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日常編 メラニアの召喚術
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しおりを挟む俺主催の祝勝会は無事に終わり、翌日からはブラックミルズにいつもの毎日が戻ってきていた。
冒険者が冒険者ギルドで朝から受注を受け、ブラックミルズダンジョンに次々と潜っていく。
そして、俺たち追放者も新たなメンバーを加えて、新出発を切ることになった。
新たなメンバーはメラニアとジェネシスの二人だ。
召喚術士のメラニアと戦士ジェネシスの加入により、追放者は七人パーティーになっている。
商人、神殿騎士、武闘家、精霊術士、魔術師、戦士、召喚術士といった編制のパーティーであるが、一パーティーで七人というのはあまり見ない編制である。
普通のパーティーだと四人編制がほとんどで、それ以上のメンバー数で組むパーティーは、深く潜るために雇われる荷物持ちパーティーがほとんどであった。
そんな中、七人編制している俺たちのパーティーは、ブラックミルズの冒険者パーティーの中でも異色さを放っている。
と言っても、俺の持つ人外の力は、アルガドの弾劾裁判後に住民たちに知られることとなり、『グレイズなら仕方ない』と巷で言われていると小耳に挟んでいた。
「グレイズ様、皆様も今日はおばば様のところに行って、わたくしの召喚術の基礎を学ぶのにお付き合い頂きましてありがとうございます」
パーティーの編成について考えながら歩いていたら、メラニアの声で目的地であるおばばの魔法書店に到着していたことを知る。
「おばば、遊びに来たよー!」
ファーマが店の隣にあるおばばの家に向かって声を掛けていた。
最近は店は人を雇って任せ、腰の悪いおばばは家に居ることの方が多いのだ。
「鍵は開いているから入っておいで」
「グレイズさん、私とカーラさんは魔法書店で魔法書を見てますので、ごゆっくりとどうぞ」
アウリースが大人数でおばばの家に行くことに気を使ったのか、カーラと一緒に魔法書店で時間つぶしをすると申し出ていた。
「なら、私も回復系の魔法書をみたいわね。おばばとはほぼ毎日顔を合わせていたし、今日は商売の話でもないからね」
メリーもアウリースと同じようにおばばに気を使ったようだ。
「そうか、分かった。そうだ、パーティー資金から各自一〇万ウェル位は魔法書購入に援助できるからな。必要そうな魔法書があれば買っていいぞ」
「さすが、グレイズ。アウリース、メリー、予算限度いっぱいの魔法書を選ぶ。手伝って」
魔法コレクターになりつつあるカーラが魔法書購入費の補助を認めた途端に目を輝かせて、メリーとアウリースの手を引き魔法書店の中に消えていった。
お金に関してはメリーが猛烈な興味を示すが、カーラは魔法や知識、技術に関して猛烈な興味を示すのであった。
俺たちはカーラたちを見送ると、おばばの家に入っていった。
「よう来たな。わしもさすがにこの歳になって召喚術を操る者に出会えるとは思わなんだがのぅ。へぇ、へぇ、へぇ」
「おばばー、元気。腰、痛くない?」
ファーマがおばばの体調を気にして心配そうな顔をしていた。
「大丈夫、おばばはこの程度では死なんぞ。イタタ」
腰を悪くしているおばばは、ベッドで安静にしていることが多いが、昨日の祝勝会には商店街の店主たちに混じって酒場に訪れて酒を飲んでいた。
メリーを自分の後継者にしようと色々と商売や経営を仕込んでいるため、未だに口と脳味噌の方は達者だが、身体の方は年相応の弱り方をしてきている。
「おばば、俺が腰を癒してやるからうつぶせに寝ろ。どうせ、昨日は無茶してて、今日は痛みが強いんだろ」
深層階からの脱出の際、俺に魔法が使えることが判明し、見たことのある魔法であれば、イメージするだけで行使ができるというトンデモない能力があったことも判明していた。
おかげでカーラやアウリースの使える魔法は、大体俺も使えるようになっているのだ。
「ついに商人が魔法を使う時代がきたのかえ。世の中、変わったものじゃな」
おばばはそう言うとベッドにうつぶせになっていた。
俺は回復魔法をイメージすると、おばばの腰に手をかざしていく。
淡い緑の燐光が輝くと魔法が威力を発揮していた。
「おぉ、こりゃあ効くのぅ」
「俺の回復魔法は特別製だからな。だが、痛みが無くなっても無茶はするなよ。歳を考えろ。歳を」
ブラックミルズに住んでいる期間の方が長くなり、自分の親もすでに亡くなっているため、俺の中ではおばばは親みたいなものである。
なので、ゆっくりとした余生を過ごして少しでも長生きして欲しいが、本人は生涯現役を宣言しているので見守ってやるしかない。
「孫の顔が見られれば、わしも安心して逝けるんじゃがなぁ。当の本人にその気がないとなると、おちおち死んでおられんのだ」
おばばが、メンバーに対して煮え切らない俺にチクリと小言を言う。
言いたいことは分かっているが、自分の中で色々と折り合いを付けてからでないと、関係構築に向けて動き出せないのだよ。
俺も若ければ勢いに任せて関係を進めることもできるが、おっさんは色々としがらみがあって無茶する勇気を出すのに時間がかかるのだ。
「じゃあ、あと五年は長生きしないといかんぞ。俺の中で区切りを付けるにはきっとそれくらいかかる」
「面倒な男じゃな。女の方が嫁にしてくれと言ってきているのに……」
「まぁ、おっさんは頑固になるってことだ。それよりも、今日はメラニアに召喚術の基礎を教えてくれるんだろ?」
おばばの小言を断ち切るために、話題をメラニアの召喚術に無理矢理変えた。
「おばば様、昨日はグレイズ様のご幼少時のお話をして頂き感謝しております。今後も色々とグレイズ様のことを教えて頂けると嬉しいです」
「ひぇ、ひぇ、ひぇ。グレイズのことなら鼻水垂らしていた小僧っ子の時から知っておるからのう」
「ファーマもグレイズさんの子供時代しりたーいっ!」
「おい、おばば。あることないことをみんなに吹き込むなよ」
「わしは有ったことしか教えてないぞ。夜中にお漏らししてベッドに地図が――」
一番触れてほしくない思い出を喋りはじめたおばばに、無意識にそっと枕を被せた。
「おばばーっ! グレイズさん、おばばー死んじゃう」
ファーマが必死に俺の手から枕を奪い取ってくれていた。
思わず我を忘れて、おばばに殺意を抱いてしまったことを反省する。
「むふぅーー。グレイズの話は本人のいないところでする方がええのう」
「す、すまない。俺としたことが取り乱した。俺の話は置いておくとして、ともかく今日は召喚術について教えてくれ」
俺は冷静さを取り戻して、今日の訪問した目的を達成することにした。
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