おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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日常編 メラニアの召喚術

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「ふぅ、危うくグレイズに殺されかけたが、本題に入ろうか。メラニア嬢の召喚術についてじゃったな」

 おばばは俺の回復魔法で腰が良くなったようで、ベッドに座り直すと、メラニアに近づくように手招きしていた。

「この前の時は、召喚術に関して簡単に教えただけだったからのぅ。今日はきちんと旦那の残した書物で調べておいたぞ。アレは召喚術に魅入られた男だったからのぅ。仕事をしている以外の時間は召喚術の研究をしておったわい」

 おばばと旦那は元々冒険者をしていた二人で、若くして大金を稼ぎ冒険者を引退した後、潜っていたブラックミルズの街で魔法書店を開いて繁盛させていたのだ。

 すでに亡くなっているが、召喚術士としてはかなり腕を誇っていた人で、運B+まで能力を育てたことで使役していた魔物もかなりの強さだったらしい。

 ただ、俺がガキの時代にはもう引退して一〇年は経っていて、召喚術は見せてくれなかったが、酒が入るといつも自慢をしていたことを思い出した。

 そんな、旦那さんが趣味で研究していた召喚術の仕組みを書いた本を、おばばはベッドの下から取り出していた。

「そのような貴重な書籍をわたくしに見せてもらってもいいのですか?」

「メラニア嬢ならうちの旦那も文句言わないだろう。召喚術士も今はブラックミルズにはメラニア嬢しかいないからのぅ。うちの旦那の最後の弟子ということにしといてくれるなら、この本はメラニア嬢に献呈させてもらうよ。その方がうちの旦那も喜ぶだろうしね」

「わたくしのような未熟な召喚術士に、ブラックミルズ一の召喚術士であられたおばば様の旦那さんの遺品を見せて頂けるとは……」

「まぁ、そう大したことも書かれているわけじゃないけどねぇ。メラニア嬢が死にかけた時に魔物を呼び出して街で暴れるってことは防げるとはずじゃわい」

 おばばがメラニアの手を取り、旦那の遺品である本を手渡していた。

「大事に使わせてもらいます。今、この場で見ても大丈夫でしょうか?」

「ああ、いいさ。召喚術の基礎は一刻も早く学んだ方がええ。グレイズはな、わりと容姿や地位よりも能力の高い女性が好物じゃからのぅ。ひぇ、ひぇ、ひぇ」

 おばばがそう言うと、メラニアがハッとした顔をしてチラリと俺を見ていた。

 べ、別にそうじゃないぞ。メラニアはわりと顔立ちが整って綺麗だし、家事も頑張っているし、心根は優しい子だから能力は云々は特に気にしてない。

 と思ったが、それを口に出すとそれはそれで俺も恥ずかしいので思わず口を噤んで明後日の方向に視線を飛ばしていた。

「は、はい! 早急に召喚術の基礎を学ぶために熟読させてもらいます」

 本をメラニアに手渡したかと思うと、おばばはベッドから立ち上がり、クローゼットの中から腕輪とローブを取り出していた。

「それと、これも良かったら使ってくれぬか。旦那のお下がりだけど、錬成陣で魔物を召喚する際の魔力消費が減る『召喚の腕輪』と、契約する際の魔力消費を減らしてくれる『契約の法衣』じゃ。丈はドロップ装備じゃから自動で直されるし、召喚術士としてSランク冒険者だった男が愛用しておった品じゃ。そこそこの性能はおばばが保証してやるわい」

「そのように貴重な品をわたくしに……」

「どうせ、ブラックミルズには召喚術士はメラニアしかおらんからのぅ。それに装備代金はうちからのスポンサー契約料としてあるから遠慮せずに受け取るがよい」

 おばばが『スポンサー契約料』と言ったことで、俺は急に不安を感じ始めていた。

 どう考えても俺を弄るための文言が防具に仕込まれているはずだ。

 俺はおばばの持つ『契約の法衣』に目を凝らしていく。

 赤と白を基調としたデザインの法衣にはパッと見では文字があるようには見えない。さすがのおばばも領主となったメラニアに対しては例のアレを入れるわけにはいかなかったのだろう。

 そう俺が判断し安堵したところで、目に飛び込んだ文字に固まってしまった。

 『わたくしの主人はグレイズですっ!!』とデカデカと法衣の背中側に大書されていたからだ。

「メラニアちゃんもファーマとおなじー。かっこいいねー」

 背中にド派手な浮き文字を入れ、文字の存在感を大いに主張していたのを見たファーマがキャッキャと喜んでいる。

 そして、それを見たメラニアも顔を赤く染めながらも、まんざらではない様子であったのだ。

 天啓子であるし、色々と問題に巻き込まれて不幸になった九割九分は俺の責任なので、メラニアの面倒はみるつもりなんだが、個人的に言わせてもらえば、世間的には領主であるメラニアが相談役である俺の主人だと思うんだが。

 それはさておき、やはりおばばは装備品で俺を弄ってきていた。

「おばば、仮にも領主であるメラニアの装備品にいかがわしい文字を入れるとは、首が飛ばされてもおかしくないぞ」

「ひぇ、ひぇ、ひぇ。いかがわしい文字など入っておらぬわ。事実を端的に入れておるだけじゃわい。メラニア嬢は嫌がっておらぬぞ」

「あ、あの。グレイズ様、も、もしお許し頂けるなら、おばば様からの装備を譲渡して頂いてよろしいでしょうか? わたくし、とても装備してみたいですっ!」

 普段は控えめな性格のメラニアが、おばばの提示した装備品に対して猛烈な興味を抱いているらしく、譲渡を申し出ている。

「そ、その。メラニア、これを着るってことはつまりはそのな……。そういう目で周囲から見られるわけで、ほらアルガドのこともあるだろ。ことは慎重に――」

「わたくし、おばば様の装備が欲しいです。ダメですか……?」

 小柄なメラニアが俺に上目遣いで聞いてくる。

 そういうのはわりと卑怯だぞ。そんなお願いされると、ダメとは言えないではないか……。

 俺は頭を掻きむしると、覚悟を決めた。

「メラニアが欲しいならしょうがない。おばば、スポンサー契約書。もう、作ってあるだろ?」

「うひひ、さすがのグレイズもお願いには弱いらしいのぅ。メラニア嬢、奥にいって着て見せてくれぬか」

「はい、すぐに着て参ります」

「ファーマ、お手伝いするー!」

 メラニアはおばばから装備を受け取ると、ファーマと一緒に隣の部屋に入っていく。

 そして、残された俺におばばがサイドテーブルの引き出しから出した一通の羊皮紙を差し出していた。メラニアとの個人的なスポンサー契約書で、装備代を肩代わりするかわりに防具の背中に文字を入れる権利をうたっている書類であった。

「グレイズも往生際が悪いのぅ。みんな嫁にしてやれば万事丸くおさまるのにのぅ」

「うるせー。おっさんは何かと慎重になるんだよ」

「ファーマはいつでもグレイズさんとケッコンするよーっ!! メラニアちゃんもだってー!!」

 隣の部屋から耳の良いファーマが大きな声で返事を返してきていた。
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