベントがやってきた。
イベントと言っても詳細を知っているわけではなく、前世の姉が乗馬の授業でどれくらい仲を深められるか、というようなことを言っていたのできっと重要なポイントなのだろうくらいにしか分からない。
今のところ、見ている限りエリスの狙ってる攻略対象は第2王子だろう。
そこがどうなっていくのか気になるところだが僕は当初の予定通り2人にはなるべく関わらないように気をつけようと気を引き締めた。
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