断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ

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11.レオン・ローゼンタール

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「デートを申し込んだのに、なぜ王宮内なんだ…。
僕、この細腕ですごく頑張ったのに」

王宮内でのアフタヌーンティーを食しながら、エリスがずっとブツクサ言ってるのを何回目かのスルーで流す。

スケジュールの調整で少し日にちが空いたが、今日は剣術大会での褒美としてエリスが王宮内にきている。

「僕は、今は侯爵家ですがもともと孤児でしょう?
母親は貴族じゃないですが父親はコーネル侯爵なので高潔な血が流れているのに、ずっと小汚い孤児院で生活をさせられて、ほんとに最悪ですよね」

「そう、大変だったね」

このエピソードも学園にいるときから何回も聞かされている。
可哀想だね、と慰められるまで続くのだ。
周りに他に誰かがいればそいつがその役を買ってくれるが、今日は残念ながら2人きりだ。
使い慣れた作り笑顔を貼り付け、適当に流すことにした。

そもそも侯爵家という身分の高い地位にいる人間が、家の内情それもあまり知らされたくない部分を吹聴するなどありえない。

コーネル侯爵はこいつのことを猫可愛がりしているようで、だいぶ甘いと聞いたが常識くらいは身につけさせてほしかったものだ。

「レオン王子も王家の厳しい教育を受けて大変でしたね。
誰にも心を開けなくて辛かったでしょう。でも溜め込むのはダメですよ。僕が全部受け入れてあげるから」

極めつけは勝手にこちらを可哀想認定してくることだ。

会話をするのもバカらしくて、早くこの時間が終わることだけを願う。


それよりも俺の頭の中を占めているのはあいつだ。

あの剣術大会以降、俺はどうしてもあの悲しそうな笑顔を何度も思い出してしまう。

そしてあの言葉。

小さな声だったが、「ほんとに思い通りに進めば楽なんでしょうね」とこぼして、泣きそうな顔をしていたのだ。

その言葉の真意は何だったのだろう。

もっとノエルのことを知りたいと思うのだが、彼について調査を依頼しているのに報告はまだない。

優秀な人材に依頼したからすぐにわかると思っていたが、これだけ時間がかかるというのは報告すべき事例が多すぎて…ということなのだろうか。


だがどうしてもやはり噂とはかけ離れているように思う。

実際に、学園内で庶民がイジメられていたのに遭遇した際、さりげなく助けていたのを見た事があった。

指摘していると気づかせないくらいにさりげなく丸く収めていて舌を巻いたものだ。

その庶民はスタイルの良い体格で勉学も申し分ないことから、貴族連中にやっかみを受けていたのだろう。

そしておそらく自分が助けられたと気づいたのだろう。
しばらくノエルの周りを付き纏っていたが相手にされていなかった。

そいつがノエルの近くにいることが無性にムカムカしたので俺が釘を刺してノエルの周りをうろつくのをやめさせたのだ。

付き纏うで言えばエリス・コーネルもそうだ。

相変わらず距離が近いし、先日の剣術大会では優勝の褒美として俺とのデートを申し込んできた。

向こうの気持ちに応える気はないため、場所はこちらで指定させてもらったが。


この相手がノエルだったら…そう思わずにはいられなかった。

それからもしばらく、ノエルの悲しそうな顔が頭から離れなかった。
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