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13.乗馬イベント
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この授業は、乗馬の練習を兼ねて貴族と将来騎士を希望する者だけが受ける課外授業だ。
自分の馬がある者は連れてきて、より馬との信頼関係を築くコツを教わる。
貴族は乗り方までの教育を受けている者がほとんどだが、騎士希望の平民は慣れてないものが多い。
そのため未経験者は馬に乗って少し離れた馬場まで歩いていくことを課題とし、慣れている者は馬場で走る練習をする。
のだが。
「僕、まだ馬には慣れてなくて…
父からは移動も馬車で大丈夫だからと言われていて。1人で乗るの怖いんです」
不安そうな顔をしたエリスが王子に言い寄っている。
乗馬ということもあって服装はぴったりしたキュロットと膝下までのブーツ、襟付きのトップスが小柄な彼のシルエットを引き出していて似合っている。
僕も同じような格好だが、王子は騎士のような服装で、それはそれで体格のいい彼の魅力を引き出しているようなかんじだ。
「レオン殿下のお馬さんに一緒に乗らせてくれませんか?」
なるほど、これが親密度を上げる方法か…
僕は自分の愛馬をなでながら、聞こえてくる会話にひとり納得していた。
「乗れない者は乗れるようにするための授業だろう。
俺も相乗りには慣れていないので万が一にも怪我があってはいけない。
最初の基礎授業を受けて練習するのが良いんじゃないかな?」
(…お?)
ここで王子が笑顔で爽やかに断るということは、やはり2人の親密度にはあまり進展がないのかもしれない。
結局エリスは危なげながら自分1人で馬に乗っていた。
王子は終始エリスとは少し離れた位置にいたが、エリスには教師が付いており問題なさそうだ。
思い通りに行かなかったのが悔しかったのか、エリスは顔を歪ませていたが。
「昼休憩にするから各自自由にしていいぞー。
馬はちゃんと厩舎に入れておくこと!」
馬場に着いたところで教師から声がかかる。
それぞれ馬を入れた後は、支給される昼食を受け取って思い思いの場所でご飯を食べる。
何人か他の学生とすれ違う時に、先ほどからいつもよりも視線を感じる気がする。
(「エリスもかわいいかんじだけど、ルーズヴェルトの乗馬スタイルも悪くないな」)
(「いや俺はむしろ見るだけだったらルーズヴェルトの方が…
細い腰としなやかな足がたまらないよな」)
(「小さい顔とその美貌がまた一段と際立つかんじもな」)
(…?)
こちらをチラチラと見ながら何やら会話しているが何を言ってるかまではわからない。
今更気にする必要もないか、と開き直りお昼ご飯を食べ始める。
僕の愛馬はサヴィという名前だ。
乗馬はルーズヴェルト家の教育の一環として叩き込まれたが、サヴィは一度も僕を落としたことも落とそうとしたこともなく、僕に懐いてくれている。
利口で、こちらの意図を汲んでくれるような動きをするので今日の授業でこの後走ることになっても問題ないだろう。
学園にいる間はあまり構うことができなかったので、久しぶりに会って嬉しそうだったのを思い出す。
サヴィともっと触れ合っておこうと思い、昼ごはんを早々に食べ終え厩舎へ向かった。
「サヴィ、元気そうで良かったよ」
他に誰もいないのを良いことに、サヴィに話しかける。
僕が近づくと擦り寄ってくるのが可愛くて、そのこげ茶色のしっかりした体躯をなでる。
ふと背中を何かで押されたような感覚がして振り返ると、サヴィの隣にいた漆黒の馬が鼻先をこちらに押し付けていた。
「君は…」
他の馬よりも一回り大きく、筋骨隆々という言葉が当てはまるこの立派な馬は、たしかレオン王子の馬だ。
自分のことも撫でろ、というように僕に擦り寄ってくる。
こんなにかっこいい馬がそんな風にしてくるのが可愛い。
「おまえも主人に似て凛々しく、カッコいいな。」
目を細めてそう伝えると、なんとなく得意げな顔をしたような気がしておかしくなった。
そして触れと言うように頭を押しつけてくる。
「触ってもいいのか?ふふ、少し甘えたなところは似てないか」
優しく撫でてあげると、気持ちよさそうにする。
サヴィも負けじと頭を押し付けてくるので両手で代わる代わる撫でつつ、アイコンタクトも忘れない。
(ああ、幸せだなぁ…)
僕はこういうささやかな幸せがあればそれで十分なのだ。
この幸せに浸っていると、不意に未来への不安が押し寄せてくる。
自分の馬がある者は連れてきて、より馬との信頼関係を築くコツを教わる。
貴族は乗り方までの教育を受けている者がほとんどだが、騎士希望の平民は慣れてないものが多い。
そのため未経験者は馬に乗って少し離れた馬場まで歩いていくことを課題とし、慣れている者は馬場で走る練習をする。
のだが。
「僕、まだ馬には慣れてなくて…
父からは移動も馬車で大丈夫だからと言われていて。1人で乗るの怖いんです」
不安そうな顔をしたエリスが王子に言い寄っている。
乗馬ということもあって服装はぴったりしたキュロットと膝下までのブーツ、襟付きのトップスが小柄な彼のシルエットを引き出していて似合っている。
僕も同じような格好だが、王子は騎士のような服装で、それはそれで体格のいい彼の魅力を引き出しているようなかんじだ。
「レオン殿下のお馬さんに一緒に乗らせてくれませんか?」
なるほど、これが親密度を上げる方法か…
僕は自分の愛馬をなでながら、聞こえてくる会話にひとり納得していた。
「乗れない者は乗れるようにするための授業だろう。
俺も相乗りには慣れていないので万が一にも怪我があってはいけない。
最初の基礎授業を受けて練習するのが良いんじゃないかな?」
(…お?)
ここで王子が笑顔で爽やかに断るということは、やはり2人の親密度にはあまり進展がないのかもしれない。
結局エリスは危なげながら自分1人で馬に乗っていた。
王子は終始エリスとは少し離れた位置にいたが、エリスには教師が付いており問題なさそうだ。
思い通りに行かなかったのが悔しかったのか、エリスは顔を歪ませていたが。
「昼休憩にするから各自自由にしていいぞー。
馬はちゃんと厩舎に入れておくこと!」
馬場に着いたところで教師から声がかかる。
それぞれ馬を入れた後は、支給される昼食を受け取って思い思いの場所でご飯を食べる。
何人か他の学生とすれ違う時に、先ほどからいつもよりも視線を感じる気がする。
(「エリスもかわいいかんじだけど、ルーズヴェルトの乗馬スタイルも悪くないな」)
(「いや俺はむしろ見るだけだったらルーズヴェルトの方が…
細い腰としなやかな足がたまらないよな」)
(「小さい顔とその美貌がまた一段と際立つかんじもな」)
(…?)
こちらをチラチラと見ながら何やら会話しているが何を言ってるかまではわからない。
今更気にする必要もないか、と開き直りお昼ご飯を食べ始める。
僕の愛馬はサヴィという名前だ。
乗馬はルーズヴェルト家の教育の一環として叩き込まれたが、サヴィは一度も僕を落としたことも落とそうとしたこともなく、僕に懐いてくれている。
利口で、こちらの意図を汲んでくれるような動きをするので今日の授業でこの後走ることになっても問題ないだろう。
学園にいる間はあまり構うことができなかったので、久しぶりに会って嬉しそうだったのを思い出す。
サヴィともっと触れ合っておこうと思い、昼ごはんを早々に食べ終え厩舎へ向かった。
「サヴィ、元気そうで良かったよ」
他に誰もいないのを良いことに、サヴィに話しかける。
僕が近づくと擦り寄ってくるのが可愛くて、そのこげ茶色のしっかりした体躯をなでる。
ふと背中を何かで押されたような感覚がして振り返ると、サヴィの隣にいた漆黒の馬が鼻先をこちらに押し付けていた。
「君は…」
他の馬よりも一回り大きく、筋骨隆々という言葉が当てはまるこの立派な馬は、たしかレオン王子の馬だ。
自分のことも撫でろ、というように僕に擦り寄ってくる。
こんなにかっこいい馬がそんな風にしてくるのが可愛い。
「おまえも主人に似て凛々しく、カッコいいな。」
目を細めてそう伝えると、なんとなく得意げな顔をしたような気がしておかしくなった。
そして触れと言うように頭を押しつけてくる。
「触ってもいいのか?ふふ、少し甘えたなところは似てないか」
優しく撫でてあげると、気持ちよさそうにする。
サヴィも負けじと頭を押し付けてくるので両手で代わる代わる撫でつつ、アイコンタクトも忘れない。
(ああ、幸せだなぁ…)
僕はこういうささやかな幸せがあればそれで十分なのだ。
この幸せに浸っていると、不意に未来への不安が押し寄せてくる。
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