おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第一一章 脱出行

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「いや、だからさ! あの時の爆風はグレイズさんが魔法を使って、魔物を一掃したから起きたんだって! いやー、マジでみんなにもあの場所を見せたかったわー。庭園の半分が吹き飛んでたんだぜー。マジ、オレ尊敬するわー。『商人』に転職すればアレ使えるんっすか? グレイズさん」

「いや、使えない。というか、俺自体が特別製だからな。マネするんじゃないぞ。こんな力、あんまりいいことを招き寄せないからな。地道に鍛え上げたお前らの方を俺は尊敬しているさ」

 死の庭園の魔物たちを火球ファイヤーボール一発により一掃したことで、一番の懸念だった第二二階層の不死王の宮殿ノーライフキングパレスを脱出し、若干の軽傷者を出しながらも第二〇階層まで順調に魔物を倒しつつ上がることに成功していた。

 ただ、帰還のスピードは大勢連れて歩いているのと、安全確保のため、普段よりも遅く、体感時間ではすでに二日くらいが経過している感じしていた。

 冒険者たちの顔にも疲労が窺えたため、中層階のラストボスであるゴブリンキングの護る門の突破を控え、一旦休養をとることになった。

 そして今は周囲に歩哨を立てて、それ以外の者は食事と休憩を取っている時間である。

「グレイズさんはとーーーーーーーっても強いんだ。ファーマは前から知っていたんだからねー。ファーマはそんなグレイズさんよりもきっと強くなるんだ。そうしないとグレイズさんを戦わせることになっちゃうんだから」

「そう、ファーマの言う通り、私ももっと強くなる。グレイズが魔法使わなくて済むようにしないといけない」

「カーラさんの言う通りですね。私たちの存在意義が試されています。もっと精進せねば。カーラさん、地上に戻ったらおばば様のところで魔法書を探しましょう」

「アウリース、それ妙案。グレイズ、使えない魔法を私たちが使う。良いアイデア」

「カーラ姐さんもファーマちゃんもアウリースさんも、グレイズさんって切り札を温存させようとしてるところがスゲエ……。オレだったら頼っちまうぜ」

 ファーマやカーラ、アウリースたちは、俺にお仕事をさせないように更なるレベルアップを目指していることを表明し、周りの冒険者たちから尊敬の視線を浴びていた。

 強くなることに貪欲な三人ではあるが、仲間を助けパーティーを強くするためにという点を重視しているのだ。

 そういった点で言えば、駆け出しや中堅なりたての冒険者たちのお手本になってもらえるとありがたい。

 パーティーを組む仲間同士助け合い、不足を補いあって、ダンジョンに挑めば、個人の力で潜るより更に深い場所を目指せるようになるはずであるからだ。

「うちの追放者アウトキャストは多分、ブラックミルズで一番結束の固いパーティーだと俺は断言しとくぞ」

 効率を重視したパーティー編成から、助け合って共に成長するパーティーが一つでも増えれば、パーティーを追放される者という悲しい存在が減ってくれると信じている。

「マジかー。嫁とイチャイチャパーティーとか言ってたやつ出て来いよー。イチャイチャじゃなくて、ノロケパーティーだったわ」

 ジェネシスが若い冒険者たちの笑いを誘うように大げさに顔を項垂れさせていた。

 周囲にいた冒険者たちがドッと笑い声が上がる。

 あいつが居るおかげで、この脱出行も絶望に取り込まれることなく、みんなが希望を持って行軍できているな。

 周囲を明るくする妙な魅力を持った駆け出しの冒険者であるジェネシスに少しばかり感謝を感じていた。

 ベテランの中堅冒険者でも怯え竦む深層階を無事に走り抜けられそうなのは、ジェネシスの明るい声やひょうきんなしぐさによる笑いを絶やさなかったことが成功の要因の多くを占めているのだ。

「うるせー。ジェネシス。『まだ』嫁じゃないと言っているだろうが」

「『まだ』ってことはそのうち正式な嫁ですか?」

「うるせー。ノーコメントだ!」

 危うく突っ込まれそうな感じだったので、明後日の方向に視線を飛ばして、誤魔化すことにした。

 ただ、メラニアの件で赤い糸を結んだ『天啓子』が俺から離れると、とんでもないほど巨大な不幸に巻き込まれることは理解したので、事実上、俺の仲間兼パートナーであることは認める。

『あー、アクセルリオン神からご伝言で、セーラちゃんとアルマちゃんも面倒みてね。だそうですよー。二人は『天啓子』ではないですけど、グレイズさんと関わって運命変えられちゃった子らしいですから』

 ハクから送られた思念に思わず苦笑いをする。

 そんなこったろうと思ったさ。アクセルリオン神は何を考えているんだか……。

『グレイズ殿はかなりのお気に入りですからねぇ。色々と特典てんこ盛りにしているのかと』

 ありがた迷惑な神様ってそのうち言われるぞ。まったく。

 アクセルリオン神からの厚遇は有り難いが、商人である以上、『タダより怖い物はない』ってのが、俺の身体に染み付いているので、厚遇の裏があるのではと勘繰ってしまう。

 それに、俺に関わらなければメラニアもきっと――

 チラリとセーラたちと話しているメラニアに視線を送る。

「それにしても、グレイズ様は本当にお強い人だったんですね……。わたくし、そのような方にご迷惑ばかりおかけして……。なんとしても恩を返させてもらわねば」

「メラニアさん、それはあたしも同じだよ。回復魔法アレルギーのあるあたしを雇ってくれたグレイズさんには感謝の言葉しかないんで……。あたしにできることは何でもするつもり」

「セーラ様もグレイズ様にお命を助けて頂いたのですか?」

「ええ、回復魔法アレルギー持ちの冒険者として野垂れ死ぬか、借金で首をくくるかって瀬戸際を救ってもらっているから……。だから、今回のメラニアさんの話は他人事とは思えなくて」

「そうね。私も店が借金まみれになって、潰れた時に肩代わりしてもらって、命まで助けてもらったし、それにグレイズさんには商売の幅を広げてもらったからね。昔からいい人だったけど、グレイズさんの人助けは趣味みたいな物だし、遠慮なく甘えてもしっかりと受け止めてくれるから安心していいわ。その点は私が太鼓判押してあげる」

 セーラやメリーは今回の騒動の引き金になったことを悔いているメラニアを励ましていた。

 大元をたどれば、メラニアと俺が『天啓子』の赤い糸で繋がっていたことに起因するため、今回の転移事件の責任の所在はすべて俺だ。

 これは誤魔化してはいけないことなので、真摯に受け止め、死人を出すことなく皆を地上にへと連れ帰ると心に誓っていた。

「グレイズさんはやっぱスゲエな……。なんで、今までその力を隠してたんすか。あ、もしかして、『うあぁ、コイツ、パネェ力持ってて、きっしょ!』とか言われると思ってたんすか? あ、顔色変わった。マジで! んなわけないっしょ! あれだけの力を持つ人を普通の人は『英雄』って呼ぶんすよ。 すぐれた才知、実力を持ち、非凡な事をなしとげる人。グレイズさんはその資格を持ってる人っすよ。この脱出行を無事に終わらせたら確実に『英雄』っすよ。これは、今回飛ばされたみんなが全員そう思うはずっす。だから、地上に戻ったら自信もって胸張って下さいよ。『商人兼英雄』のグレイズさん!」

 ジェネシスが俺が力を隠していた理由をズバリと言い当てて、思わずドキリとして顔に出してしまったが、不思議と彼に『英雄』の資格があると言われると、こんな俺でもいいのかと思えてきた。

「うるせー。機会がなかっただけだ。機会がな」

「『英雄』は危機にこそ才覚を現すってことっすか。さすが、グレイズさん。かっこいいっす!」

「さぁ、無駄話はここまでだ。俺は歩哨に行くからな。明日はゴブリンキングの待ち受ける扉に向かうから、しっかりと休め」

 一向に休息を取ろうとしない冒険者たちを半ば無理矢理に解散させ、毛布を各人に押し付けると、俺は歩哨に立ってくれていた『おっさんず』たちと交代した。
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