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第二部 第三章 ブラックミルズ最大の娯楽
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朝食を終えて、装備を整えると、ダンジョン販売店用の物資を受け取りに商店街の方へ足を向けていた。
「よう! グレイズ御一行様! 今日も物資の方はたんまり用意したから頼むぞ! ファーマちゃんにも特別なポーションを――ぶふぅう」
ポーション屋の旦那が嫁に平手を喰らっていた。
「あんた、あのポーションはちょっと効きすぎるから、ダメって言っただろ! もし、ファーマちゃんに後遺症が出たらどうすんだい!」
ポーション屋、危ないのはいかんぞ。危ないのはな。ファーマは素直な子だから、貰ったものは信用して飲んじまうからな。
というか、そういうのはやめなさい。商店街の連中も節操なさすぎだろ。
「グレイズさん、ファーマはポーション貰った方がいい?」
「ダメだ。絶対にポーション屋からポーションあげるって言われてもダメだぞ。約束してくれ」
「はーい! じゃあ、グレイズさんに確認取ってからにするねー」
あー、そういう意味ではないんだがな。まぁ、一応それなら止めれるからいいが。ポーション屋の嫁の良心に期待をすることにしよう。
「あちゃー、ポーション屋も馬鹿だな。カーラちゃん、うちの特製蒸留酒はいつでも渡せるように仕入れたからな。飲めば一発でどんな奴も記憶が吹っ飛ぶアルコール度数だ! これでバッチリ既成事実を――ごふぅう」
酒場の親父が、娘にぶん殴られていた。
「おとうさん、往来で恥ずかしいでしょ。カーラお姉様はそんなことしないから!」
「グレイズ、お酒もらっていいか?」
カーラが悪戯っぽく笑いながら、聞いてきた。
「ダメだから。貰ったらいかんぞ。カーラは頭がいいから分かるよね?」
「ちょっと、グレイズの言ってる意味。分からない。カーラは言葉不自由」
俺を茶化すようにカーラがおどけているが、こっちが言った意味は通じているはずなので、信用はしている。
カーラは意外と酒に強いので、案外自分で飲んで楽しんでしまうかもしれんしな。
「カーラちゃん、ダメよ。グレイズさんを酔い潰す前に、うちのアウリースちゃんの悩殺下着姿を見てもらわないといけないんだからねー」
「あ、ちょっと。おかみさん、その話は無理って言いましたよね。あんなのを私が着けるなんて……」
下着屋のおかみが騒がしさに気付き店から顔を出していて、往来に向かってトンデモナイ発言を発していた。
「アウリース、俺はお前を信頼しているからな。頼むぞ」
「え? は、はい。精いっぱい頑張らさせてもらいます!」
「えっ!? 頑張るの?」
思わずドキリとしてしまう。違う、違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。アウリース。
俺の言葉を違う意味に取ったアウリースに焦ってしまった。女性として魅力的すぎるので自重して頂けると本当に助かるのだ。
というか、下着屋のおかみも何を考えているんだ。まったく。
「いよー! グレイズ! そういえば、いい宝石が仕入れられてな。この前約束してた婚約指輪は製作していいんだよなー。メリーのが一番豪勢にって話だったが」
更に面倒な人が出てきた。細工屋のおやっさんだ。
しかも、頼んだ覚えのない婚約指輪の話をしている。
「グ、グレイズさん。そんな、婚約指輪はみんなと一緒でいいわよ。豪勢なのは、今の私には似合わないし。それにお金もまだ返し切れてないし」
「あーすまないな。メリー、婚約指輪の件はおやっさんが耄碌しているようだ。まだ、頼んでいない」
「え? そ、そうなの。で、でも『まだ』ってことは……」
メリーが期待に満ちた目でこちらを見上げている。いずれ、答えは出さなければならないとは思っているが、今はまだ冒険者としての最高峰であるSランク冒険者になってもらう気持ちの方が強い。
俺もこの歳まで独身であったこともあり、結婚に関しては特に慎重になっているとは思っている。今の関係がガラリと変わるかもと思うと、正直怖くもある。
だが、彼女たちの運命も関わってくると言われているし、結論を出さないわけにもいかないことは承知しているつもりだ。
ただ、ちょっとだけ心を整理する時間が欲しい。
「誰が耄碌爺だ! グレイズ! まだ、わしはぼけちゃおらんぞ!」
細工屋のおやっさんが湯気を出しそうな勢いで怒っている。
いや、完全にボケてるでしょ。俺、婚約指輪なんて頼んだ覚え無いし。頼む時は堂々と頼むつもりだしな。
「ひぇ、ひぇ、ひぇ。騒がしのう。グレイズ。そうじゃ、例の新しく雇ったセーラって子だけどねぇ。あれもいい子だねぇ。ひぇ、ひぇ、ひぇ」
騒ぎが大きくなって、例の賭け事の胴元なのが発覚したおばばまで出てきていた。
「はぁ!? セーラはただの従業員だと言ったはずだが」
「え!? あ、はい。そうだよね。そうだった。グレイズさんとあたしはそういう関係だったよね。あたし、勘違いしてたかも。うん、いいの。気にしないで」
おばばの発した言葉に動揺して声を思わず荒げてしまっていたが、その言葉をダンジョンに潜る準備をして待っていたセーラとおっさんずたちが聞いていたようだ。
「グレイズっう! うちの娘に手を出したのか! オレはまだお前にお義父さんなんて呼ばせんぞ!」
父親のグレイが娘の様子を勘違いしたようで激怒していた。
ちょっと待て、カオスすぎるぞ。セーラとは別にそういう関係ではないはずだが。
「マジかぁ、俺はセーラに一点張りなんだ。これでセーラがグレイズの玉の輿に乗れば、俺らも億万長者なんだがなぁ。なぁ、デイビス」
「全くだな。モロー。これは作戦会議が必要かもしれんぞ。あれは難攻不落の要塞みたいな男だ。並大抵のテクニックでは無理そうだぞ」
「ファーマちゃんたちから、グレイズさんの話は聞いてたけど、ここまでとは思ってなかった。モローさん、デイビスさん、指南をよろしくね」
「ちょ、ちょっと待て! セーラ。まだ、嫁に行くのは早いと父さんは思うんだ。そうだろ、グレイズ。そうだと言ってくれ」
同僚のモローとデイビスが、娘を俺の嫁にするために動いていると知ったグレイが涙目でこちらを見ている。
すでにモローとデイビスはおばばの賭けに参加しているようだ。しかも、セーラまで候補に挙がっているようである。
「セーラ、一緒にグレイズを陥落させる。頑張ろう」
「セーラさん、ファーマも一緒に頑張るー!」
「そうですよ。諦めたら、そこで試合終了なんですよ。セーラさん」
「そうね。グレイズさんを落とす同志として共に頑張りましょう」
セーラも女子会に参加しているのは知っていたが、そのような話がされていたとは露ほどに知らずにいた。
あれは、そういう集まりなのかと理解することができた。
その混乱の様子を見ていたおばばはニンマリとした顔をしていた。
「ひぇ、ひぇ、ひぇ。モテモテじゃのう。グレイズ、おばばももう少し若ければ逃しはしないのだがのぅ」
「おばば、混乱が拡がっているようにしか見えないんだが。そろそろ、例の賭け事はご破算にするべきだと俺は進言するぞ」
「ブラックミルズ最大の娯楽をグレイズは取り上げるかい?」
俺の結婚がブラックミルズ最大の娯楽とか、他にこの街には娯楽はないのか……。
『実は、内緒って言われてますけど、アクセルリオン神も参加したそうにしてますよ』
ハクが俺の呟きに反応して脳内に話しかけてきた。
というか、神様まで参加させるんじゃないっての。
『えー、でも神様に祝福された結婚ですよー。世界最高レベルの祝福ですよ』
うっさいとアクセルリオン神に言っとけ。
『神様の祝福を蹴るなんて、なんという人なんですか。グレイズ殿なんで、そこまで結婚に対して頑ななんですか?』
性分だとだけ言っておく。この話はここまでだ。
素知らぬ顔で地面に伏せていたハクとの会話を終えると、混乱する商店街の連中と『おっさんず』を余所に、ダンジョン販売店用の物資を担いで、冒険者ギルドへと足を向けることにした。
「さて、おふざけはここまでだ。これから先はお仕事モードで頼むぞ!」
「承知、グレイズ、仕事キッチリしないと落とせないの知ってる」
「ファーマ、頑張りまーす!」
「はい、お仕事モードにしますね」
「さて、今日もいっぱい稼ぎますかー」
「お父さん、仕事の時間よ。いつまでも遊んでたら、クビになっちゃうわよ」
こうして、俺たちは賑やかしい商店街を後にして、本日の探索先を決めるため、冒険者ギルドに向かうことにした。
「よう! グレイズ御一行様! 今日も物資の方はたんまり用意したから頼むぞ! ファーマちゃんにも特別なポーションを――ぶふぅう」
ポーション屋の旦那が嫁に平手を喰らっていた。
「あんた、あのポーションはちょっと効きすぎるから、ダメって言っただろ! もし、ファーマちゃんに後遺症が出たらどうすんだい!」
ポーション屋、危ないのはいかんぞ。危ないのはな。ファーマは素直な子だから、貰ったものは信用して飲んじまうからな。
というか、そういうのはやめなさい。商店街の連中も節操なさすぎだろ。
「グレイズさん、ファーマはポーション貰った方がいい?」
「ダメだ。絶対にポーション屋からポーションあげるって言われてもダメだぞ。約束してくれ」
「はーい! じゃあ、グレイズさんに確認取ってからにするねー」
あー、そういう意味ではないんだがな。まぁ、一応それなら止めれるからいいが。ポーション屋の嫁の良心に期待をすることにしよう。
「あちゃー、ポーション屋も馬鹿だな。カーラちゃん、うちの特製蒸留酒はいつでも渡せるように仕入れたからな。飲めば一発でどんな奴も記憶が吹っ飛ぶアルコール度数だ! これでバッチリ既成事実を――ごふぅう」
酒場の親父が、娘にぶん殴られていた。
「おとうさん、往来で恥ずかしいでしょ。カーラお姉様はそんなことしないから!」
「グレイズ、お酒もらっていいか?」
カーラが悪戯っぽく笑いながら、聞いてきた。
「ダメだから。貰ったらいかんぞ。カーラは頭がいいから分かるよね?」
「ちょっと、グレイズの言ってる意味。分からない。カーラは言葉不自由」
俺を茶化すようにカーラがおどけているが、こっちが言った意味は通じているはずなので、信用はしている。
カーラは意外と酒に強いので、案外自分で飲んで楽しんでしまうかもしれんしな。
「カーラちゃん、ダメよ。グレイズさんを酔い潰す前に、うちのアウリースちゃんの悩殺下着姿を見てもらわないといけないんだからねー」
「あ、ちょっと。おかみさん、その話は無理って言いましたよね。あんなのを私が着けるなんて……」
下着屋のおかみが騒がしさに気付き店から顔を出していて、往来に向かってトンデモナイ発言を発していた。
「アウリース、俺はお前を信頼しているからな。頼むぞ」
「え? は、はい。精いっぱい頑張らさせてもらいます!」
「えっ!? 頑張るの?」
思わずドキリとしてしまう。違う、違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。アウリース。
俺の言葉を違う意味に取ったアウリースに焦ってしまった。女性として魅力的すぎるので自重して頂けると本当に助かるのだ。
というか、下着屋のおかみも何を考えているんだ。まったく。
「いよー! グレイズ! そういえば、いい宝石が仕入れられてな。この前約束してた婚約指輪は製作していいんだよなー。メリーのが一番豪勢にって話だったが」
更に面倒な人が出てきた。細工屋のおやっさんだ。
しかも、頼んだ覚えのない婚約指輪の話をしている。
「グ、グレイズさん。そんな、婚約指輪はみんなと一緒でいいわよ。豪勢なのは、今の私には似合わないし。それにお金もまだ返し切れてないし」
「あーすまないな。メリー、婚約指輪の件はおやっさんが耄碌しているようだ。まだ、頼んでいない」
「え? そ、そうなの。で、でも『まだ』ってことは……」
メリーが期待に満ちた目でこちらを見上げている。いずれ、答えは出さなければならないとは思っているが、今はまだ冒険者としての最高峰であるSランク冒険者になってもらう気持ちの方が強い。
俺もこの歳まで独身であったこともあり、結婚に関しては特に慎重になっているとは思っている。今の関係がガラリと変わるかもと思うと、正直怖くもある。
だが、彼女たちの運命も関わってくると言われているし、結論を出さないわけにもいかないことは承知しているつもりだ。
ただ、ちょっとだけ心を整理する時間が欲しい。
「誰が耄碌爺だ! グレイズ! まだ、わしはぼけちゃおらんぞ!」
細工屋のおやっさんが湯気を出しそうな勢いで怒っている。
いや、完全にボケてるでしょ。俺、婚約指輪なんて頼んだ覚え無いし。頼む時は堂々と頼むつもりだしな。
「ひぇ、ひぇ、ひぇ。騒がしのう。グレイズ。そうじゃ、例の新しく雇ったセーラって子だけどねぇ。あれもいい子だねぇ。ひぇ、ひぇ、ひぇ」
騒ぎが大きくなって、例の賭け事の胴元なのが発覚したおばばまで出てきていた。
「はぁ!? セーラはただの従業員だと言ったはずだが」
「え!? あ、はい。そうだよね。そうだった。グレイズさんとあたしはそういう関係だったよね。あたし、勘違いしてたかも。うん、いいの。気にしないで」
おばばの発した言葉に動揺して声を思わず荒げてしまっていたが、その言葉をダンジョンに潜る準備をして待っていたセーラとおっさんずたちが聞いていたようだ。
「グレイズっう! うちの娘に手を出したのか! オレはまだお前にお義父さんなんて呼ばせんぞ!」
父親のグレイが娘の様子を勘違いしたようで激怒していた。
ちょっと待て、カオスすぎるぞ。セーラとは別にそういう関係ではないはずだが。
「マジかぁ、俺はセーラに一点張りなんだ。これでセーラがグレイズの玉の輿に乗れば、俺らも億万長者なんだがなぁ。なぁ、デイビス」
「全くだな。モロー。これは作戦会議が必要かもしれんぞ。あれは難攻不落の要塞みたいな男だ。並大抵のテクニックでは無理そうだぞ」
「ファーマちゃんたちから、グレイズさんの話は聞いてたけど、ここまでとは思ってなかった。モローさん、デイビスさん、指南をよろしくね」
「ちょ、ちょっと待て! セーラ。まだ、嫁に行くのは早いと父さんは思うんだ。そうだろ、グレイズ。そうだと言ってくれ」
同僚のモローとデイビスが、娘を俺の嫁にするために動いていると知ったグレイが涙目でこちらを見ている。
すでにモローとデイビスはおばばの賭けに参加しているようだ。しかも、セーラまで候補に挙がっているようである。
「セーラ、一緒にグレイズを陥落させる。頑張ろう」
「セーラさん、ファーマも一緒に頑張るー!」
「そうですよ。諦めたら、そこで試合終了なんですよ。セーラさん」
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セーラも女子会に参加しているのは知っていたが、そのような話がされていたとは露ほどに知らずにいた。
あれは、そういう集まりなのかと理解することができた。
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「ひぇ、ひぇ、ひぇ。モテモテじゃのう。グレイズ、おばばももう少し若ければ逃しはしないのだがのぅ」
「おばば、混乱が拡がっているようにしか見えないんだが。そろそろ、例の賭け事はご破算にするべきだと俺は進言するぞ」
「ブラックミルズ最大の娯楽をグレイズは取り上げるかい?」
俺の結婚がブラックミルズ最大の娯楽とか、他にこの街には娯楽はないのか……。
『実は、内緒って言われてますけど、アクセルリオン神も参加したそうにしてますよ』
ハクが俺の呟きに反応して脳内に話しかけてきた。
というか、神様まで参加させるんじゃないっての。
『えー、でも神様に祝福された結婚ですよー。世界最高レベルの祝福ですよ』
うっさいとアクセルリオン神に言っとけ。
『神様の祝福を蹴るなんて、なんという人なんですか。グレイズ殿なんで、そこまで結婚に対して頑ななんですか?』
性分だとだけ言っておく。この話はここまでだ。
素知らぬ顔で地面に伏せていたハクとの会話を終えると、混乱する商店街の連中と『おっさんず』を余所に、ダンジョン販売店用の物資を担いで、冒険者ギルドへと足を向けることにした。
「さて、おふざけはここまでだ。これから先はお仕事モードで頼むぞ!」
「承知、グレイズ、仕事キッチリしないと落とせないの知ってる」
「ファーマ、頑張りまーす!」
「はい、お仕事モードにしますね」
「さて、今日もいっぱい稼ぎますかー」
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